ぼくたちと駐在さんの700日戦争

＜おことわり＞本日2話連続です


「僕は・・・お前が受験を控えているから・・・」。

「僕に伝えた夕子の気持ちは考えたか？」

まずい。妹思いにかけては右に出る者のないグレート井上くん。
冷静さがありません。

「いや・・・夕子ちゃんが知ってるってこと自体おかしいだろ？」

「だいたい誰が好きこのんでお前が恋人だっていう噂をたてるんだ!?」

「そんなのわかんないよ。だからそこが・・・」。

「東京あたりで噂がたってなにがうれしいんだ？」

だめだ・・・。会話が成り立ってない・・・。

僕がどれだけの言い訳を言い放ったのか。
それをグレート井上くんが、どれだけ聴き止めたのか、わからないまま井上くんのバスの時間が来て。
二人にはわだかまりが残りました。

　井上の言うことももっともだ・・・。
　東京あたりで名前が出てうれしいやつなど・・・。

　まてよ？「大ゴマは離して打て」・・・か。

　東京なら、じゅうぶんすぎるほどに離れてる・・・。
　現に気づいてさえいなかった・・・。

僕は上り坂にさしかかって重いペダルが、さらに重く感じ、自転車を降りました。



「ただいま・・・」。

家にもどると母が
「おかえり～～～。お前、物置前のやつなんとかしなさいね」。

「物置？」

「うちはクスリ屋じゃないんだから」。

「クスリ屋？」

僕は大慌てで物置の前にともどりました。
そこには。


　ケロ・・・ちゃん・・・だ・・・。


そうです。それはケロちゃんの首。
僕たちがコオロギ村の地蔵の代わりにおいてきた物。

　うそ・・・だろ？
　なんでここに？

なんでこんなとこまで知ってる？？
あれは僕たちだけの・・・。

　久保？

僕には同じ顔だけが浮かぶようになっていました。

「母ちゃん！あれ、いつから!?」

「さー。明るいうちはなかったけどねぇ」。

「誰か来たの!?」

「うーん。カエルが自分でやってきて首だけ置いてくってことは、あんまりないわね」。

「そんなことわかってるって！誰が置いてった!?」

「わかんないねぇ。いつの間にかいたのよ。あんたのドドンゴみたいに」。

く・・・。

「馬ほどは不思議じゃないわよ？ちっちゃいから～」。

しかし、街灯の元で照らしてみると、

　ちがう。コオロギ村のものじゃない・・・。

僕たちのケロちゃんよりはずいぶんと新しいことに気づきました。

だとすると、どっかの薬屋から盗まれたもの・・・？


「駐在所行ってくる！」

「あ？また？管轄外でしょ？」

「これ、盗難品だから！きっと！」。

「へ～～～。ケロちゃん盗むなんてねぇ。またお前の仲間かい？」

「え？僕たちは盗みは・・・」。
「するでしょ？」

うう・・・。
こういうことを平然と言う母親っているんでしょうか？


僕はケロちゃんの首をヤマハメイトの荷台にくくりつけ、駐在所へととばしました。

　なんで知ってる？
　なんで？
　なんで？

いや。それよりも大問題は・・・

　あのことがもし学校に知れたら、

　全員退学かも知れない・・・。


バイクを走らせながら、僕は考えを整理してみました。

あの噂が大駒だったとすれば、これは・・・。

　将棋？
　だとすれば・・・。

最初は駐在さん・・・。これは自分でふせいだ。
和美・・・井上・・・。これは一手でとられた・・・。


　これってすでに「詰め」に入ってるんじゃ・・・？




人気ブログランキング
ブログ村ランキング

　14章-第32話へ→

　▲14章-目次へ

※初登校教習所開設！初コメ練習はこちらでどうぞ

関連記事

• 14章-第32話 奪われたダイアリー(3)
• 14章-第31話 奪われたダイアリー(2)
• 14章-第30話の後半