ぼくたちと駐在さんの700日戦争

←重要なお知らせへ　12章-第61話へ→
←12章-第59話へ　
人気ブログランキングへ　　ブログ村ランキングへ

---

坂本くんは、少し怯えているように見えました。
無理もないことですが。

それでも
「じゃ・・・僕、一旦家にもどりますんで・・・」。
「ああ。無視しろよ。あいつら」。
「・・・ええ・・・できるといいんですが・・・」。

「俺らがつきあうからよ」。
西条くん。

「あ。助かります。先輩」。

久保くんと西条くんが同行することになり、坂本くんはいささか安心したようでした。

坂本くんの家の玄関にたどりつくには、正面の横の路地を通らなくてはなりません。

僕たちは、彼らの後ろ姿を見守っていました。
風体の悪い男、3名。
途中で坂本くんたちに気づいたようです。

村山くん。
「ちょっとやばい雰囲気だな」。

「ああ。止めたほうがいいな」。
孝昭くんも言いました。

しかし。手遅れでした。

男たちは、しばらく坂本くんになにか話しかけていたかと思うと、いきなり坂本くんの襟首をつかんで持ち上げました。
とたんに西条くんと久保くん、これを守ろうとして襲いかかります！

「てめぇっ！」
もう一人も加わり、突然の乱闘！
「プロをなめんじゃねぇぞ！くらぁ！」
怒声が静まった街に響き渡ります。

　ガシャン！

シャッターになにかが当たる音。

若組頭の早乙女さんでも2発。西条くんの敵ではありませんでしたが、久保くんは違います。
シャッターの音は久保くんが押し付けられた音でした。

西条くんは、ひとりをうづくまらせると、久保くんを掴んでいた男に、後ろからおもいきりキック！
海老ぞりになった男を、さらにパンチ2発で沈め、坂本くんを押さえていた男にも襲いかかります。
この機を見て久保くんも攻撃に転じたようで、それから数十秒後、男が地べたに倒れ込みました。

孝昭くん。それまで構えていましたが、その様子を見て
「やべぇな。プロとか言ってたな」。
こうつぶやくと

「お前ら、加勢にいってやれ。人数多いほうがいいからな。西条いるからどうせ動けねぇだろうけどな」。

「お前は？」

「ああ。プロとなりゃ話べつだからよ。坂本は家われてるしな。善後策うつわ」。

さすが孝昭くん。だてに長年不良やってません。

「あいつら。なるべく留めとけよ。組織と連絡とれねぇようにな」。

そう言い残すとバイクを走らせました。
そうか・・・。駐在さん呼ぶつもりか。

　組織・・・。

僕たちは、一度、竜ヶ崎神社でプロとやりあったことがありましたが、彼らはよそ者でした。
しかもひとりとして面識のない戦いで、警察官である駐在さんが混じっていたおかげで、余計な心配をせずにすんでいたのです。
しかし、今回は、孝昭くんが言うよに、まるで勝手が違います。

が、行くしかありません。

僕と村山くんは、孝昭くんの言いつけ通り、3人のところに駆け寄りました。

「おい！だいじょぶか？」

西条くん。
「ああ。俺はな。そっちは少しやられた」。

久保くんをさしました。
そうです。僕たちはこういう事態では、けして名前を言い合いません。

見ると久保くんは口の中を切ったのか、鮮血がついていました。

「強ぇ。こいつら」。

その暴力団風の男たちは、西条くんの足元で唸りながらうづくまり、すでに立ち上がることができないようでした。

「お前ら。早乙女さんとこのもんか？」

西条くんがしゃがんですごみます。

高校生にのされる、という事実についてこれないのか、3人は黙ったままでした。
というか、うち1人はほとんど意識がないように見えます。

西条くん。パンチパーマの髪の毛をわしづかみにすると、コンクリートの歩道にうちつけ

「答えろ！おい！」

「ち、ちがう・・・・。誰だ、そいつぁ・・・」

ちがう？

じゃぁ虹色家族とも関係ないのか？

僕の焦燥はピークに達していました。
西条くんがいくら強いとは言え、所詮は高校生です。孝昭くんの言う通り、プロはプロなりのことがあるわけで、それは個人の強さの問題ではありません。

　えらいことになったな・・・。

坂本くん。
「すいません・・・。先輩・・・。巻き込んじゃって・・・」。

これだけの騒ぎです。大通りのこと。通る車からは様子が見えます。
通報で警察が来れば助かりますが、来たら来たで学校での処遇が問題になります。

そうなるとあとは、駐在さんを迎えに行った孝昭くん頼み。

西条くんが押さえつけていた一人が唸るように言いました。
「てめぇら・・・。こ、こんなことしてただですむと思うなよ・・・」。

まんざら負け惜しみでもありません。
その言葉にはぞっとするものがありました。

しかしここは仕方ありませんので、西条くんに
「もう少し寝ててもらえるかな？」

「おお。簡単簡単」。

西条くん。正拳付きにかまえると

　ドスッ！

男は
「おはぁっ！」
という声を最後に、静かになりました。

「殺してないよな？」

「ああ。死なねー。死なねー」。

僕とちがい、プロとも何度もやりあっているであろう西条くんは、落ち着いたものでした。

駐在さんが来るまで・・・
「あと30分くらいかな・・・」。

「30分な。わかった」。

その間、ひとりの意識がもどりそうになると

　ドスッ
「おはぁっ！」

またひとりの意識がもどりそうになると

　ドスッ
「おはぁっ！」

まるでモグラ叩きでもするかのように、繰り返す西条くん。
なんか楽しんでいるようにも見えます。

西条くんを除くメンバーは、みんなでまわりにたむろして、通りからこの様子を隠しまくりました。
とにかく通報は困るのです。

遅い・・・。孝昭・・・・。なにやってんだ。

「駐在さんいなかったのかな・・・」。
「どうだろ？」

僕は村山くんたちと、極力、男たちにも聴こえる声で、駐在さんの会話をしました。
そうです。警察官と知り合いで、すでに呼んであることを強調するためでした。

僕がしびれを切らした頃、ようやく孝昭くんがもどりました。

「いやぁ。わりぃわりぃ」。

「遅かったじゃないか！で、駐在さんは？」

「駐在？」
孝昭くん。すっとんきょうな顔をしています。

「駐在んとこなんか行ってないぞ」。

「え？じゃ、どこに？」

「電話してきたんだよ。電話。ところが100円玉しかなくってよー。くずすの大変だった」。

「じゃぁいったい誰に？」

と。これに答えはいりませんでした。
孝昭くんのバイクのすぐ後方。

　バン！バン！バン！バン！

すさまじい音をたてて車が止まりました。

　げ！フロンテクーペ？

う、うそだろぉぉぉぉ？

そしてフロンテクーペのドアが乱暴に開き、中から出て来たのは

言うまでもなく

「ケ、ケンちゃん・・・・・・・・」。

孝昭のバカ野郎・・・事態悪化させてどうする・・・・。

ケンちゃん。大股でつかつかと西条くんの横まで来ると

「おお。待たせたな！」

「え・・・待ってなかったけど・・・なんで？」。
あっけにとられる西条くん。

うん。ぜんぜん待ってない・・・。

が。手遅れでした。

3人がすでにのびて意識がないにもかかわらず・・・

なんの話を確認するでもなく、いきなり蹴りっ！！！！！

「ドウハウァッァァァッ!!!」
西条くんにやられたときとは、まるで違う断末魔の声を上げました。

「はっほ～～～～～～～♪」

「ケンちゃん、かっこいい・・・・」。

いや。孝昭。お前の尊敬はわかるけど・・・・。


今日の標語：『ALL NEED IS らんくり』いや。意味わかんないって言われても・・・

人気ブログランキング

　　　　12章-第61話へつづく→

mixiに「ぼくちゅうコミュ」ついに1400名突破~~！。mixiやってる方、ぜひどうぞ！
mixiコミュ参加ご希望のかたは、トップページから!

携帯でコメント欄が見えない方→こちら
携帯でコメントを入れられない方→こちら

関連記事

• 12章-第61話 善意の第三者(7)
• 12章-第60話 善意の第三者(6)
• 12章-第59話 善意の第三者(5)