ぼくたちと駐在さんの700日戦争

「とにかく坂本。一度は帰らないと・・・」。
「はい・・・」。

このままいけば、捜索願になりかねません。

「とりあえず、坂本んち、どうなってるか見に行こうぜ」。

躊躇している坂本くんに、孝昭くん。

「心配すんな！坂本！金融屋がもし早乙女ちゃんなら、西条に弱いから」。

「え？そうなんですか？」
急に明るい声の坂本くん。

西条くん。
「ああ。こないだのしてやった」。

「えーーー！だって暴力金融ですよ!?先輩、見境いないんですねー」。
驚く坂本くん。

「ああ！わたしは何者の挑戦でもうける！」

なにもっともらしいこと言ってるんだか。
自分がゲロ吐いた上に、勝手にのしといて。

「リンカーンも言ってるだろ？」

お。西条にしてはめずらしい正確な偉人発言！

「天は人の上に人をつくらず、だっけ？」

そりゃ福沢諭吉だろ・・・。一瞬でも感心した僕がバカだった。
どういう関係があるんだよ・・・。

西条くん。
「んん？人の上に人？」

なにか考えていましたが




「騎上位だなっ！」




あほ・・・。
だいたいなんで女が上って決めてかかる？
福沢諭吉先生。体位にされちゃってますよ？


僕たちは短い話し合いの結果、坂本くんを送り届けるのと同時に、様子を見に行く事に決めました。
トレノに坂本くんを乗せると、ひとりはみ出てしまうので、孝昭くんはチャーリーのバイクを借りました。

チャーリーのトレールのエンジンをかけた孝昭くん。
シートにまたぐと

「う、うおっ！こ、これは！」

「どうした？孝昭」。

「し、振動がぁ・・。バイクの振動がタ○に・・・ダイレクトにぃぃぃぃ」。

なに悦んでんだよ・・・。

「タ、タ○がぁっ！タ○がぁっ！」

普段オンロードバイクのCB250に乗っている孝昭くん。
トレールの2気筒の振動に驚いているようです。
あげく
「なぁ、チャーリー」。

「ん？」

「この振動がよくないんじゃねぇか？」

「なににだよっ！」

「いや。なんとなくだけど」。

「そ、そうかな・・・」。

そこで納得するから悪いんだよ・・・。チャーリー・・・。

「振動か・・・・」。

落ち込んでいます。


そして再びトレノ。
孝昭くんの代わりに、道案内役の坂本くんを後部座席に乗せ、西条くんは助手席に。

村山くん。キーを回すと同時に
「西条！今度走行中にギアいじったら・・・」。

注意しますが、当の西条くん。

「あいあい～～～。もうしまへ～～～ん」。

絶対するとみた。

が、村山くん。考えました。

考えて
「今度走行中にギアいじったら、お前の目の前で女子生徒10人からサンドイッチもらってやる！」

「えええええええ！？」

「それでお前には一個もやらずに全部たいらげてみせるからな！」

「うう・・・かんべんしてくれ・・・。村山様」。

うーん。頭いいなぁ。村山。
西条くん。かなり堪えたようです。


おかげでめずらしく無事なドライブ。

「村山・・・きつくなったよな・・・」。

お前がきつくしたんだよ。西条。

「パイルダーなのに・・・」。

ちがうよ。トレノだよ。


坂本くんの家はジェミーと同じN市です。
商売をしている坂本家は、大きな通りに面していて、比較的わかりやすい場所にありました。
街灯こそ直接ついていませんが、トレノと対向車のヘッドライトに照らされ、坂本くんの家が浮かび上がります。

シャッターの前。たむろす数人の男たち。
いかにも怪しい雰囲気です。

「ほんとだ。いるわぁ」。

「でしょう？ここのとこ毎晩みたいです・・・」。

「なるほどなぁ。帰るの憂鬱なわけだよな・・・」。

渉くんは、これを中学で経験したのか・・・。

この状況下、真ん前に停めるのも考えもの、ということで、僕たちはひとつ手前のT字路を曲がって駐車しました。

様子をうかがう僕たち。

「あれ？早乙女ちゃんじゃねぇなぁ」。
「うん。シークレットブーツじゃないもんな」。
「普通の足だ」。
「ああ。人間としてバランスが良すぎる!」。

へんな見極めの基準になってます。



オマケ：


なぞつまさんが、昨日のコメント合戦から挑戦した
「なると入りキーマカレー。西条バージョン」。
うーん。予想外にうまそうだ。

今日の標語：ランクリで 貧しいながらも 楽しい我が家

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