ぼくたちと駐在さんの700日戦争

＜文庫版では、ここいらの話はサクッと飛ばしてます＞


こうして、エッチラオッチラ、満載のリヤカーを押し始めた3人ですが。

「エッチラ！オッチラ！」

「まんまだな」「言われてみりゃ、聞いたことないかけ声だな」

お婆さんの家は、山里の低地にありますから、そのほとんどが上り坂。
おまけに、リヤカーの車輪の空気は、ほとんど抜けきっていて、その重さに拍車をかけました。

「激重っ！」

「くそぉ！肝心なとこでいねぇな、西条は！」

「ガタガタ言うな、久保。ジェミーがいたら反対側に押してるぞ」

「言えてる‥‥‥‥」

「わかったら押せ！」

「エッチラーーー！」
「オッチラーーー！」

普及しつつあります。エッチラオッチラ。

苦心惨憺、坂道の半ばまで運んだところで、

「でーー、孝昭。どこまで運ぶんだぁあ？」

ようやく気づきました。

「どこまでだ？」

実は「行くアテがない」ことに。

建場さんからトラックを借りられるのは、また次の日曜日です。

「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん」

気づくの遅過ぎ。


最初に一行が向かったのは、西条くんたちもいるであろうカナリ屋食堂でした。

そこまで行けば、少なくとも人足はいます。

が‥‥‥‥

「た、孝昭！ウチは客商売だぞ！かんべんしてくれよ」

いたのは河野会長のみ。

「西条たちはどうしたんだ？」

「それが、ジェミーの馬鹿が‥‥‥‥」


「姉ちゃんを呼んだ〜〜〜〜？」

「そ、そうなんだ。恐れを知らないヤツってすげぇ」
「ホントだな‥‥‥‥」

「それで？」

「来たには来たんだけど‥‥‥‥」

「あれ？ランサーはどうしたんだ？河野」
久保くんが気づきました。

「早苗さんが‥‥‥‥西条はゲロはくからチェリーは使えないとかって‥‥‥‥」

西条くんの車酔いは有名です。

「乗ってかれたのかっ!?」

「ウン‥‥‥‥。西条たちは人質に預かるって‥‥‥‥‥‥‥」

「バカヤロウ！物とられてんのに、人質もへったくれもあるかっ！」

孝昭くんの怒りはもっともです。
もっともですが、怒りの半分は、ランサーに積もうと思っていたアテが外れたことです。

「じゃぁ、弟から姉ちゃんに言ってくれよ」

「そんなことできるくらいなら、生理なんぞ怖くねぇ」

「だよな‥‥‥‥」「そうだな‥‥‥‥」

「お前らにはわかんねぇんだ。生理の痛みが」

「俺らが悪かった。孝昭‥‥‥‥」

早苗さんは、生理の痛みも弟と分け合うのです。


「とにかく、テメェだけ休んでんじゃねぇよ！」

こうして労力+1

「エッチラーーー！」
「オッチラーーー！」

押し始めますが、アテが決まったわけではありません。



「‥‥‥‥だからってなんで駐在所に持ってくる!?」

「だって、元はと言えば駐在が」

「元はと言えばサッカーボール！」

「ボウリングの玉だっちゅうに」
「外見で判断すっからダメなんだよな」
「わかんねーヤツだ」
「バカか」

「ちょっとは反省しろーーーーーーーーーーーーー!!!」

けんもホロロ。
追い返されました。

「くっそ〜〜〜〜〜」

それでも、メカニック・チャーリーがいましたから、シビックパトカーの車内に、一番重かった「火鉢」だけは置いて来ることができたようですが。

「ザマミロ。火鉢とパトロールしやがれ！」


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