ぼくたちと駐在さんの700日戦争

で。よかった。鬼玉が来てくれたよ～～～～。
まったくたよりになるぜ。鬼玉。

鬼玉。
「うわ！すごい熱だ！夕子、どうした？」

もうよ。口から吹いてるくらいだから夕子、しゃべれなくってな。

「やばい！今、お医者さん呼ぶからな！」

井上家は、大字な住所だが近くに医者があった。
近くったって東京で言うとこの近くとはまた違うんだが。

「先生、すぐに連れて来いって！」
「そうか」。

鬼玉。ともだちと打ち合わせてる。

「救急車のほうがいいか？」
「いや、救急車より風間医院つれてったほうが早いだろ」

「そりゃそうだけど・・・。僕まだ・・・」。
「だいじょうぶ。僕がおぶっていくよ」。

お。いいこと言うじゃねぇか。このクソガ・・・おぼっちゃまだな。今だけな。

でな。このクソガ・・・あ、おぼっちゃまがな。
夕子背負って病院まで走ったんだ。
吐いたのも拭いてな。かんしんなガ・・・おぼっちゃまだぜ。まったく。

外、もう吹雪いちゃっててな。
今思えばけっこうな距離だからなぁ。たいしたもんだ。
ただ走っただけでもつらいとこ、夕子おぶってだからな。
学生服には吐いたもんかかってるのにな。

おかげでな。夕子、なんとかなった・・・。けっこうやばかったらしい。

感謝してるぜ。クソガ・・・クソぼっちゃま。

って、なんでおいらが感謝しなきゃいけないわけ？


あ。おいらデートリッヒ。


でもな。こんときから・・・。
夕子。少しずつ変わってった。

なにが、って、やたらとおいらに話かけるんだな。

あのガキが、今日どうしてた、とかな。どうでもいいじゃん。そんなこと。
それよりままごとしようぜ。夕子。最近やってねぇし。

「どう思う？デートリッヒ」。

いや・・・。どう思うとか聴かれてもなー。

　とってもずるがしこそうなおぼっちゃんですね！

まぁ、声が出るならそう言ってやったんだが。
なんだってあんなやつのことを。そりゃもうオトタマやオカタマの話よりずっとずっとするわけだ。
っていうか、ほとんどあいつの話だな。

で。行動もおかしい。
なんかあいつが鬼玉のとこに遊びに来ると、部屋で髪とかしたりよ。
わざわざ着替えたりな。
おいおい。それお出かけ用のブラウスだろ？なんだってこんな時に・・・・

　　そっかぁ・・・・。

　　恋したんだ・・・・。あいつに・・・・。

「デートリッヒ。これあなたと私だけのヒミツね！」

ああ。おいらこう見えても口だけは固いんだ。
体やわらかいぶんな。

口が裂けてもしゃべらねぇ自信あるね。おいら。
って、あとから本当に口裂かれるとは思わなかったからよ。
こんときはそう思ったんだ。

こん時からかなぁ。
夕子が突然、眠る前に抱きしめてきたりな。
なんか悲しそうにしたり。
鬼玉に電話くるわけだけど、とりついだだけで心臓ばくばくいってる。
そんときはとりわけうれしそうなんだな。

わかってんのかな。あの野郎は。

もしおいらが本物の熊に生まれ変わることあったら、まっさきに喰ってやるって、心に決めたねぇ。
縄張り荒らした、とか、適当な因縁つけてな。

え？

じぇ、ジェラシーじゃねぇよ！ばか！

な、なんだって人間の女に・・・。

でもな・・・。

この恋は。ハッピーエンドにゃならなかった。



ランクリわすれんなよ！こら！

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　　　　特別編：第6話へつづく→


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