ぼくたちと駐在さんの700日戦争

初詣の神社で、小さな女の子が泣いていました。

　エ〜〜〜〜ン

「ぁあ？」

よりによって、最初に気づいたのがスケ番でした。

「おお、どうした？」

スケ番は、おうおうにして子供の扱いがうまくありません。

　ビエ〜〜〜〜〜〜〜ン

案の定、その怖い化粧顔でさらに泣かせてしまいました。

「オ‥‥‥！な、なんだぁあ？テメェ、人のツラ見て泣き増し(?)しやがって！」

そんなこと言われたって、怖いものは怖い。

　ビエ〜〜〜〜〜〜〜ン

女の子は泣き止みません。

「泣いてるだけじゃわかんねぇだろがぁ！」

　ビエ〜〜〜〜〜〜〜ン

「泣くんじゃねぇ！だから男にナメられんだぞ!!」

そんなこと言ったって、女の子にはまだわかりません。

が‥‥‥‥‥。
慣れと本能というものは、すごいもので、
女の子は、直感で「この人は顔は恐いけど害はない」ということを察知します。


「はぁあ？迷子んなった？」

「ウ‥‥‥‥グ‥‥‥‥‥‥ウ，ウン！」

「ッキショウ‥‥‥‥！」

スケ番は困り果てました。

もうすぐ仲間との集会（ドンパチ）があったからです。


すると‥‥‥‥‥

よく見ると、女の子はちゃんと名札を下げているではありませんか！

「そうか。オマエ、和歌子ってんだ？アタシは早苗。さーなーえー」

「‥‥‥‥さなえ？」

「ああ。おランって呼んでもいいけどな」

「？」

もちろん、幼女にスケ番の源氏名なんか通じません。
このへんがスケ番のスケ番たるところです。


「でーーー、オマエ、どっちから来たんだ？え？」

スケ番は、その子が、バス停でわずか3つほど先の町内から来ていることを知ると、

「あ。そこだったらアタシと方向がおんなじだ！」


「よしっ！連れてってやる！」

でも、そっちの方向にはドンパチが待ち受けてるわけでー。


「ちっとここで待ってろ。オマエを捨てたヤツにオトシマエつけてやっから！」

「？」



「あーーーー、もしもし？アタシだよ」

”あ。早苗さん。明けましておめでとうございます‥‥‥‥”

「挨拶はいいからよ。オマエ、ちょっくら出て来い」

”え！どこにですか？”

スケ番は、弟の友人に押し付けることを決心していたのでした‥‥‥‥。


呼び出したって、すぐに来るわけではありません。
スケ番は、慣れない手つきで、女の子の手を引いて、とりあえずバス停＝戦場の方へと向かいました。
もはや時間がないのです。

と‥‥‥‥‥。

「姉御ーーーーーーーーーーーー」

向かい側からスケ番の手下どもが迎えにやって来たではありませんか。

「姉御〜〜〜〜！遅いっスよ！」
「もう、敵もみんな集まって‥‥‥‥‥‥‥‥」

そこまで言って、

「あ、あ、姉御！その子供、い、いつの間に!?」

「ぁあ？」

よくよく見れば、その子は、見た目スケ番の素顔によく似ていたのでした。

「バ‥‥‥‥‥バ，バカ！ち、ちがう！この子供は‥‥‥‥‥！」

でも、スケ番っていうのは、もともとがそういう「人種」ですから

「いや〜〜〜、さすが姉御！」
「奥手だ奥手だと見せかけといて〜〜〜」
「スミに置けませんね〜〜〜〜姉御〜〜〜〜〜」

「ちっ、ち、ち、ちが、ちが、ちがうつってんだろ！」

「いや、隠さなくっていいっス」
「顔見りゃわかります」「尊敬します！姉御！」
　あげく、
「ここは、お子さんと一緒にお正月をお楽しみください。敵はアタシらだけでしとめますから」

「ぁあ？」

「ママとここでまってるんでちゅよ〜〜〜？す〜ぐボッコボコにしてもどってきまちゅからね〜〜〜」

「だからーーー、アタシの子供じゃ‥‥‥‥‥」

でも、タイミングっていうのは、神様が作ってますから。

そこに、

「早苗さーーーーーーーーーん！お待たせしましたーーーーーーーーーーーー！」

よりによって弟の友人到着。

「あ！やっぱりぃ〜〜〜〜〜〜」
「姉御、そういうコトだったんですね〜〜〜〜」

「よかったでちゅね〜〜。パパがやってきて〜〜〜〜」
「これでママもドンパチ行けまちゅからね〜〜〜〜」

「く‥‥‥‥‥！」


「はぁ‥‥‥はぁ‥‥‥‥。早苗さん、お待たせしました！」

　ガスッ！


「ノコノコ出てくんじゃねぇ！バカヤロウ！」


「え‥‥‥‥‥？な、なんで‥‥‥‥‥‥？」



　　感動巨編『迷子とスケ番』　-おしまい-


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