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第27話 リョウくんの空(1)

「どうも今日はいろいろとありがとうございました」
それでも丁重にお礼を言う僕たちに、
「おー!こっちこそな!なんだか楽しかったぜ!」
そりゃ、あれだけ言いたい放題人生しゃべれば楽しいでしょうよ・・・・。
「それでこれ・・・」
僕たちは親方に封筒を渡しました。
そこには現金4000円が入っていました。
「な、なんだ?今の学校は取材費払うのかい?へぇー!時代は変わったもんだねぇ」
「ええ。まぁ、そんなもんです。で、この受取にサインもらえるでしょうか?」
「いんや。受け取れねぇなぁ。これであんちゃんたち、家でも建てな!」
建たねーから。
「いえ、これは受け取っていただかないと僕たちが困るんです。お願いします」
「そうかい?まぁ、そう言うんなら・・・。家でも買おうかね・・・・」
親方はしぶしぶ封筒を受け取り、受取証に名前を書きました。
言うまでもなく、これが実は「花火代金」なのですが。
「んや?」
親方がジェミーを見てなにか気づいたようです。
ヤバい!
「お姉ちゃん、乳、ちっちゃくなってねぇか?」
す、するどい!伊達にスケベやってません!
ジェミー、
「やっだー。親方、そんなわけないじゃないですかぁ〜」
実はそんなわけあったのです。5号玉を想定してきた詰め物でしたが、結局入らず、盗んだのは4号玉(約12cm)。
さっきより直径で3cmも小さくなってます。
「そうかい?まぁ、それでもまぁーるくっていい乳だなぁ。え?姉ちゃん」
「親方〜!スケベなんだから〜ン」
「うん!まるで4号玉みたいだなっ!ははは。打ち上げたくなるぜ!」
す、するどすぎる!
ここは退散するに限ります。
「じゃー親方~。ありがとうございました~〜」
「あ!待て、あんちゃん」
「え・・・?」
ドッキリ!
「これ、持ってきな」
親方は弟子になにか持って来らせると、それを僕たちに渡しました。
「コイツはな、余った火薬からつくった線香花火だ。係の人とかにあげてんだけどよ。そのへんに売られてるやつとはちがうぜ!」
それは藁に火薬がついたような、不思議な形をした線香花火でした。
「あ・・・ありがとうございます・・・」
「じゃーな!夜、楽しみにしてくれよっ」
さすがに僕たちは胸が痛みました・・・・。
なんていい人なんでしょう。話長いけど。
やがて久保くんたちと合流。
とりあえず、僕たちは「捕まらずに成功した」ことを喜び合いました。
「後は打上だけだな」
「ああ・・・」
「最後にもらった受取さぁ、アレなんか足しになるのか?」
「さぁな・・・。一応、お金払ったって証拠ではあるからな。いざとなった時役にたつかも知れない。気休めだけどな」
「ふうーん」
「なにしろ花火だろ?盗みましたって証拠、打ち上げるわけだから。まだ捕まる可能性高いよ」
「ふむぅー・・・西条もまったくとんでもねー約束してくれるよなぁ」
「まぁ。でも僕が西条でもひきうけたかもな・・・」
「うん。たぶん俺も・・・」
盗むことに成功したにもかかわらず、僕たちの気持ちは晴れませんでした。
こんな複雑な気持ちの「悪戯」は初めてでした。
「ああ・・・そう言えばな」と、河野くん。
「さっき駐在みたいなのいたぞ」
「え?俺らの町のあの駐在か?」
「ああ。駐在って言えばもうアレしかいないだろう」
「あ・・・そうか。今日はここに来るって言ってたからな」
「さっさと退散しようぜ!」
帰り、花火は僕のヤマハメイトに全部積み、一番後ろを走りました。
万一こけた場合に被害が仲間に及ばないようにです。
とりあえず、西条くんに報告、ということで、僕たちの行き先は市立病院でした。
また中庭に集まった僕たち。
「そ、そーかー!盗めたのかぁー」
西条くん、感無量。
「ああー。苦労したけど。2発だ」
苦労したのは親方の話だけですけどね。
「すっげーなー。お前らー。でも、これでリョウに花火見せられるよ。ありがとうな、あり・・・」
「泣くなよ。馬鹿か、お前」
西条くんは、まるで子供みたいに、ヒクヒク言いながら泣きました。
全治3週間の怪我をおっても泣かなかったやつが、こんなことで泣くというのも、またヘンな話です。
「アオ・・・ヒック・・・ほんと・・・俺、いい家来にめぐまれて・・ヒック」
「だからいつお前の家来になったんだよっ!」
「ったく、どさくさにまぎれやがって」
僕たちは、そのままリョウくんの病室を訪ねることにしました。
リョウくんの窓から、どこが見えるのかを知るためです。そこが今日の花火の打ち上げ場所になります。
ロビーに入った所で、ミカちゃんがかけよってきました。
「サイジョー!
・・・と、ケライたち」
ケライ・・・。またかよ・・・。これだけ言われ続けると、本当にそうなのではないか、とさえ思えてきます。
「サイジョー、今日、花火上がる?」
「ああ。上がるぞ!でっかいのがな!楽しみにしてろよ!」
「ウン!さすがサイジョーだお!」
「いやいや。今回はな、このケライたちが上げてくれるんだ」
「ありがと!ケライ1号、6号と17号と18号!」
腹がたつほど正確です。1度プールに行っただけなのに。
「と・・・あれ?」
ジェミーを見て驚きました。そうです。彼女の家来リストには、バイオニックなジェミーはいません。
しばらく考え込んだミカちゃん。
「この人、サイジョーのコイビト?」
!
一同大爆笑。
悪ノリするジェミー。
「でも・・・今月、まだ来ないの・・・」
バ、バカヤロー!6歳児の前で、くだらねーギャグかますんじゃねーよ!
お前には一生来ねーんだよっ!
「なにがこないの????」
疑問符いっぱいのミカちゃん。
「え?えーとー・・・・」
ほらみろ。
「あなたにも、いつかわかるワ」
ウィンクするジェミー。
なーに奇麗にまとめようとしてんだよっ!
下ネタのくせによっ!
が、ミカちゃん、
「来ないって、おきゃくさん?」
えっ!!
これがミカちゃんがわかって言っているのかどうか、僕たちは恐ろしくて聴くことができませんでした。
「そ、そーだね・・・。お客さん・・・来ないねぇ・・・どうしちゃったのかなぁ?」
これにミカちゃん。
「わかった!夕子おねえちゃんとこに来てるんだっ!きっと!」
ええ!?
わ、わかって言ってんのか?
いや・・・いくら女の子がませてるからって・・・。
「そ、そうだね〜。・・・夕子お姉ちゃんに聴いてみようかね〜・・・」
「夕子おねえちゃんとこも来てない?」
「い、いや。夕子おねえちゃんとこはちゃんと来てると思うな。ちゃんと・・毎月・・。で、でも今日は、ど~かな~・・・」
「というわけでケライ1号、お前、電話で聞いてくれ」
聞けるかっ!バカ。
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「どうも今日はいろいろとありがとうございました」
それでも丁重にお礼を言う僕たちに、
「おー!こっちこそな!なんだか楽しかったぜ!」
そりゃ、あれだけ言いたい放題人生しゃべれば楽しいでしょうよ・・・・。
「それでこれ・・・」
僕たちは親方に封筒を渡しました。
そこには現金4000円が入っていました。
「な、なんだ?今の学校は取材費払うのかい?へぇー!時代は変わったもんだねぇ」
「ええ。まぁ、そんなもんです。で、この受取にサインもらえるでしょうか?」
「いんや。受け取れねぇなぁ。これであんちゃんたち、家でも建てな!」
建たねーから。
「いえ、これは受け取っていただかないと僕たちが困るんです。お願いします」
「そうかい?まぁ、そう言うんなら・・・。家でも買おうかね・・・・」
親方はしぶしぶ封筒を受け取り、受取証に名前を書きました。
言うまでもなく、これが実は「花火代金」なのですが。
「んや?」
親方がジェミーを見てなにか気づいたようです。
ヤバい!
「お姉ちゃん、乳、ちっちゃくなってねぇか?」
す、するどい!伊達にスケベやってません!
ジェミー、
「やっだー。親方、そんなわけないじゃないですかぁ〜」
実はそんなわけあったのです。5号玉を想定してきた詰め物でしたが、結局入らず、盗んだのは4号玉(約12cm)。
さっきより直径で3cmも小さくなってます。
「そうかい?まぁ、それでもまぁーるくっていい乳だなぁ。え?姉ちゃん」
「親方〜!スケベなんだから〜ン」
「うん!まるで4号玉みたいだなっ!ははは。打ち上げたくなるぜ!」
す、するどすぎる!
ここは退散するに限ります。
「じゃー親方~。ありがとうございました~〜」
「あ!待て、あんちゃん」
「え・・・?」
ドッキリ!
「これ、持ってきな」
親方は弟子になにか持って来らせると、それを僕たちに渡しました。
「コイツはな、余った火薬からつくった線香花火だ。係の人とかにあげてんだけどよ。そのへんに売られてるやつとはちがうぜ!」
それは藁に火薬がついたような、不思議な形をした線香花火でした。
「あ・・・ありがとうございます・・・」
「じゃーな!夜、楽しみにしてくれよっ」
さすがに僕たちは胸が痛みました・・・・。
なんていい人なんでしょう。話長いけど。
やがて久保くんたちと合流。
とりあえず、僕たちは「捕まらずに成功した」ことを喜び合いました。
「後は打上だけだな」
「ああ・・・」
「最後にもらった受取さぁ、アレなんか足しになるのか?」
「さぁな・・・。一応、お金払ったって証拠ではあるからな。いざとなった時役にたつかも知れない。気休めだけどな」
「ふうーん」
「なにしろ花火だろ?盗みましたって証拠、打ち上げるわけだから。まだ捕まる可能性高いよ」
「ふむぅー・・・西条もまったくとんでもねー約束してくれるよなぁ」
「まぁ。でも僕が西条でもひきうけたかもな・・・」
「うん。たぶん俺も・・・」
盗むことに成功したにもかかわらず、僕たちの気持ちは晴れませんでした。
こんな複雑な気持ちの「悪戯」は初めてでした。
「ああ・・・そう言えばな」と、河野くん。
「さっき駐在みたいなのいたぞ」
「え?俺らの町のあの駐在か?」
「ああ。駐在って言えばもうアレしかいないだろう」
「あ・・・そうか。今日はここに来るって言ってたからな」
「さっさと退散しようぜ!」
帰り、花火は僕のヤマハメイトに全部積み、一番後ろを走りました。
万一こけた場合に被害が仲間に及ばないようにです。
とりあえず、西条くんに報告、ということで、僕たちの行き先は市立病院でした。
また中庭に集まった僕たち。
「そ、そーかー!盗めたのかぁー」
西条くん、感無量。
「ああー。苦労したけど。2発だ」
苦労したのは親方の話だけですけどね。
「すっげーなー。お前らー。でも、これでリョウに花火見せられるよ。ありがとうな、あり・・・」
「泣くなよ。馬鹿か、お前」
西条くんは、まるで子供みたいに、ヒクヒク言いながら泣きました。
全治3週間の怪我をおっても泣かなかったやつが、こんなことで泣くというのも、またヘンな話です。
「アオ・・・ヒック・・・ほんと・・・俺、いい家来にめぐまれて・・ヒック」
「だからいつお前の家来になったんだよっ!」
「ったく、どさくさにまぎれやがって」
僕たちは、そのままリョウくんの病室を訪ねることにしました。
リョウくんの窓から、どこが見えるのかを知るためです。そこが今日の花火の打ち上げ場所になります。
ロビーに入った所で、ミカちゃんがかけよってきました。
「サイジョー!
・・・と、ケライたち」
ケライ・・・。またかよ・・・。これだけ言われ続けると、本当にそうなのではないか、とさえ思えてきます。
「サイジョー、今日、花火上がる?」
「ああ。上がるぞ!でっかいのがな!楽しみにしてろよ!」
「ウン!さすがサイジョーだお!」
「いやいや。今回はな、このケライたちが上げてくれるんだ」
「ありがと!ケライ1号、6号と17号と18号!」
腹がたつほど正確です。1度プールに行っただけなのに。
「と・・・あれ?」
ジェミーを見て驚きました。そうです。彼女の家来リストには、バイオニックなジェミーはいません。
しばらく考え込んだミカちゃん。
「この人、サイジョーのコイビト?」
!
一同大爆笑。
悪ノリするジェミー。
「でも・・・今月、まだ来ないの・・・」
バ、バカヤロー!6歳児の前で、くだらねーギャグかますんじゃねーよ!
お前には一生来ねーんだよっ!
「なにがこないの????」
疑問符いっぱいのミカちゃん。
「え?えーとー・・・・」
ほらみろ。
「あなたにも、いつかわかるワ」
ウィンクするジェミー。
なーに奇麗にまとめようとしてんだよっ!
下ネタのくせによっ!
が、ミカちゃん、
「来ないって、おきゃくさん?」
えっ!!
これがミカちゃんがわかって言っているのかどうか、僕たちは恐ろしくて聴くことができませんでした。
「そ、そーだね・・・。お客さん・・・来ないねぇ・・・どうしちゃったのかなぁ?」
これにミカちゃん。
「わかった!夕子おねえちゃんとこに来てるんだっ!きっと!」
ええ!?
わ、わかって言ってんのか?
いや・・・いくら女の子がませてるからって・・・。
「そ、そうだね〜。・・・夕子お姉ちゃんに聴いてみようかね〜・・・」
「夕子おねえちゃんとこも来てない?」
「い、いや。夕子おねえちゃんとこはちゃんと来てると思うな。ちゃんと・・毎月・・。で、でも今日は、ど~かな~・・・」
「というわけでケライ1号、お前、電話で聞いてくれ」
聞けるかっ!バカ。
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- 5章:第28話 リョウくんの空(2)
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サイジョー! と、ケライたち
最高にいい仲間ですよ~笑
でも受取を取るあたり、すごいです。
はいー。
なにしろこの物語のテーマは『友情とスケベ』ですから。
どっちも青春ですよねぇ。
ことわっときますが「ケライ」ではありませんので。念のため。
まだ来ないて?え?え?知らない方がいいのかなぁ?
藁に火薬を付けたモノは、『すぼ』という名の線香花火ですね。
本来は、その姿が主流だったとかなんとか…ゴニョゴニョ(うろ覚え)
まだ全部読んでなくて…
で
笑えるけど、たまにいい話があるのがきゅんとくる! 早く全部よまなきゃー!!
《帰り、花火は僕のヤマハメイトに全部積み、一番後ろを走りました。
万一こけた場合に被害が仲間に及ばないようにです。》
ママチャリさんのリーダーとしての責任感の深さに打たれます。
さすが、総統です。
そうか、この部分が映画のあのシーンになった訳ですね!
脚本家の方もこの二文に胸を打たれたのに違いないですね。
それで何らかの形で映画の中に入れたかったのですね、きっと。
いい脚本家さんだなぁ。
それにしてもミカちゃん頭脳明晰すぎます。
恐ろしい程の記憶力ですね。
何もかも記憶しておきたい位ケライ達のことを好きだったんですね・・・