ぼくたちと駐在さんの700日戦争

＜おことわり＞本日シリアスモード2話連続です

なんで警察祭りで高校生がこんな目に・・・。
ってあたりまえか・・・。

　あれ？それにしても早苗さん。
　なんで僕の事を探してたんだろ？

僕は猿ぐつわをされたまま、持て余す時間にまかせて考えていました。

　リンチするためとも思えないし・・・。
　不思議な人だな・・・。

しかし結論は

　まぁ。もともと不思議な人だからな。


そうこう考えているうちに、やがて楽しいお昼休みタイム！
いえ。みなさんは楽しいのですが、後ろ手に猿ぐつわの僕は少しも楽しくありません。


ところが・・・。この時

「うふふ。。また捕まってるのね？」

（お・・・奥さん・・・）

来てたのか・・・って当たり前か・・・。

僕がなにかたずねそうな顔をしているのを察知すると奥さん。
「あ。愛？愛は実家にあずけてきたのよ。長丁場だしね～」

そう言いながら僕の横にやってきて、やさしく猿ぐつわを解くと

「ご飯食べさせてやれって。あの人が」。

「え？駐在さんが？」
ようやくしゃべれるようになった僕。

「ふふ。。これじゃ両手使えないものね。ひとりじゃ食べられないでしょ？」

僕の前のテーブルにお弁当を置き始めました。
それはあきらかに2人分の量ではなく、駐在さんが僕の分（あるいは僕たちの分）まで用意していたのがわかりました。

「す・・・すいません・・・。けど、駐在さんは？」

「ああ。あの人、係だから忙しいのよ。あとでオニギリでも食べるでしょ」。
もうひとつの分けられた袋を持ち上げて見せました。

「だから今日はママチャリくんと2人でお昼」。
いつものようににっこりと笑います。

僕はその笑顔に、頬が熱くなるのがわかりましたが。

「そうですか」。

不自然なほどにつっけんどんに答えました。

「あら。まだ窮屈そうね」。
そう言うと奥さんは、僕の後ろにまわって

「ママチャリくん、少し腰上げて？」

結びつけられていた椅子の角度を変えようとしました。


と、この瞬間に半立ちになった僕に、奥さんの髪がふれて


　ふと。昨夜の美奈子さんと同じ香りが・・・


　あれ？

　これって・・・。

　なぜ？

僕はようやく理解しました。

　そうか・・・。美奈子さんは前日駐在所に泊まったから
　奥さんと同じシャンプーを使ったんだ・・・。
　それで同じバスボンの香りが・・・。

そうだったのか・・・。

　すると僕の胸の高鳴りってのは・・・。

　まさか・・・。

僕の考えがそこにたどり着く前に、奥さんがおかずの蓋を開いて、乱暴な卵焼きの臭いが奥さんの香りをかき消してくれました。

　まさかね・・・。

＜資生堂バスボン＝1974年、資生堂が満を持して発売したコロンシャンプーとリンス。その香りの良さと松本ちえこのCMで大ヒットした＞
松本ちえこ バスボンCM画像
http://www.youtube.com/watch?v=la_5zuc-cI0
http://www.youtube.com/watch?v=lxJHHsVh8Aw&NR=1
http://www.youtube.com/watch?v=Svc1n4KvyEk&feature=related


しかし、

「はい。ママチャリくん。ア～～ンして？」

「・・ええ!?」

さすがに高校生。これには戸惑ってしまいましたが

「だってしかたないでしょ？ほら。恥ずかしがらないで！」

「あ・・・はい・・・」。

奥さんは僕の口に卵焼きを運びました。

「じゃ、次、おにぎりねー」。

「はい・・・」。

僕はこの時、急に恥ずかしくなって、顔をそむけてしまいました。

「あ！ママチャリくん！動くから～～～～！」

僕の頬に、奥さんの運んでいたおにぎりが当たって


そこにごはんつぶがくっついてしまいました。

奥さんは。
僕の頬に手を伸ばすと、それをつまんで

「ウフフ。赤ちゃんみたいね。ママチャリくん」。

そう言うと、そのご飯粒を。自分の口元に運びました。

奥さんにすればそれは、普段愛ちゃんにしている癖のようなもので、なんということもない行動なわけですが。
そのご飯粒が、奥さんの唇へ入ったときに

　ズキッ

胸が・・・。

　まさか・・・。

　そうだったのか・・・。


思わぬことで、僕の心の封印は解かれて

この瞬間、僕は

なぜ和美ちゃんとつきあっていても、いまひとつ躊躇があるのか

そして

「どうかしたの？ママチャリくん」。

「あ・・・い、いえ・・・・」。

2年間におよぶ「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」の。

本当の本当の理由まで

「変なママチャリくん」。

気づいてしまいました・・・・。


　そうだったんだ・・・。
　あの通学途中の朝から。ずっと僕は・・・。


しかもそれは、もっとも見られたくない人に見られていました。

それは本当に奥さんのすぐ後ろでした。

「あ・・・！どうして・・・ここに？」

「あの・・・孝昭くんが電話くれたの・・・。それで・・・あたし、早苗さんに乗せられて・・・」。

そこに立っていたのは、和美ちゃんでした。
早苗さん・・・？そうか・・・・早苗さんが僕をさがしてたのは・・・。

それは早苗さんの気の利いた演出であったのかも知れませんが。

和美ちゃんの手には小さなお手製の手提げ袋。
そこにはおそらく僕のお弁当が入っているにちがいありません。
2人で食べるつもりの・・・。

両手で下げられたその手提げ袋が、小さく小さく震えていました。



※今日は、和美ちゃん涙ながらのお願いです

人気ブログランキング
ブログ村ランキング

　14章-第14話へ→

　▲14章-目次へ

関連記事

• 14章-第14話 瞳の中の少年(2)
• 14章-第13話 瞳の中の少年
• 14章-第12話 フォーメーションNo.7(3)