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第2話 俺たちはカメ(2)
数日ぶりに学校に到着した僕たちは、停学にならなかったメンバーと再会を喜び合いました。
しかし、1名だけ、まだ停学の解けていないヤツがおりました。
『俺たちは風』で、全ての発端となった、原付バイクでスピード違反した野郎「西条くん」です。
公務執行妨害はチャラになりましたが、あきらかな道交法違反をした彼は、我々のオチャメな停学より期間が長かったのでした。
とりあえず我々は、こいつの陣中見舞い(情けない陣中ですが)に行こう、ということになりまして、家庭訪問。
今思えば、20人近くの人数が押し寄せられるご家族も迷惑な話です。が、当時僕たちは、こうしたすべてが「おじゃまします」の一言で解決するものと信じてうたがいませんでした。
ほんとに「じゃま」です。
「おれ、まだ悔しいよ」と、西条くん。
そりゃそうだろう、と同情しながらも、僕たちは駐在さんの超美人な奥さんに会ったことを話してしまい、彼の「怒り」に油を注いだのでした。
彼は、16年ほどの人生でもこれほど怒ったことはないだろう、というほどに激昂いたしまして、駐在さんの暴言と停学をくらったことに対し、なにか復讐はできないか?と持ちかけてまいりました。
逆恨みもはなはだしい、と言うか、美人な奥さんがいることに怒りの70%くらいが向いている、というのは、誰の目にもあきらかでしたが、「復讐」という言葉に、僕たちははてしなく魅了されておりました。
そこでみんなからは様々な「復讐案」が出されたのですが(思えばとんでもねー高校生です)、この速度違反で捕まったヤツが、とにかくどうしても「レーダー測定」にこだわるわけです。気持ちは理解できます。
「じゃぁ、自転車は軽車両でダメなんだから、徒歩ならどうだろう?」
この発想の豊かさ! と言うか貧しさ?
というわけで、我々は、再び、「徒歩」で、レーダー測定に挑むこととなったのでした。
馬鹿だなぁ・・・・・・。
「しかし、人間はレーダーには反射しないだろう?」という、実に高校生らしい、中途半端な知識によりまして、
では、それぞれが「金属」をまとっていてはどうなのか?という短絡的アイディアが出されました。
おもしろい!
自転車は金属でしたが、前回、自転車で捕まっているため、これは却下。
我々は翌日から、なるべく大きな金属物を学校に用意することで第一回の戦略会議を終了しました。
実は、この会議以前から、我々には大きな疑問がありました。
まず、交通取締に駐在さんがいたことです。これは交通課の仕事では?
この疑問に、件の警察官の弟が答えました。
「ばかだなぁ。都会ならともかく田舎の駐在なんて、なんでもやんなくっちゃいけないんだぜ」。
この答えに、僕たちは少しだけ胸をチクリとさされたのでした。
ただ、僕たちは、この程度の感傷で、行動をやめるほどにはしおらしくなかったのです。
翌日、僕たちは、おおよそ学業とは関係のない金属物を学校に持ち寄りました。
金属物は巨大であるにこしたことはないのですが、なにしろ電車や自転車の通学ですから、そんなに大きなものがありません。
が、一人だけ「家に飾ってあった鎧兜」というのを持って来た画期的な友人がおりまして、こいつは全員から絶賛をあびました。
あびましたが、金属なのは兜と面だけなのでは?
しかし、鎧兜をまとったやつがレーダー前に立ちふさがる、という図は、思い描いただけでもわくわくするものがありましたから、我々は彼の勇気を賞賛しました。
ところが。その日の放課後、予定外のことがおきました。
「今日、レーダーやってるぞ!」
下校からわざわざ学校にもどってきた友人が報告しました。
これは予定外でした。
なにしろ、まだ計画から1日しか経過していないため、持ち寄ったとは言え、金属物が足りなかったのです。
「こいつは想定外だな‥‥‥‥」
そこで僕たちは緊急召集をかけ、学校にある金属物を借りよう、という結論に至ったのです。
しかし、学校は学業の場所ですから「警察のレーダーを妨害できるもの」といった特集はないわけです。
とにかくでかい金属物、ということで、あれこれ知恵をめぐらせ「音楽部」の楽器に着目しました。
僕たちは、真面目で有名だった「音楽部副部長」を説得し(というか騙し)、トロンボーン、スーザホン(でんでん虫のでっかいような楽器です)、シンバルといった、主立った「金属楽器」を借りました。
さらには、運動部の洗濯用の金ダライ、バトミントン部の「ネット用ポール」など、かき集めまして集合いたしました。
それは、どう見てもチンドン屋です。
しかし、とりあえず金属物は集まり、後は決行あるのみ、でした。
思えば、前回の公務執行妨害から1週間ほどしか経っていません。
しかし「ただ歩いている善良な市民」が、捕まるわけがない、という、前回の自転車より、圧倒的な自信を持ってのチャレンジです。
「さぁ、行くぞ!」
第3話に続く
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数日ぶりに学校に到着した僕たちは、停学にならなかったメンバーと再会を喜び合いました。
しかし、1名だけ、まだ停学の解けていないヤツがおりました。
『俺たちは風』で、全ての発端となった、原付バイクでスピード違反した野郎「西条くん」です。
公務執行妨害はチャラになりましたが、あきらかな道交法違反をした彼は、我々のオチャメな停学より期間が長かったのでした。
とりあえず我々は、こいつの陣中見舞い(情けない陣中ですが)に行こう、ということになりまして、家庭訪問。
今思えば、20人近くの人数が押し寄せられるご家族も迷惑な話です。が、当時僕たちは、こうしたすべてが「おじゃまします」の一言で解決するものと信じてうたがいませんでした。
ほんとに「じゃま」です。
「おれ、まだ悔しいよ」と、西条くん。
そりゃそうだろう、と同情しながらも、僕たちは駐在さんの超美人な奥さんに会ったことを話してしまい、彼の「怒り」に油を注いだのでした。
彼は、16年ほどの人生でもこれほど怒ったことはないだろう、というほどに激昂いたしまして、駐在さんの暴言と停学をくらったことに対し、なにか復讐はできないか?と持ちかけてまいりました。
逆恨みもはなはだしい、と言うか、美人な奥さんがいることに怒りの70%くらいが向いている、というのは、誰の目にもあきらかでしたが、「復讐」という言葉に、僕たちははてしなく魅了されておりました。
そこでみんなからは様々な「復讐案」が出されたのですが(思えばとんでもねー高校生です)、この速度違反で捕まったヤツが、とにかくどうしても「レーダー測定」にこだわるわけです。気持ちは理解できます。
「じゃぁ、自転車は軽車両でダメなんだから、徒歩ならどうだろう?」
この発想の豊かさ! と言うか貧しさ?
というわけで、我々は、再び、「徒歩」で、レーダー測定に挑むこととなったのでした。
馬鹿だなぁ・・・・・・。
「しかし、人間はレーダーには反射しないだろう?」という、実に高校生らしい、中途半端な知識によりまして、
では、それぞれが「金属」をまとっていてはどうなのか?という短絡的アイディアが出されました。
おもしろい!
自転車は金属でしたが、前回、自転車で捕まっているため、これは却下。
我々は翌日から、なるべく大きな金属物を学校に用意することで第一回の戦略会議を終了しました。
実は、この会議以前から、我々には大きな疑問がありました。
まず、交通取締に駐在さんがいたことです。これは交通課の仕事では?
この疑問に、件の警察官の弟が答えました。
「ばかだなぁ。都会ならともかく田舎の駐在なんて、なんでもやんなくっちゃいけないんだぜ」。
この答えに、僕たちは少しだけ胸をチクリとさされたのでした。
ただ、僕たちは、この程度の感傷で、行動をやめるほどにはしおらしくなかったのです。
翌日、僕たちは、おおよそ学業とは関係のない金属物を学校に持ち寄りました。
金属物は巨大であるにこしたことはないのですが、なにしろ電車や自転車の通学ですから、そんなに大きなものがありません。
が、一人だけ「家に飾ってあった鎧兜」というのを持って来た画期的な友人がおりまして、こいつは全員から絶賛をあびました。
あびましたが、金属なのは兜と面だけなのでは?
しかし、鎧兜をまとったやつがレーダー前に立ちふさがる、という図は、思い描いただけでもわくわくするものがありましたから、我々は彼の勇気を賞賛しました。
ところが。その日の放課後、予定外のことがおきました。
「今日、レーダーやってるぞ!」
下校からわざわざ学校にもどってきた友人が報告しました。
これは予定外でした。
なにしろ、まだ計画から1日しか経過していないため、持ち寄ったとは言え、金属物が足りなかったのです。
「こいつは想定外だな‥‥‥‥」
そこで僕たちは緊急召集をかけ、学校にある金属物を借りよう、という結論に至ったのです。
しかし、学校は学業の場所ですから「警察のレーダーを妨害できるもの」といった特集はないわけです。
とにかくでかい金属物、ということで、あれこれ知恵をめぐらせ「音楽部」の楽器に着目しました。
僕たちは、真面目で有名だった「音楽部副部長」を説得し(というか騙し)、トロンボーン、スーザホン(でんでん虫のでっかいような楽器です)、シンバルといった、主立った「金属楽器」を借りました。
さらには、運動部の洗濯用の金ダライ、バトミントン部の「ネット用ポール」など、かき集めまして集合いたしました。
それは、どう見てもチンドン屋です。
しかし、とりあえず金属物は集まり、後は決行あるのみ、でした。
思えば、前回の公務執行妨害から1週間ほどしか経っていません。
しかし「ただ歩いている善良な市民」が、捕まるわけがない、という、前回の自転車より、圧倒的な自信を持ってのチャレンジです。
「さぁ、行くぞ!」
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ヤッタ(≧∇≦)米イチバ~ン☆
今ふと気づいたのですが……
荒し化してるのは気のせいでしょうか…(?▽?;
荒らし化してませんよ、大丈夫。
てか、ここらへん、私たちだけしか知らないのではないでしょうか?
しかし「徒歩」って・・・。「疾走」じゃないと速度オーバーにはなりませんよ。
いや、「疾走」で、時速30キロオーバーできるんですか???
誰も知らない(?)ところでのコメってたのし~!
いつもより大胆になってしまいそお♡(✿ฺ´∀`✿ฺ)ノ
ღღღ(♡´∀`) ♦♫⁺♦
常連さん達に混じって、こそって参加・・・^^;
このあたり、まだ「ぼくちゅう」の素晴らしさを知らないで、とにかく読み進めてましたね~
当然コメント欄は、すっ飛ばしてました^^;
まさか、くろわっさんが米返しをされてるなんて思いもしなかったですね・・・
わくわくしながら「つづきは~~~!」って感じです。
あーーー。ここもーーーー!!!!
い、いつの間に?
ここはねー。始める時にまとめて転載したとこで、コメントは置き去りにしてきましたからね。
実はコメントついてはいたのです。
まだ1個とか2個とか。アクセスも9章の1/100くらいでしょうか。
徒歩ぉ~?何かの板に人型の金属物乗せて、「坂」というステキな仕掛けがあるんですから、さっき言った人型を転がせた方が、速度出たんじゃないんですか?(坂・・・・ありましたよね?・・・・・・・・れ?・・・違ったっけ?・・・・・・・???)
暇があれば・・・一気読みできるのになぁ~。
まだ、1章途中ですが、笑いが止まらない。
涙流しています。
あまりに面白いので、東京の大学にいる息子に教えてあげました。
mixi教わった息子に、母がぼくちゅうを教える。
すばらしい親子関係です。
なんかほんといいです
なんかいも 見ました
初めましてー
映画の方を昨日見てきまして、次は、こちらの原作を読みたいと思い、きましたーー
私の青春時代の頃で、懐かしい品物やらが、出てくるのが、うれしいです。
これから、がんばって読みまーーす^^
鉄兜ぉおぉおぉぉ( >艸)
めちゃ爆笑ww
その後の金属部分のツッコミに、更に爆笑(*´m'*)
素敵
アルミホイルを身体に巻き付けて全力疾走すれば面白いかもね。身体もらくだし?
「徒歩」ではさすがにレーダー反応しないでしょう?
やり投げやハンマー投げなら可能性はありますが。
それでも安全面で抵抗がありますね。
そうですね、ラジコンカーはどうでしょうか?
自転車がダメなら徒歩というこの発想が凄いやら凄くないやら(笑)
学校の読書の時間に『ぼくちゅう』を読んでいたら、ふきだしてしまいました
僕
映画を見て、とても良かったので原作を見に来ました。
いやあ…本当に面白いです。
文才があるっていいなあ…
ちょっと見てみるつもりが、一気に読み進めてしまいました。
このコメントは管理人のみ閲覧できます
僕にも、小学校6年生の時に同じような楽器を持ったことがあります、あれけっこう重いですよ、だから、あれお持って走るのキツイと思いました。じゃ、サヨナラ
そんなことやってみたかったです。
やっぱぼくちゅうおもしろい!! でも西条君なんか好きだわぁ~❤
やべ~
リコーダーはまかせろ
本買いてーなー☆☆
ぼくちゅうおもれー 金属バットかしますよー
俺もやってみようかな。
いってきます。
かっこ悪いようなカッコいいような・・・
だけど面白いことは確か
1章が1巻なんですか?
何か、本もちょこっと読んで、で、そっからブログ様の方に移ってみたけど、どっから読めばいいのか分からなくって。
教えてください。
ママチャリさん。