ぼくたちと駐在さんの700日戦争

<本日3話連続アップです。←第72話からどうぞ＞

駐在さんは、手錠の真ん中に紐をつなぐと、そのまま2人をひっぱっていきます。

「駐在ぃ。カッコわるいんですけど」。
「うん。ついてくから手錠はずしてくれよ～」。

「やかましぃ！警官の顔殴っといてなに言ってやがる！」

というか勝手に殴られたんですが。

「だからぁ。突然、駐在が真ん中に来たんだろーが！」
「そうだそうだ！」

「しかたないだろ。麻生が、止めてくれって泣いて頼むんだから。あ～～～痛て～～～～」。

同情すべきなのか。駐在さんの顔には痣ができています。
無理もありません。あの2人のパンチをモロにくらったんですから。

しかし痣ができていたのは2人も同じでした。
いかに本気でやりあったかがわかります。

駐在さんは、ひとつの手錠で二人をつないだまま、ぐいぐいと引っ張るように歩いていきましたが
駐在所前をなぜか素通り。

「あああ？駐在ぃ。どこ行くんだよ」。
「市中引き回しはかんべんしてくれよー」。

「うるせー！馬鹿どもがぁ！ったく痛てぇ・・・」。

そして、たどり着いたのが。
どういうわけか、かなり屋食堂。

「なんでかなり屋なんだ？」

たずねる孝昭くんたちを完全無視。

「座れ！」

西条くんたちは、手錠でつながれたままでしたから、並んで座るしかありません。

駐在さんは、紐の片端をテーブルに結びつけて、向かい側に座ると

「あー、おばちゃん。こいつらにお刺身と、トンカツと、納豆と、肉団子と、それから～、サンマの頭でも出してやってくれ」。

この注文に女将さん、ビックリ。

「え？？？駐在さんのおごりでかい？」

「ああ。俺が払う。だから安いとこだけな」。

「いや。いいけど。この子たちの胃に、そんないいもん消化できる機能があるかどうか・・・」。

「どういう意味だよ！ババァ！」
「お得意様にそりゃねぇだろ!?」

「うるさいね！そういう台詞はサブマリン定食卒業してから言いな！」

「うぅ・・・」。

「ほら。ぐぅの音もないくせに」。

「ぐぅ・・・」。

女将さんは、2人の頭を思い切りはたきましたが、顔の痣には触れませんでした。
事態で、おおよその背景がわかるのでしょう。

「ええ？いいのかよ。駐在」。

「ああ。いいぞ。あれだけの試合見せてもらったからな。腹もへったろー。シャバのメシ、最後に味わっとけ」。

「へ～。どういう風の吹き回しだ？」
「腹なんか・・・」。

とはいうものの、お腹は正直です。


やがてテーブルにおいしそうな料理が並べられると

「いっただっきま～～～す！」「いっただっきま～～～す！」

と。

「あ！」「あ！」

お互いに箸を持とうとして気づきました。
そうです。手錠がかけられたまんま。

「てめ！孝昭！箸持てねえだろ？」
「てめーこそ！」

「駐在ぃ。手錠はずしてくれよ。箸持てねぇじゃん！」
「そうだそうだ。俺、左利きなんだぜ？」
と、孝昭くん。

「ああ。それくらい知ってる」。

「だったらせめて利き腕じゃねぇほうにかけ直してくれよ。これじゃ喰えねぇって」。

「あー、鍵がない」。

「これだ・・・。この警察官は・・・」。
「ったく・・・」。

駐在さん。これも無視。

「じゃ。俺は帰るから。ゆっくりメシ喰ってから出頭しろ」。

「だからぁ。箸あやつれねぇだろって。利き腕手錠で繋がっちゃってんじゃよっ！」

すると駐在さん。

「あ？お前ら。片方ずつ、喰う時に相手の手に合わせてやりゃいいだろ？」

「え・・・」。

「お前らくらい気ぃ合うやつらもいないだろーが」。

「あ・・・？」

「同じ釜のメシってのはな。そんなもんだ」。

「駐在・・・」。
「駐在・・・」。

「あとで駐在所来たらはずしてやる。便所も一緒じゃさすがにお前らでもやだろー？それともなにか？お前らくらい仲いいと尻ぐらい拭き合ってもいいか？わははは」。

駐在さんは2人を残したままで、本当に帰ってしまいました。

「くそぉ・・・」。
「横暴警察官・・・」。

しかし、ごちそうを前にした空腹には勝てません。
駐在さんの言う通りに、2人は

「次、俺の刺身」
「おお！」
「せーの！」
「おおおおお。喰える！」

どうやらうまくありつくことができたようです。



駐在所。

「あいたたたたたた！もうちょい静かに・・・・」。

ガーゼを貼りながら奥さん。
「どうしたの？あなたが怪我を負うなんてめずらしいわね」。

「ん。ちょっとヤクザの抗争の仲裁してな。てててて・・・・」。

「ふうん・・・ヤクザの・・・。なんかうれしそうねぇ・・・」。

「そ、そりゃそうだ。仲裁に成功したんだからな！100人くらいいたかな、ヤクザ。・・って、アチッ！加奈子ぉ。もっとそーっと・・・」

「それって・・・」。

「んあ？」

「かわいいヤクザさんなんでしょ？」。

「えっ！」。

「学生服の」。




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