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5章:第33話 10ミニッツ・ラバー(1)
「あ。そうだった!」
駐在さんが、突然なにか思い出したように言いました。
「村山クン、村山クン」
「え?ぼ、僕ですか・・・・?」
あの駐在さんが「クン」付けすること自体、かなり怪しい雰囲気なのですが。
「君。この前、女房の車庫入れ手伝ってくれたんだってな。ありがとぉー」
「え!・・・そ、そんなこともありましたかね・・・・」
そうです。この話は、僕(=ママチャリ)の視点で書かれていますが、それぞれのメンバーは、僕のいないところでもいろいろとやっているわけで、必ずしも僕=グループではありません。
むろん、村山くんがそんなことをやっていたことも初耳でした。
「うん。女房がな、褒めてたぞ?」
「キミがあんまり 車の運転がうまいんで」
「とても高校生とは思えない、ってな」
駐在所の駐車場は2台の縦列駐車。つまり、家庭用の車(スターレット)は、いつもパトカーの後ろに停まっていて、車庫入れのたびに入れ替えなくてはなりません。
どうやら駐在さんは、今日のパトカー泥棒の真犯人に気づいていたようです・・・・。
「い、いえ。そんな、僕なんか・・・。あの時もハンドルどこにあるか見つけられなくって・・あのまーるいやつ、だったんですね・・・」
口べたな村山くん。無茶な論法です。
「そうか?で、君、車に詳しそうなんで聴きたいんだけどな。なんか、今日、うちのパトカーが、つつーーーって勝手に走っちゃってな」
「はぁ・・・そ、そうなんですか。多いらしいですね。ホ、ホンダの車に・・・・」
本田宗一郎が聞いたら泣いちゃいます。きっと。
「んー。でもパトカー、流星号じゃないから」
村山くん、真っ青。

<流星号>
グレート井上くんが僕に耳打ちしました。
「ヤバい・・・・。パトカーのこと、気づかれてる!」
「大丈夫だ。まかせろ」
僕は、駐在さんの前まで行くと、
「あの、駐在さん」
「なんだ。ママチャリ。お前にはもう用はないぞ」
「いえ。今日の花火打ち上げのことなんですけど。親方がいらっしゃるうちじゃないとダメなんで」
「ああ。なんだ?」
僕は小声で駐在さんに耳打ちしました。
「親方の話は伺いましたか?」
「親方の?」
「ええ。どうしてあれほどの煙火師になられたか、聞きました?」
「いや・・・別に・・・・」
さらに小声で、
「駐在さん、それは職人に対して失礼ってもんでしょう」
「そ、そうか?そういうもんか?」
「そうですよ。なんにもわからず仕事頼むなんて。あれほどの職人なんですよ?」
「あ・・・ああ・・・確かにそうだな」
「親方!」
今度は親方に声をかけました。
「おう!なんでぇ。アンちゃん!」
「駐在さんが、どうして親方があれほどの職人になられたのか、って。うかがいたいそうですよ」
「え?おまわりさんがかい?」
「ねぇ。駐在さん?」
「ええ。ぜひ、うかがいたいものですな」
「そうかい? うれしいねぇ。おまわりさん。礼儀ってやつを知ってるねぇ。江戸っ子かい?」
「いえいえ」
「そうさなぁー。あれは終戦の翌年だったかなぁ・・・・」
僕は今度は村山くんに耳打ちしました。
「村山。もう帰っていいぞ」
「え?どうして?」
「いいからさっさとここを出ろ。わかったな」
「あ、ああ・・・」
一方、親方。
「もう、あっちもこっちも焼け野原でなぁ・・・・」
「はい~」
駐在さんは、なにも知らずに相づちうってます。
「(中略)・・・そいでな。乾物屋にへぇったんだよ」
「は、はぁ・・・乾物屋に・・・ですか」
「駐在さん。僕たち、門限があるので失礼します」
「え?あ、ああ」
「・・・・そいでなー。その乾物屋のオヤジがな・・・・。ひでぇオヤジでよぉ」
駐在さんを親方にまかせて、僕たちも屋上を後にしました。
エレベーターを降りると、ホールでは奥さんと美奈子さんが、駐在さんが降りて来るのを待っておられました。
「ママチャリくん。よかったわね」と、奥さん。
「うん。手錠につながれてたけど、カッコよかったよ。君」
そして美奈子さんです。
これだけの美人に褒められれば悪い気はしません。グレート井上くんには少しすまなくも思いますが。
「それにしても、あの人遅いわねー。なにしてるのかしら?」
時計を見ながら、奥さんがおっしゃいました。
「ああ。駐在さん、今、昭和30年頃にいるはずです」
「昭和30年?」」
「いや・・・ひょっとすると広島の呉あたりかも・・・・」
これは森田くん。
「呉??」
「ええ。いずれにせよ現代にもどってくるにはけっこうかかるはずですから。覚悟されたほうがいいです」
「現代??」
「はい。万博あたりが山場です」
「万博???」

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5章:第33話 10ミニッツ・ラバー(1)
「あ。そうだった!」
駐在さんが、突然なにか思い出したように言いました。
「村山クン、村山クン」
「え?ぼ、僕ですか・・・・?」
あの駐在さんが「クン」付けすること自体、かなり怪しい雰囲気なのですが。
「君。この前、女房の車庫入れ手伝ってくれたんだってな。ありがとぉー」
「え!・・・そ、そんなこともありましたかね・・・・」
そうです。この話は、僕(=ママチャリ)の視点で書かれていますが、それぞれのメンバーは、僕のいないところでもいろいろとやっているわけで、必ずしも僕=グループではありません。
むろん、村山くんがそんなことをやっていたことも初耳でした。
「うん。女房がな、褒めてたぞ?」
「キミがあんまり 車の運転がうまいんで」
「とても高校生とは思えない、ってな」
駐在所の駐車場は2台の縦列駐車。つまり、家庭用の車(スターレット)は、いつもパトカーの後ろに停まっていて、車庫入れのたびに入れ替えなくてはなりません。
どうやら駐在さんは、今日のパトカー泥棒の真犯人に気づいていたようです・・・・。
「い、いえ。そんな、僕なんか・・・。あの時もハンドルどこにあるか見つけられなくって・・あのまーるいやつ、だったんですね・・・」
口べたな村山くん。無茶な論法です。
「そうか?で、君、車に詳しそうなんで聴きたいんだけどな。なんか、今日、うちのパトカーが、つつーーーって勝手に走っちゃってな」
「はぁ・・・そ、そうなんですか。多いらしいですね。ホ、ホンダの車に・・・・」
本田宗一郎が聞いたら泣いちゃいます。きっと。
「んー。でもパトカー、流星号じゃないから」
村山くん、真っ青。

<流星号>
グレート井上くんが僕に耳打ちしました。
「ヤバい・・・・。パトカーのこと、気づかれてる!」
「大丈夫だ。まかせろ」
僕は、駐在さんの前まで行くと、
「あの、駐在さん」
「なんだ。ママチャリ。お前にはもう用はないぞ」
「いえ。今日の花火打ち上げのことなんですけど。親方がいらっしゃるうちじゃないとダメなんで」
「ああ。なんだ?」
僕は小声で駐在さんに耳打ちしました。
「親方の話は伺いましたか?」
「親方の?」
「ええ。どうしてあれほどの煙火師になられたか、聞きました?」
「いや・・・別に・・・・」
さらに小声で、
「駐在さん、それは職人に対して失礼ってもんでしょう」
「そ、そうか?そういうもんか?」
「そうですよ。なんにもわからず仕事頼むなんて。あれほどの職人なんですよ?」
「あ・・・ああ・・・確かにそうだな」
「親方!」
今度は親方に声をかけました。
「おう!なんでぇ。アンちゃん!」
「駐在さんが、どうして親方があれほどの職人になられたのか、って。うかがいたいそうですよ」
「え?おまわりさんがかい?」
「ねぇ。駐在さん?」
「ええ。ぜひ、うかがいたいものですな」
「そうかい? うれしいねぇ。おまわりさん。礼儀ってやつを知ってるねぇ。江戸っ子かい?」
「いえいえ」
「そうさなぁー。あれは終戦の翌年だったかなぁ・・・・」
僕は今度は村山くんに耳打ちしました。
「村山。もう帰っていいぞ」
「え?どうして?」
「いいからさっさとここを出ろ。わかったな」
「あ、ああ・・・」
一方、親方。
「もう、あっちもこっちも焼け野原でなぁ・・・・」
「はい~」
駐在さんは、なにも知らずに相づちうってます。
「(中略)・・・そいでな。乾物屋にへぇったんだよ」
「は、はぁ・・・乾物屋に・・・ですか」
「駐在さん。僕たち、門限があるので失礼します」
「え?あ、ああ」
「・・・・そいでなー。その乾物屋のオヤジがな・・・・。ひでぇオヤジでよぉ」
駐在さんを親方にまかせて、僕たちも屋上を後にしました。
エレベーターを降りると、ホールでは奥さんと美奈子さんが、駐在さんが降りて来るのを待っておられました。
「ママチャリくん。よかったわね」と、奥さん。
「うん。手錠につながれてたけど、カッコよかったよ。君」
そして美奈子さんです。
これだけの美人に褒められれば悪い気はしません。グレート井上くんには少しすまなくも思いますが。
「それにしても、あの人遅いわねー。なにしてるのかしら?」
時計を見ながら、奥さんがおっしゃいました。
「ああ。駐在さん、今、昭和30年頃にいるはずです」
「昭和30年?」」
「いや・・・ひょっとすると広島の呉あたりかも・・・・」
これは森田くん。
「呉??」
「ええ。いずれにせよ現代にもどってくるにはけっこうかかるはずですから。覚悟されたほうがいいです」
「現代??」
「はい。万博あたりが山場です」
「万博???」

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遅刻寸前ですが、今日も早起きしてよませてもらいました。
駐在さん、井上くんのことも先刻ご承知だったんですね。喰えない人だ。
親方の長話がこうくるとは思いませんでした(笑)
井上くんの恋の行方も気になります。
書籍化、おめでとうございます。
私がここ数年読んだ小説の中で一番おもしろいです!
ハリポタなんて目じゃないですね☆
6章あるんですね。
ありがとうございます!
感動物というわけでなくとも
素敵な仲間達の物語、まだまだ読ませてもらえると嬉しいです。
こんにちは。またおじゃましてしまいました。
あれだけのフィナーレだったのでどうなるのかな?っておもってたら。パトカー泥棒がインタビューとからむなんて。
おもしろびっくりな展開でした。親方、最高!
私、グレート井上君のファンなので、彼の恋の結末すごい気になっていました。
それが次なのかな?
2日にわたって全読いたしました。
本当ですね。ハリポタの比ではありません。面白いです。
スイングガールズなどよりもかなり面白いので映画にしたらかなり面白いものできそうですね。
書籍化から一気に映画化か?
芸名変えてません~笑
書籍化されたら、絶対買いますから。
はじめまして。
密かに日参して読ませて頂いていました。
前回あれだけ感動のフィナーレだったのに、次にはもう普段に戻ってる(笑)
さすがだな~と、今日も笑わせて頂きました!
えっとー。大恩人券。ほしいんですけど(笑
コメントで抽選でしたよね?
ジャムぱんさん、こんばんは!
連日のコメント、大うれし、です。御礼に「徹子の部屋・大恩人」応募券さしあげます。
これは、黒柳徹子さんから
「どなたか恩人いらっしゃったそうですね」
という質問があった際、
「はい。ジャムぱんさんと申しまして・・・」からフルセットで褒めまくりまして、最後、「惜しい方をなくしました」まで続きます。
とりあえず、出演依頼をもらわなくてはならないのですが・・・。
そこさえクリアできれば、あとは大丈夫です。
はいはい。6章。ございます。というか、現在、さくさくと書いております。
6章、ランキング落ちたら潮時、と思っていたのですが、思わぬ大飛躍で、やめずにすみました。深く御礼申し上げます。
ちょうどこの『花火盗人』をはさんで、一部、二部といった分かれ目ですね。ここらあたりが。
6章。ここだけの話ですが(って、みんな見てますけど)パワーアップしてます。ご期待くださいませ。
はい~。いっぱい伏線はってます。
だから一部分でも読むのさぼると、面白さ半減です。
さぼらないよーに!
大恩人抽選券、さしあげます。
なんかCP9が死にもの狂いで探してましたよ。ぷるとんさん。
ひとこと連絡してあげてください。
スウイングガールズ。よかったですねー。特にセーラー服が!
それ以外は、あんまり見てなかったのでわかりません。
ハリーポッターは、ハーマヨネーズだかって美人のおねえちゃんが、長い服着ているので嫌いです。
大恩人抽選券さしあげます。
よかった。「昔の名前で出ています」ってやつですね?
あれは「京都にいるときゃ」の名前だったんですね。わかりました。
あー。書籍化ですねー。はい。話まいりましたよ。それもふたっつも。
でも、とりあえず、書き終えないと・・・・。
いつ出版されるんでしょうねぇ・・・。ちょっと不明。
大恩人抽選券さしあげます。saineiさん、コメント多かったから当たる確率高いです。
ついでに黒柳徹子さんのサインももらってさしあげます。
でも、まず、出演依頼をもらわないといけません。
そうなんですよ~。
それでこっち番外にしちゃったんですけどね。
番外なら元にもどしてもいいかなぁ、みたいな。
[花火盗人]は、どうしても「花火盗人は罪になんね~ってな」の台詞で終わらせたかったんです。
なぜなら、実際に親方が言ったこの台詞こそが、題名の由来だからです。
大恩人抽選券さしあげます。
Lambleさん。はじめまして!
あのですね~。コメントそのものが「抽選券くれよ」じゃダメなわけですよ。
コメントすれば、抽選ができるわけですね?
コメントって言うのは、
「とても素晴らしかった」とか、「作者さんは素敵な人なんでしょうね」とか、まぁ悪くても「尊敬いたします」とかいうやつです。
って、とりあえず『徹子の部屋』出演のきっかけの、はじっこもありませんけど・・・。
抽選券さしあげられません。
尊敬いたします
(*´艸`);∵ブハッ
台無しだー!!(笑)
まったく前話の舌の根も乾かぬうちに・・・
前話までですが、人のブログで始めて泣きました。
ええ、ええ、ミカちゃんのセリフと西条くんの慟哭あたりでボロボロ泣きましたよ。
それにしても粋な大人と仲間たちに囲まれておられたんですね。羨ましいかぎりです。もちろん時代背景もあったのかもしれませんが。
当方、明日から公務員に就職です。こういう粋な大人になりたいもんです。そして、おかしくなりつつあるこの日本にも、そういう良い部分を取り戻してもらいたいと思います。その一助になれるように頑張ります。くろわっさんも志を胸に頑張ってください。
僕は今日もランキングクリックで協力を。
映画化でブログを知ったのですが、ここまで一気に読んでしまいました。
ミカちゃんや西条くんにぼろ泣きでした。
自分もこんな青春したいなぁ、と思いました。
続き知ってても笑えますねぇ(*≧m≦*)
普通ならここでずーんと来そうなものですが、こう、すぐにいつも通りの悪戯に走っていけるところが「ホントにイイ関係なんだなぁ」と思いました(^-^)
あぁ、私、いつになったら最新ストーリーにたどり着けるのか…(T^T)
このコメントは管理人のみ閲覧できます
今日も会社のパソコンでこっそり、ブログ読みました。 やっぱりと言うかこれが”ぼくちゅう”の醍醐味ですよネ。
笑いは元気の源なんですよネ。
でも、親方(統領)さんはお話好きなんですネ。
万博(大阪)は私も学校の遠足で行きました。
ママチャリさんはいったいおいくつなんですか・・・?
尊敬します
私もこんな感じに「青春」したいですね
ずっとくすくす笑いながら拝読していたのですが、このお話ではぐっと胸にこみあげるものがありました。本当に格好良いです。潔くて、心の根っこが温かいです。この先も楽しみにしています。
「大丈夫だ。まかせろ」
↑頼もしー!!
ところでハーマヨネーズだかって美人のおねえちゃんは
長いローブの下に膝上丈のスカートをはいています。
ホグワーツ魔法魔術学校の大広間の椅子は長いベンチで
男の子も女の子もガバッと椅子を跨いで座る訳です。
・・・そう聞いてもハリー・ポッターお嫌いですか?
ピンチに「大丈夫だ。まかせろ」
っていうママチャリのセリフはときどきありますが、
まじカッコよくて大好きです!
言ってみてぇ!