ぼくたちと駐在さんの700日戦争

＜本日2話連続アップです。2話めでシリアス入ります＞

その日。大きく事態が動いていることを知らず、家にもどっていた僕でしたが

「もしもし～～？あ？和美ちゃん？」
家中に聴こえる母の声。

　え！か、和美？

「どけ！母ちゃん！」
「お、お前母親をなんだと思ってるわけ？」

僕は大慌てで母から受話器を奪い返すと
「もしもし？あ？和美？」

「・・・かずみって。誰？」

「え？あれ？」

しまった・・・。またやられた・・・。和美にスライドしやがったか！

しかし聞き覚えのない声でしたので
「えっと～～～。どなたでしたっけ？」

「え？もう忘れたの？」

「ああ・・・ごめん。あ、そうか・・・」。
とは言ってはみたものの、
思い出せないので頭フル回転で時間とり。

が、思い出せません。

すると
「あの逢瀬はなんだったの？あのご寵愛は？」

ご寵愛した覚えがない・・・。

「男はいっつもそうなのよ。もて遊びたいだけもて遊んで用がなくなれば忘れるの」。

「・・・君。誰？」

「ごあいさつだねぇ。花よ。花」。

「あ！おちょう・・・さいとうさん？」

まさかとなりに母がいるのに「お蝶夫人」とは言えません。
電話口では、お蝶夫人も良識があるようです。

が

「ちがうよ。斎藤」。

「はぁ？？？」

「あなたが言ったのは斉藤でしょ？あたしのさいとうは　”斎藤”なの。むずかしいほうね？」

「えっとーーーー」。

声で区別つくのか？

とりあえず、
「さいとうさん」。

「ちがう！斎藤さん」。

「さいとうさん」。

「あー、だめだなぁ。あんた斉藤しか言えないのね」。

「さいとうさん」。

「あ。だいぶ斎藤っぽくなってきた」。

よくわからん・・・。
なんかプライドあるみたいです。「斎藤」に。

「今度はきちんと斎藤って言えるようにね？」

「はい・・・斉藤さん」。

あーめんどくさい！

「あのねぇ。N定の動きわかったよ」。

「え？ほんとに？」
さすが北女スケ番！頼りになる！

「あんたらの学校にビコーズってバンドある？」

「うん、あるもなにも僕のバンドだけど」。

「うん、そいつらがねぇ。N定のバンドの悪態ついてんだって」。

「はぁ？」

「で。あたしらの学祭への出場の妨害してんだってさ」。

「え？北女の学祭？」

「そ。それに怒って、ヤキ入れるって騒いでるみたいだよ?」

また偽情報作戦か。

「かなりカンカンになってるってーから。用心したほうがいいよ」。

「そんな記憶はないな・・・。とんだ誤解だ」。

「さ～～～～。後は自分で調べな」。

「うん。ありがと。斉藤さん」。

「斎藤さん！」

「斉藤さん・・・」。

「斎藤さん！」

「さいとう・・・」


翌朝の登校。千葉くんと2人、自転車を走らせる僕。
いつもはチャーリーも一緒でなのですが、この日、チャーリーは学校を休みました。

”ママダディ～～～～！ママダディ～～～～！止まりなさい！”

「またなんか変わったこと言ってるな？」
「うん。行ってこいよ」。

言われなくとも行きます。

「駐在さん、なんです？ママダディって？」

「いや。パパもいいけどダディもいいなぁ、って思ってな？」

「その顔でダディ？」

「なんだ！文句あんのか？」

「昨日、アメリカドラマ観たでしょ？」

「う・・・・」。

ったく、ダディってツラか!?

「ところでなぁ。ママダディ。昨日、おもしろい通報があってな？」

「おもしろい通報？」

「ああ。お前んとこの麻生と丹下が定時制の奴らにやられてるってんで、行ってみたんだが」。

「チャーリーとジェミーが？」

「うん。結局全員しょっぴいたがな。ママダディ」。

「そうでしたか・・・」。

しかけてきてるな・・・。柳・・・。
恵美ちゃんは、おとりだったか・・・。

駐在さんの話は意外に長く、途中で、学校の始業ベル。

「あ！まずい！遅刻だ！駐在さん、拾得物届けかなんか書いてくれません？」

「そんなこと公務員ができるか！」

エロ本ではやったくせに・・・。

僕はあわてて自転車に飛び乗りました。

その後ろで駐在さん。
「いいと思ったのになぁ・・・ダディ・・・」。

まだ言ってやがる。



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