ぼくたちと駐在さんの700日戦争

「なな、なんで僕がっ!?」
グレート井上くん。非常に心外なようです。

「悪い。どうしても井上連れて来いってきかないんだ」。

「駐在さんが？」

「そう。駐在さんが・・・・」。

「みろ！悪のりするから！」

「いやぁ・・・わり～」。

← ← ← ← ←

「ママチャリく～～～～ん」。

長いつきあいで、駐在さんの声だけで、判断がつくようになりました。
体験から得た素晴らしい特技ですが、将来役にたちそうにはありません。

「ママチャリく～～～～ん」。

これは「大凶」な止め方。

「えっと。なんでしょう？」

「ん。昨日検問あってな？知ってるか？」

「いやぁ。全国の検問情報を調べてるわけではないんで」。

「まぁ。高校生の本分は勉学だからな」。

「はい～～～。勉学です」。

「わははははは」。
「あははははは」。

意味もなく笑い合う僕と駐在さん。

「でな？昨日の検問で、頭に矢がささった高校生がいたんだそうだ。どう思う？」

「あははは。そりゃおりこうそうな高校生だ」。
「わははは。だろ？バカな高校生だろ？」

「あはは・・・・」。

「そいつが兜かぶってたんだそうだ。ヘルメットがわりってな？」

「あははは。そりゃおりこうそうですね～」。
「わははは。だろ？大バカだろ？」

「あは・・・あは・・・」。

くそ～～～。カンペキに感づいてやがるなぁ～～～～。

「それがなにか？」

「お前。このへんが伊達政宗のどうのこうの言ってたな？」

「さぁ・・・僕は上杉藩なんでちょっと・・・」。

「落ち武者がどうだとか・・・・」。

「ああああー」。

「で。町内会に調べさせた」。

げ。そんな騒ぎに・・・。

「そしたらな。このあたりは肥ダメだったと大笑いされてな？」

「伊達藩の？」

「わははははは」
「あははははは」。

なんにもおかしくないのに笑い合うのはつらいものがあります。

「で。検問した警察官な。俺の同僚なんだが・・・」。

げ。最悪・・・。そう言えば見たことあったような・・・。

「バイク運転してたの、どうやら麻生らしいんだな」。

「はぁ・・・」。

「で。後ろの兜かぶってやつってのが・・・」。

え～い。ここまで来たらおんなじ、と、

「それは背後霊です」。

「あ？？？？」

「だからそれは背後霊ですよ。きっと。すごいな。見えるなんて」。

「なるほどぉ。背後霊かぁ・・・・背後霊だからバイクの後ろに？」。

「はい～～～～～。”後ろの桃太郎”ってやつです」。

「同僚が言うにはな。その後ろの桃太郎な？以前、銀行の騒ぎで会ったとか言うんだよなー」。

ああ・・・。面がわれてる・・・。

「俺も背後霊が見えるぞ。今なら」。

「さよう・・・ですか・・・」。

ここから延々と1時間の説教。授業の1時間も長いですが、説教の1時間も長い。
そして駐在さん。その長い説教の結びに

「井上、呼んで来い」。

「はい？井上を？」

「そうだ。井上呼んで来い」。

「井上は背後霊いませんよ？」

「いてもいなくても呼んで来いっ！」

→ → → → →

西条くんが腕を組んでいます。
「つまりは鎧兜の持ち主ってわけか・・・・」。

「うん。たぶん。井上ひとりだけよこせって」。
と、僕。

「なんだ、そのギャングの裏取引みたいなのは」。

ほんと。とても国家機関の駐在所とは思えません。

「ま。いいや。行ってみるさ」。

ひとり駐在所へ向かうグレート井上くん。
BGMに『夕陽のガンマン』のテーマが流れそうな光景。

携帯着メロは
こちら

PC&Docomoのかた
こちら

それをみんながビコーズします。


＜夕陽のガンマン=イタリアで作られた西部劇が「マカロニウェスタン」と呼ばれ大流行。その代表的作品。主演はクリントイーストウッド＞


駐在所へと消えたグレート井上くんでしたが、わずか10分ほどで出て来ました。
さっきの僕の1時間とはえらい差です。

「どうだった？井上ぇ」。
「えらい早かったな」。
「鎧兜没収か？」

「うん。それがね・・・・。美奈子さんが来てるって」。

「え！そんなことで呼び出したのか？駐在が？」

「ああ。ゼミで合宿してるらしいんだ」。

「おおおお・・・ゼミ・・・・・」。

ひとしきり感心していますが

「ゼミってなんだ？」

「ゼミって言えばゼミナールだろ？」

「あああ～～～。ゼミアナルね」。

「西条。お前の耳、一度診てもらったほうがいいぞ？」

「代々木ゼミ○ナル」。


しかし興味はア○ルではなく、当然、美奈子さんですので
いや。一部ア○ルに強い興味を抱いている者もいますが

とりあえず
「で？詳しく話せよ。井上」。

「うん。なんか、ゼミ全体で2つのグループに分かれて天体観測するらしい。ひとつのグループはF県のA山で」。

「うん」。

「もうひとつのグループが姫沼」。

「え！姫沼？だって姫沼って・・・・」。

そうです。姫沼と言えば、美奈子さんが1年前の夏、暴行未遂事件にまきこまれたところ。

「まぁ。大団体だから」。

「ふうん・・・。で、美奈子さんは姫沼グループ？」

「うん。たぶんね」。

ふむぅ。

「なんだって駐在のやつ、そんな情報くれたのかな？」

「さぁ・・・・」。
「なんでだろ・・・？」
「？？？？？？？？？」


しかし、これはお礼はするべきだろう、ということになりまして。

今度はキッチリ作りました。
顔全体が光るグレートマジンガー。
これならチビッコたちもおおよろこびだ！


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