ぼくたちと駐在さんの700日戦争

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だめだ・・・。駐在さん、気持ちがすっかりスミレちゃんオンリーワン。
どうしよ？

「そうじゃなくって、駐在さん。ケンカっ！」

「だからスミレちゃんどこだっ!?」

会話になってないし。

しかたないので、
「たぶん、奥さんと買い物行ったんですよ」。

「なに!?するとはずれのスーパーにスミレちゃんが・・・」。

「教えたんだからケンカ・・・」。

「やかましい！俺の大切なスミレちゃん誘拐しやがって！覚えてろ～～～！ママチャリ～～～！」

「え！なんで僕なんです？」

「このメンバー集まっててなに今さらほざく」。

く・・・。

すでに駐在さん、ペダルに足をかけ立ち去り態勢。

「駐在さん！警察官でしょ？なんとかしてってくださいよ」。

「なにを？」

「だからぁ。ケンカ！」

「ああ・・・。そこのケン坊と西条の？」

「ええ」。

「しょうがないな。じゃぁ～～～～～～」。

ふう。。ようやく・・・。

「若さと体力で、西条の勝ちに500円」。

「いやいやいや。トトカルチョじゃなくって」。

だいたい賭け事していいのか？警察官！

しかし駐在さん。とうとうペダルを漕ぎ出すと

「的場～～～～！お前の店の前でケンカおきてるぞ～～～～！」
と、なんとマスターに声をかけて、猛スピードで去ってしまいました・・・・。


「け。巡査・・・。あいかわらずだぜぇ」
ケンちゃんもちょっとあきれ顔。
そうか。昔っからああだったのか・・・。駐在さん。

たよりの駐在さんがいなくなったため、天をもゆるがす兄弟弟子対決が再開してしまいました。

「西条ーーーー！どこ向いてんだーーーー！」

いきなり襲いかかるケンちゃん。
西条くんがこれを間一髪でかわすと、今度はパンチで応戦しますが、ケンちゃんもこれを腕ではらいのけます。
ケンちゃんの狙いは、あきらかに西条くんの喉元で、このため、西条くんは腕を前でクロスさせる形でかまえます。

　シュッ
　　シュッ

すごいのは2人がパンチを繰り出すたびに、その音が聴こえることで、どちらも急所に当たったら大ダメージになることは間違いありません。
2人ともいくつかのキックやパンチが相手に当たりますが、これといった一撃はなく、戦いは長期化するかにも思えました。

が

少し間があいたところで、ケンちゃんが
「ふ・・・しかたねぇな。やりたかなかったが・・・」。

突然、構えを変えました。

「う・・・そ、その構えは・・・・」。

「へへ。西条ぉー。覚えてるようだなぁ」。

「ああ・・・まさかその構えを今になって見れるとは思わなかったぜ」。

西条くんもその構えに覚えがある・・・。
もちろん、僕たち素人には、見た事もない構えでした。

西条くん。
「その構えは・・・・・」

「道場にいたとき、ケンイチ兄ちゃんが『少年ジェット』の真似してあみだして、師範になに勝手なことやってるって怒鳴られて、罰として木に吊るされた構え！」

え？？？そんだけ？？？？

「そこまで具体的に覚えていたか・・・・西条・・・」。

「ああ。忘れもしねぇ。巻き添えで俺まで吊るされたからなぁ」。

え？？？ほんとにそんだけ？？？



＜少年ジェット=1960年台にヒットしたヒーローもの。”うー!やー!たー!”という、わけのわからないかけ声で相手を倒し、子供達がこの構えを真似て遊んだ＞


「ふ・・・。しかし少し違うな。これは後に『キカイダー』の構えからさらに進化させて・・・」

「スキ有り！」

　ボスッ!!

なるほど。ケンちゃん、くだらない構えの解説をしているところを、みごとにやられてしまいました。

「く・・・っ！まだ未完成だったか・・・・」。

完成させるつもりでいるのか？キカイダー・・・。


＜キカイダー=石ノ森章太郎原作の仮面ライダーに次ぐTV特撮ヒーロー＞

倒れたケンちゃんにさらに攻撃をしかける西条くんでしたが

ケンちゃん。
「あ！西条！見ろ！ミニスカねぇちゃんだ！」

「え？どこ？」

　ドスッ！

なんて唐突に低レベルな戦い・・・・。

「き、きたねぇぞ！ケンイチ兄ちゃん・・・」。

「やかましい！ケンカに汚ぇはないんだよ！」

聞き覚えのある台詞で絞め技にかかるケンちゃん。

　まずい！絞め技だ！

ケンちゃんが西条くんより柔道の腕が上かどうかはともかく、段持ちの絞め技はまずはずせません。
西条くんはかろうじて一本の腕を入れてこれをふせいでいましたが、ケンちゃんはすでにかなりしめつけているようでした。
西条くんの顔がみるみる赤くなっていきます。


この時、ギャラリーは、僕の他、チャーリーとジェミー、久保くんと、もどってきた井上くん。

ここでチャーリーが

「西条！今助けるぞ！待ってろ！」

西条くん
「・・・ば・・・ばか・・・く、くるな・・・・」。

しかしチャーリー。
「いや。行く！」

そして僕たちに向かっていいました。
「お前らもなにやってんだ！ともだちやめる前に人間やめちまえっ！」

「え・・・・」。

そう叫ぶとチャーリーは、ひとり
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ！」

ケンちゃんへと向かっていったのです。

しかし所詮ケンちゃんの敵ではありません。
ケンちゃん、すっと半立ちに姿勢を変えると

　バシッ

まるで木の板のようにはじき飛ばされるチャーリー。

しかしこのおかげで西条くんの絞め技ははずされました。
西条くん、まだ朦朧として立ち上がれません。
「ちゃ・・・ちゃーりー・・・・・」。

仰向けに倒れたチャーリーでしたが、再びすっくと立ち上がると

「うぉぉぉぉぉぉぉ！」

またケンちゃんに向かっていきます。

　ドスッ！　

チャーリー、今度はみぞおちに激しい膝蹴りをくらいました。

「うぉは・・・・」。

まるで嘔吐でもするようにうずくまるチャーリー！

「チャーリーがやばい！」
「行くぞ！」
「おお！」

僕も。ジェミーも。そして久保くん、グレート井上くんまでも、
いっせいにケンちゃんに襲いかかります。
必死でした。


これから数十秒間におきたことは、なにがなんだかわかりません。
しかし、結局全員が地べたに倒れ、僕は口の中を切っていました。

西条くんは、
「ば・・・・ばか・・やろう・・・・」。
まだ立てていません。

ケンちゃんは、再び西条くんへと向かっていきました。

が。

この時


「ケンちゃん。そこまでだぜ！」

「ん？」

そこに立っていたのは・・・

　キャッチャー？

いえ。手には剣道のコテみたいなのをつけている、ようは体中おもいっきりガードされた

　孝昭くんでした。

「なんだそのカッコウは？」

「ケンちゃん。俺はケンちゃん、尊敬してたけどよー。悪いが倒させてもらうわ」

「はぁ？俺を倒す？」

「ああ。ちょうどいいや。はっきりさせてやる！俺が西条より強いってな」。

そう言うか言わないかのうちに、いきなりその格好でケンちゃんに襲いかかりました。

あわててキックを放つケンちゃんでしたが

　ボス

キャッチャーのプロテクターをつけた孝昭くんにこれは通じませんでした。

「へへっ！あまいなぁ、ケンちゃん！ケンちゃんの攻撃はとっくに研究済みだぁ！」

「くっ、てめ！」

「今度はこっちからいくぜぇ！」


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