ぼくたちと駐在さんの700日戦争

西条くんとレオくんは全力で逃げ回っていました。

追いかけているのは

「こら～～～～！まて～～～～～～～～！」

レオくんのお姉さんの澪ちゃん！

「お、お前の姉ちゃん、足はえーーなーーー！」
「う、うん。毎年運動会、リレーの選手やってるもん」。

「い、いや。運動会のリレーつったって、俺、陸上部だぞ？」。
「そ、そうなの？」

全力疾走の逃亡者2人。
と、通り沿いに、小さな小屋を見つけ、西条くんとレオくんは、急カーブして、そこに身を隠しました。

やがて澪ちゃん。

「レオーー。どこなのぉ？姉ちゃん、ゆるさないからねーーー」。

そうです。レオくんは、姉の澪ちゃんの目を盗んで、再び西条くんの元に、特訓にやってきたのでした。
家にレオくんがいないことに気づいた澪ちゃんは、第六感か、これを鋭く嗅ぎ付け、つれもどしに来たのです。

「か、顔はなぁ・・・美人なのになー」。
「う、うん。姉ちゃんもあの性格じゃなきゃモテたと思うんだけど」。

小声で話しながら、澪ちゃんをやりすごそうとする西条くんとレオくん。
澪ちゃんは、どうやらすぐ側まで来て、探索をしているようでした。

「シーーーーー！」

と、やがて少し気配がおさまったところで、壁の向こう側から澪ちゃんの声。


「あーん。やだーん。走ったもんだからスカートからみついちゃううーん」。

「えっ！」

西条くん、つい顔を出してしまいました。

「あ！めっけっ！」

「げ！」

「し、しまった！に、逃げるんだ！レオ！」

またしてもチェイス再開！

「お、お前の姉ちゃん、あ、頭もいいなーーー」。
「いや・・・西条先輩がバカなんじゃ・・・・・」。

「いやいや。あの手は誰でもかかるってーーー。俺としたことが、ぬかったぜ！」

というか、西条くんならではですが。

また30mも走って、今度は公園。
男子便所に入った西条くんたち。

「こ、ここなら安全だ！」

「ま、またここなんだね・・・」。
と、レオくん。心なしかうなだれています。

「ぜ、贅沢言うな。さすがの姉ちゃんも男子便所までは来ないって」。

「こ、こんなんで暴走族・・・勝てるのかな。西条先輩」。

「ばか。だってお前の姉ちゃんと戦うわけにはいかねぇだろ？」

「そりゃそうだけど・・・・」。

中1のくせに正論です。


そっと気配をうかがうと、どうやら澪ちゃん。公園まではたどり着いたようでした。

「今度は姉ちゃんの手にひっかかんないでね。西条先輩」。
「だ、だいじょぶだって。余計な心配すんな。ばか」。

と、また鳴りを潜めていると、
今度は外から

「キャーーーーーーーー」。

澪ちゃんの悲鳴が聴こえました。

「ん？」

「やだぁ！どうしましょ！スカートやぶれちゃったーーーー」

「え！」

「めっけっ！」

「げげ！またガセ!?」

「今度は、逃がさないわよー。レオ！出てらっしゃい！」

「くそぉ！なんて汚ねぇ女だ！」

2度もかかるお前が悪い。

再び男子トイレに逃げ込む西条くんでしたが
なんと澪ちゃん、平気でトイレに入り込んで来ました。

「こここここ、ここは、だ、男子トイレだぞ！こらっ！」
西条くん、必死。

「便所かくれていばってんじゃないわよ！レオぉ？出て来なさい！」

大に入って扉を締めたままのレオくん。

すると澪ちゃん。
突然静かになり、

「そっか。しょうがないわね。いいわ。お姉ちゃんが悪かった。ぶたないから出てらっしゃい」。

すると。

カチャ。

ドアをそっとあけて確認するレオくん。

「ほんと？」

「ほんとよ・・・。かわいい弟だもの」。

そろそろと扉を開けるレオくん。

と、

バーーーーーーーン。

その扉を蹴り開け、レオくんをむんずと掴む澪ちゃん。

「ね、姉ちゃん！やくそく違うじゃん！」

「おーーーほっほっほ。ぶたないわよーーー。なに言ってんの」。

と、言うなり、いきなりみぞおちにケリッ。

「ぐっ・・・・・」。

「ほら。姉ちゃんちっともぶたないでしょ？」

可哀想にレオくん。かなり苦しそうです。

この様子をまのあたりに見ていた西条くん。

「げ・・・。お欄の再来だ・・・・・」。

澪ちゃん、腹をおさえたままのレオくんをトイレの外まで引きずり出すと

「西条さん？だから弟をへんなことに巻き込まないでって言ったでしょ？」

「お、お前・・・。美人なのにおっかねぇなぁ・・・・」。

「弟はね。まだあたしにさえかなわないの。そんなのが暴走族なんか相手できると思う？」

「だから特訓・・・」

「相手はねぇ。そんな付け焼き刃でかなう相手じゃないの！それくらい西条さんもわかってんでしょ？」

と、ようやくここに、僕たちが到着しました。
僕たち、とは、僕とグレート井上くん。

「なんだ。こんなとこにいたのか。西条。探したぞ」。

「おーー！井上！たすかったー。この姉ちゃん説得してくれよー」。

澪ちゃん。この声にこちらをふりむいたかと思うと、動きが止まりました。

と、レオくんを掴んでいた耳をはなしたかと思うと、

「あ・・・。あら・・・。やだ・・・あたしってば・・・」。

「んあ？」「え？」「はぁ？」

「あー。そうか。君が澪ちゃん？」
グレート井上くん。

「あ・・・。はい・・。あの・・・。澪って言います・・・」。

「んあ？」「え？」「はぁ？」

さっきまでの澪ちゃんとあきらかに別人。

「あの・・・」。

「澪ちゃん、少し話できるかな・・・」。
グレート井上くん。

「あ。は、はい！もも、もちろんです！」

「んあ？」「え？」「はぁ？」




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