ぼくたちと駐在さんの700日戦争

＜おことわり＞本日フィナーレまでの連続アップです。←第75話からどうぞ

孝昭くんの初デートは、そらからしばらくした月曜日。
実にハンパな平日を狙ったのは、おそらくビコーズを恐れてのことか？と、無粋な推理をした僕たちでしたが、実際はちがいました。

彼は初めてのデートコースに、
動物愛護センターを選んだのです。

孝昭くんは愛護センターから、僕たちと一緒にバナナちゃんを守ろうとした柴犬と、そっくりな子犬を1匹。引き取りました。

「ありがと。孝昭」。

「ん？なにが？」

「子犬。ひきとってくれて」。

「バナナが礼言うことじゃねぇだろ？」
その子犬が孝昭くんの口のあたりをさかんにペロペロと舐めます。

「ん・・・。でも。あたし、あそこでいっぱい子犬・・・」。

「言うな。もう後ろ向かねぇって約束したんだろーが」。

「ん・・・・そうだった」。

子犬を抱いた孝昭くん。そのとなりに歩調を合わせ、寄り添うバナナちゃん。
それは誰が見ても恋人同士なのですが。

「ごめん。私、孝昭にあやまらなくっちゃいけないことがあるの・・・」。

「ん？」

「私ね。恋愛とか。きちんとしたことないのね？だからね・・・」。

「ん・・・」。

「孝昭のこと。好きよ。大好きだけど・・・」。

「ああ・・・」。
そう言うと孝昭くん。突然

「あの土下座してた男か？」

「え？」
驚くバナナちゃん。

「まぁ。ひとりだけ逃げなかったからな。いくら鈍感な俺でも気づくわ」。

そしてそれが、孝昭くんが、トレノの陰に隠れた理由でもありました。

「いいんだ。俺は一度デートしたかっただけだしな」。

せいいっぱいの強がりです。

バナナちゃんは、ひとつ溜息をつくと、小さく首をふりました。

「ちがう・・・と思う・・・。私。孝昭好きだもん・・・。ただあんまり急だったでしょ？」

「ん・・・」。

「心の整理みたいなのが・・・」。

「ん・・・」。

2人に気まずい雰囲気が流れました。

話題を変えたのはバナナちゃんです。

「クィーン。もうすぐ行っちゃうんだね」。

「ああ・・」。
と、そっけない返事をしてから、孝昭くん。

「ああ。そうだ。そう言えば・・・。スペイン。行くって決めたのか？」

「ん・・・まだ・・・。ありがたいお話なんだけど・・・」。

「獣医。なるんだろ？」

「うん。なりたいよ」。

「じゃ。行けよ。バナナ」。

「え？」

「こんなチャンス、ごろごろ転がってねぇぞ」。

「え？でも・・・・」

「俺はあん時も思った。自分がお前の障害になりたくねぇって」。

「孝昭・・・・」。

「前向いて歩くんだろ？バナナ」。

「ん・・・・」。

「みんながそれを願ってる。死んだ犬たちもよ・・・」。



「俺も・・・」。



そしてバナナちゃんの出した結論。

それは驚くべきものでした。



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