ぼくたちと駐在さんの700日戦争

グレート井上くん。
「うん。ウルトラマンも正義の味方って思って僕ら見てたけど、バルタン星人にすれば女子供皆殺しにしたわけでね」。

「お！井上、その説明わかりやすっ！」

「だろ？西条向けだから」。

「ありがとっ！」

礼言ってどうする。西条。
バカにされてるんだってば。

続いて知性派森田くん。
「うーん。『ノンマルトの使者』だね」。

「なにそれ？」

「え？知らないの？”ウルトラセブン”の名作だよ」。

『ノンマルトの使者』は、ウルトラセブンで第42話として放送された有名な作品で、要約すると、実は地球には先住民族「ノンマルト」と言われる人たちがいて、それを地球人が「敵」とみなして攻撃し始めるわけですが、これにウルトラセブンが疑問を持つ、という異色作品でした。
一説では、脚本家の故金城哲夫氏が、出身地である沖縄と本土のことを書いた、と言われていて、当時、ツウの間で話題になり、現代でも語り継がれている名作です。

しかし、いかな名作であれ、西条くんのいるところで「セブン」の話を出したのは失敗でした。

「アイスラッガーーーーーー!!」

ほらね。次から次に物投げてる。

「あぶねぇだろ！」

「孝昭。おまえミクラスやれ」。

「バカヤロウ！なんだって俺がカプセル怪獣なんだよ！」

「え。アギラよりはメジャーだぞ」。

「いや。そういう問題じゃねぇっ！」。

「河野、お前ウィンダムな」
「ええ？オレぇ？」

が、これに孝昭くん。不満爆発！

「なんで河野がウィンダムで俺がミクラスなんだぁ！えええ？」

そうです。同じカプセル怪獣でもウィンダムはスマートでグッドデザイン(画像参照)。
どこの子供たちも、カプセル怪獣なら「ウィンダム」をやりたがったものでした。

＜カプセル怪獣ウィンダム＞

対してミクラスはどんくさかったですから(画像参照)、この怒りはごもっとも。
ごもっともですが高校3年生。それ以前にカプセル怪獣ゴッコの年齢ではありません。

＜カプセル怪獣ミクラス＞

しかし、

「死ねぇっ！セブン！」

気づくとセブンとカプセル怪獣たちは、激しい内紛状態に入っているのでした・・・。


自分が火種の世紀の決戦を完全無視して森田くん。
「近頃、チャーリー、来ないな」。

「ああ。下校と同時に製作小屋だからな」。

「ワッシャーのことは伝えたのか？」

「いや・・・。それがまだ。ちょっとタイミング、つかめなくって」。

「坂本には？」

「坂本も一緒に製作小屋だと思う」。

スティングレイ2号を作り始めてからと言うもの、のっぽさん部隊は、門限のある森田くんを除いて、ほとんどチャーリーの小屋に詰めていました。
特に坂本くんは、家に帰りたくないのか、かなり遅くまで小屋に居残り、泊まり込むこともあるらしき話でした。

「坂本・・・なんとかしないとな」。

「ああ・・・。でもなにができるのか」。

「うん。わかんないな」。

「とりあえず、今日、小屋に行ってみるよ」。
僕が言うと、戦いを終えた河野会長と久保くん。

「おー。俺らもつきあうか？」

「いや。いいよ。あんまり人数多いのもな」。

そうです。問題はかなり複雑そうでした。


その日、僕はもうひとつ確認しなくてはならないことがありました。

和美ちゃんが渉くんの消息について知っているかどうか、です。

僕はバレーボール部の練習している体育館入口に立っていました。

すると
「あら～～～～ん。せんぱい～～～ん。和美先輩に用事ですかぁ～～～？」

　　げ。瑞穂。

「あ・・・。うん。まぁ。練習、遅いのかな」。

「県大会、上っちゃいましたからね。遅いと思いますよ～～～」。

「そうか。あいかわらず強いな。女子バレー部・・・」。

「うふふふっ！デート、できませんねっ！」

なにがうれしいんだよ・・・。

「あたしでよかったら～～～。代わりに行きますよ～～～」。

「え。君もバレー部だろ？」

「あははは。あたし、レギュラーじゃないんで」。
瑞穂ちゃんは、ちょっとだけ寂しそうに言いました。

「じゃぁさ。悪いけど、和美にポプラで待ってるって、伝えてくれない？」

「はい！いいですよ～～～。ちょっと待っててくださいね！」

「うん」。

「着替えてきますから！」

え？着替え？なんで？

しかし瑞穂・・・
「お待たせ～～～～～♪」。

すっかり制服に着替えて戻って来ました。

「あの・・・。伝言してくれた？」

「あ！忘れてた！あたしうれしくって！」

うれしいってなにが？

「今、伝えてきま～～～～す♪」

いや。なんで着替えてきたんだ？うれしい？


再び瑞穂。
「おまたせ～～～～～～～♪」。

「伝えた？」

「はい！ばっちし！じゃ、先輩行きましょうか♪」

「行きましょうって、どこへ？」

「ラプポですよ～～～♪またテレちゃって」。

テレてねぇし、意味わかんねーって！

「う～ん。なんか今日は、リボンの位置、いまいち決まんなくって～～～ん」。

いや。リボンの位置はましなほうだ。それ以外が問題だ。


しかし結局、ポプラへの道。なぜか隣りにいる瑞穂ちゃん。

「あ。先輩、知ってました？最近、ポプラのケーキ、すっごいおいしいんですよっ！」

ああ。知ってるもなにも、昨日食べたばっかりだ。
納入業者のケーキ・・・。

しかしどうやら女子には評判のようで、ポプラの窓際には、ギッシリと女子生徒。
みんなのテーブルにメルヘン製のケーキがおかれています。


ポプラはひさしぶりでした。村山くんのトレノのガソリン代は、ワリカンで負担していたので、ここのところ出費が多かったのです。

喫茶店ポプラ。
カウンターには

「洋次！」

「あ！ママチャリ！ひさしぶりだな！」

「座れるか？」

「えっと・・・2人・・・・？」

ここまで言って洋次。

僕の耳もとでこっそりと
「椅子、3つ用意したほうがいいかな・・・？」

「え・・・。いや・・・。いつもひとつで間に合ってるみたい・・・」。

「そ、そうか・・・。そうだよな」。

僕の後ろに立つ瑞穂ちゃんに、かなり衝撃を受けているようです。
なにしろでかい。

「あ・・・。あの・・・ママチャリ・・・・」。

「ん？」

「あの・・・・。か、か、か、か、かわいいな・・・。彼女・・・・」。

「え・・・・・」。

「さ、さすがママチャリだ！ス、スーザホンみたいだな！」

洋次・・・・。
褒め言葉になってないぞ。スーザホン。

いや・・・。どちらかと言えばミクラス・・・・・。






今日の標語：ランクリで 救える命が きっとある　　ほんとかよ…

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