ぼくたちと駐在さんの700日戦争

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映写会を終え、かたづけに入る僕たちを駐在さんが腕をかかえたままで眺めていました。
手形の手続きの残りはすべてケンちゃんにまかせることになり、部屋の済みで、該当の連中と打ち合わせています。
そこには能瀬さんの会社の社長さんの姿もありました。さすがにケーキ券だけでは、他の買い取られた業者とかけ離れている、というので、会場費を渡すことにしたのです。

一方

「村山ぁ。椅子、ちゃんと数えたか？」
「ああ。数えてるぞ」。
「残り全部軽トラつめる？」

ガタガタと会場かたづけが進む中

なぜかジェミーが能勢さんに追いかけ回されています。
「ねー。ジェミーちゃん。何座？」

「え～～～～～～。楽市楽座です～～～～～～」。
必死に逃げるジェミー。

「そっかぁ。獅子座と合うんだよね～～～」。

楽市楽座と・・・。初耳・・・・。
信長も驚きだ・・・。

ひととおりかたづけが進むと駐在さん。
「ケン坊っ！」

映写機をかかえたまま、ケンちゃんを呼びつけます。

「へい・・・」。
すごすごと駐在さんの前に歩み寄るケンちゃん。

すると駐在さん。
「お前。なにやってんだ？説明しろ」。

「え・・・・」。

僕が
「いえ。駐在さん。今回のことは僕たちが・・・・」。

駐在さんは怖い顔で僕を睨むと
「お前の計画であろうとなかろうと、いい大人がいるんだ。責任者はお前だろう。ケン坊」。

「へい・・・」。

「いえ。だからそれは僕がケンイチさんに・・・」。

「黙れっ！多少悪知恵がまわったからっていい気になるな！ママチャリ！」

「え・・・」。

駐在さんは、またケンちゃんに向かって
「いいか？こいつらはいいことした気になってすぐのぼせ上がる高校生だ。自分がなにやってっかもわかってない。お前、裏社会の怖さは百も承知だろうが！」

「す、すんません・・・巡査さん・・・・」。

僕たちの計画のせいで、駐在さんからひどく怒られているケンちゃんを僕は見るに忍びありませんでした。
が、駐在さんの真剣な表情に、言葉が出すことができません。

「説明しろ」。

「へい」。

ケンちゃんは、僕が想像したよりも、ずっと正確にそして詳細に事のなりゆきを説明しました。

「ふむ。それで坂本のとこの手形をとりもどそうとしたわけか？」

「へい・・・その通りで。巡査さん」。

駐在さんは一息おくと、ようやく僕に

「お前らなぁ。大人社会ってのはお前らの猿知恵でどうこうできるもんじゃないんだ。ケン坊がいたからなんにもなかったようなもんなんだぞ。わかってんのかっ!?」

「すいません・・・。駐在さん・・・・」。

「二度とかかわるんじゃないぞ。お前らの手に負えるようなもんじゃないんだ」。

「はい・・・・」。

駐在さんは、舌打ちをして、大股で会場を後にしました。


「ケンちゃん。ごめんなさい・・・」。
僕は西条くんと一緒に頭を下げましたが

「あ？いいってことよぉ。巡査の説教は慣れてるわ・・・」。

意外に平然と言いました。

さすが大人です。
僕と西条くんは感心していましたが

「うらぁぁぁあっ！」

いきなり残ったパイプ椅子を蹴飛ばすケンちゃん！
勢いよく吹き飛ぶパイプ椅子。

やっぱし・・・・。



部屋を片付けると廊下で待っていた人がいました。

「早乙女さん・・・」。

「セイガクぅ。うまいことやりやがったなぁ。ぇえ？おかげでこっちの計画は・・・」
まで言ったところで。

「お？早乙女？」
ケンちゃんも出て来たものですから早乙女さん、泡を喰いまして

「めちゃくちゃになっちゃいました・・・」。

突如丁寧語。

「早乙女ぇ。ちょうどいいや。焼き肉でも喰いながら旧交をあっためようじゃねぇか」。

「は・・・はい。ケンイチさん・・・」。

かなり弱い。

ケンちゃんは
「おー。銭あまったんだろうから、焼き肉屋の勘定はお前ら払えよ」。

「はい。いいですよ」。

早乙女さんと席を交えられるのは願ってもないことでした。
なにしろ、残り1枚は、絶対に早乙女さんが知っているはずです。

駐在さんの注意は身にしみましたが、この1枚はゆずれません。

やがて表通りの小さな焼き肉店。

当時、高校生が焼肉店に出入りするなど、よほどのことがなければありませんでした。
見慣れないメニュー。
煙でかすむ店内。
タバコと肉の焼けた匂いがいりまじっています。
それらは、いずれも初めて見る「大人の世界」でした。

早乙女さんとケンちゃんが並んだ席には、僕と西条くん。
残ったメンバーたちは、8名で焼き肉のコンロを囲んでいましたが

「ほら。ジェミー。ナス焼けてるぞ」。
「え～～～。僕もカルビ喰いたいです～～～～～」。

「いやいや。お前、社長はベジタリアンって決まってんだよ」。
「え！そうなんですか？」

「ああ。長生きしてもらわなきゃいけないからな。ほら！ピーマン！」

「僕長生きしなくってもいいです～～～～」。

「あ！こら！なんだって俺が目ぇつけてたカルビ！」
「かわりにタマネギあげます～～～～～」
「納得するかっ！」

--経済問題勃発--

「あ！久保、それ俺のロース！」
「うるせー！名前書いてねぇじゃん！」
「書いてあったんだよっ！」

「あ。こっからこっち俺の領土だぞ。くらぁ！」

--領土侵略--

「なにぃ。お前はウィンナーでも喰ってろ！」
「あ～～～～！言いやがったな！」

--外交交渉決裂--

チャーリー。これに激怒しまして、立ち上がると

「細菌兵器投下！」

上から頭をかきはじめました。

--先制攻撃--

「うわ～～～～フケ落とすなぁ！ばかぁ！」

「てめっ！チャーリー！てめぇがそうくるなら絨毯爆弾攻撃！」

ペペペペペペペペ！

--報復攻撃--

なんと唾はきまくり！

「ああああああ！孝昭のアホーーーー！」
「てめぇ！」

--世界大戦へ発展--

食べれるのでしょうか？

「なら原爆ぅっ！」

「あああああ！なんだってそんなに椎茸っ！」
「キノコ雲」。
「キノコ雲じゃねぇって！俺、椎茸嫌いなのに～～～～」。

「あ～あ・・・・」

--最終兵器投下--


※ランクリ～わすれずに～～～

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