ぼくたちと駐在さんの700日戦争

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「坂本んちの土地？」
西条くん。小首をかしげました。

「ああ」。

「なんで今まで売らなかったのかな？困ってんのに」
「だから抵当権ついてる土地は、それはずさないと売れないんだ」。

「あ～～～。貞○帯みたいなもんだな！」

西条くん。ぽんっと手をうちますが、ぜんぜん違う。

「それでその貞○権ってどうやってはずすんだ？」

う～ん。「ていとう」と「ていそう」
言われてみれば似てないこともないような・・・。

「借金払うか、貸し主から売却許可もらうんだ」。

「？？？」

あ。もういいや・・・。
僕は西条くんへの解説をあきらめました。


そうこう話しているうちに学校到着。
夏休み中でも、体育会系は部活しています。

僕と西条くんは、プールに行くと水泳部の千葉くんを呼び出しました。
急に呼び出された千葉くんは、海パンにTシャツというラフにもほどがあるスタイル。

「お前、なんで海パンのまんま来るんだ？」
「だってすぐ練習だもん。お前、知らないだろ？このサポーターってやつな。一旦脱ぐと履くのたいへんなんだ」。
と、海パンを開けて見せようとしますが
「あ。いいよ。説明しなくって」。

そして保健室。

「うわ～～～～。あぢ～～～～」。

窓の開けられていない密室は、当然のこと熱帯地獄になっていました。
僕たちの学校は、病院がすぐ側にあるということもあって、保健の先生は非常勤でした。したがって、夏休みに保健の先生が登校することはまずありません。
基本的医薬品（頭痛薬であるとか殺菌薬であるとか）は、生徒に解放されていて、小さな怪我は自分たちで応急処置していたのです。
それでもいくつかの「劇薬」や書類は鍵付きのロッカーに納められていて、これを「先生がブルーフィルムを隠す」のに利用したのだと思われます。

「暑ぃなぁ」。
「まったく」。
しかし窓は開けられません。

「俺、Tシャツ脱ぐ」。
千葉くんはとうとう海パン一丁。

「さっさと終わらせよう」。
「ああ」。
会話がすっかり泥棒です。しかも狙いはブルーフィルム。

西条くん、さっそく先生のスチールデスクの引き出しを開け
「ここにな。そっちの机の小ロッカーの鍵が入っててな」。

小さな鍵を取り出すと、
「そっちのロッカーに大ロッカーの鍵が入ってんだ」。
「凝ってるな」。
「ああ。それだけやましいってことだろ」。
「なるほどな」。

ブルーフィルム、濃厚です。

「で、ここを開けると・・・」

ありました！へんなフィルムの束！確かに保健体育資料にしては多すぎます。
僕たちはそこのフィルムを数本取り出すと、それぞれ吟味を始めました。

「この”アンコールワットの謎”って怪しいな」。
「いや。こっちの”明智光秀は生きていた”はもっと怪しい」。

が、この時

「エイ子ちゃん～～。だいじょぶ～～～？」

やべ！誰か来る！

どっか隠れなきゃ！でも隠れるところがありません。
考えてみれば、僕らもこの学校の生徒なのですから、隠れる必要などまったくないわけですが、後ろめたいことをしていると、人間隠れようとするから不思議。

で、目についたのが、ついたての裏のベッドでした。
本来、保健室には2つベッドがありましたが、ひとつは折り畳まれていたため、僕たちは3人揃ってシングルベッドの下に隠れるはめになりました。

（うわ～～～。あっちぃなぁ～～～）
（こら。もうちょっと詰めろよ！こっちはみ出てる）
（え・・詰めろっつっても）
（千葉、でけぇよ！）
（いや。でかいっつっても）

ヒソヒソと僕たち。

で、気づきました。それぞれが仰向けだからはみ出る。
みんなが横になればいい、という小学生でもわかりそうな常識。
高さが低いために、完全に横にはなれず、へんに重なり合ってはいましたが、この画期的発見でベッド上からは見えなくなりました。

「ごめんね、郁ちゃん」。
「うーん。いいの、少し休みなさいよ」。

どうやら女子の運動部の誰かが暑気あたりでもしたようです。

連れて来た郁ちゃん、という子が
「暑いわねぇ」。
保健室の窓を開けていきます。
しかしベッド下の僕たちには、あんまり恩恵はありませんでした。

「横になるといいわ。エイ子ちゃん」。

え・・・。ベッドくるわけ？

「うん・・・そうするわ・・・」。

え～～～～～～!!

ギシギシと上部がきしんで、エイ子ちゃんという子がベッドに座ったのがわかります。

（やべ～～～～）
（どうしよ？）

しかし、ここはしかたありません。ただただ黙って耐えるのみ。

と、思いましたが郁ちゃんが
「あ。ブラはずしたほうがいいよ」。
「あ、うん。そうする・・・」

（え？ブラ？）

追い打ち。
「あ！英子ちゃんって意外とおっきいのね。わかんなかった～～～」。
「え？あたしなんかおっきくないよ～～～」。
「乳首かわいいい～～～」。
「やだ。郁ちゃんったら」。

やだ。郁ちゃんったら・・・。

え？待てよ？脱いではずしてるのか？
と、振り向くと足元はハカマ。どうやら女子剣道部？

「袴も脱いだほうがいいね」。
「え・・そうかな」
「うん。締め付けてるのよくないよ。だいじょうぶよ。誰も来ないから」

っていうか、始めっからいるんですけど・・・。

ふぁさ、っとベッドサイドに落ちる袴とそこに残るふくらはぎ。

西条くん
（千葉！なにあててるぅ！）
（あ～～～ごめん。たまんなくって）
（縮めろ。ばか！）
（いや～～～そんなこと言っても）
（なんとかしろよ！）
（よ、よし！いんいちがいち、いんにがに、いんさんが・・・）
（だからなんで1の段なんだよっ！）

狭い所でもめるな。暑い。

が、千葉くんがなんとかしようと腰を動かしたものですから西条くん
（うわ～～～！気持ちわり～～～たまんね～～～～！）
なにしろ横になって密接した状態。たしかにこれはたまりません。

とうとう
「はなれろ！ぼけっ！」

西条くん。千葉くんを蹴飛ばしてしまいました。
いかな大男千葉くんでも、さすが西条くんの蹴り！ズリッと体まるごとベッド下からはみ出してしまったからたいへん。

　「キャ～～～～～～～～!!」
　「ちかん～～～～～～～!!」

そりゃ女子だって驚きます。ベッド下から海パン一丁で股間ふくらませたヤツが出て来たんですから。


職員室。僕たちの前で扇子をぱたぱたさせているのは、当直の工藤先生。

「ったく。今度は痴漢とはなっ！」

「いえ。先生。違いますってば」。

「じゃ？なんでそんなとこで寝てたんだ？」

千葉くん。
「あ～～～～。それがですね。頭痛で」。

「頭痛？健康優良児のお前がか？」

「いやぁ。今日、差し入れの氷小豆を食べたとたんに刺すような激しい頭痛が・・・」。

「いや・・・千葉。それでいちいち保健室来られたらたまんないぞ」。

工藤先生が正しい。

「で？ベッド下で寝ていたと？」
「はい～～～～～～～」。

「普通ベッドの上に寝るもんだぞ」。

「それが俺たち、枕高いと眠れないたちで」。

「ほほぉ～～～～。なんで3人で？」

「えっと・・・・」。

千葉くん、少し考えまして


「仲良しだから？」




※あ～～～。とうとう抜かれましたね～。
　定期的に同じ点数入れる技知らないからなぁ
　正攻法でぽちぽち

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