ぼくたちと駐在さんの700日戦争

1年生教室は、1階にありました。
ようやく最後のHRが終わり、竹内さんが教室から出て来ました。

「ああ。竹内さん。ちょっといい？」。
「あ！せ、せ、せ、先輩！」

「あの西条のことなんだけどさ・・・」。

「先輩のウソツキ！」
「え？」

「あ、あたし、あたし・・・。すっごい勇気ふりしぼったのに・・・」。
「あ・・・」。

「先輩が、オッパイほしい、って言うから」。

言ってねぇ！って！
なんでそこだけ大声で言う？この混み合った廊下で！

「あたし、西条さんに言っちゃったんですよー。変態って、そういうものだと思って・・・」。

「あの・・・声大きいよ。竹内さん・・・」。

廊下でこれは堪えます。

「そそ、そしたら、そしたら、西条さん、すっっっっっっっごい本見せて・・・」。

「あ・・。ああ。それは聞いた」。

「あの・・・変態ってあんなものも見るんですか？S○とか」。
たのむから、そこにアクセントつけるな。

「いや・・・僕は・・・あんまり・・・」

「あああああああ。やっぱりそうなんですね！あんな本なんて持ってませんよねー、普通」。

なんとそう言いながら顔を覆って泣き出した竹内さん。
これも廊下じゃきつい。どう見ても僕が泣かせているようにしかうつりません。

「え・・いや。竹内さん、泣かないで。いや。持ってる。持ってるさぁ。男だもの」。

「え？じゃぁ先輩も持ってるんですね？ああいうS○本」

いや。だからなんでそこだけ大声なんだ？このアマ。

「うんうん。持ってるから。あの竹内さん・・・」。

「あーーーー。よかったーーー。先輩、S○趣味なんだーーーー」。

こらこらこらこら。
まわりを通る1年女子がみんな振り向きます。

「あの竹内さん・・・。ね。ここ目立つから。ね。あとで角の喫茶店まで来て」。

「う・・・。先輩・・・あたし・・・施設出身なんですよ・・・そんなおこづかい・・・」。

そっか・・・。しまった。

「え？うん。大丈夫。僕が出すよ。君のコーヒー代くらい。僕のおごりさぁ」。

「せ、先輩・・・ってば・・・。や、やさしい変態なんですね」。

最後が余計だ。


そして角の喫茶店「ポプラ」。
田舎とは言え、昼下がりの喫茶店は、予想外に混み合っていました。

と、そこへ
カランコロ～ン
ドアのカウベルをならして竹内さん。
竹内さんは、驚いたことに友達と二人連れでした。
もちろん、同級生の女子ですから、僕も見たことだけはあります。

竹内さん。
「すいません。先輩。ひとりで変態相手にするの怖いんで、おともだちつれてきちゃいましたー」。
いや。変態相手にするって・・・・。
「瑞穂で～す。先輩のことは、いろいろと興味しんしんでした～」。

いろいろと・・・ね・・・・。はいはい。


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