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<おことわり>本日フィナーレ。3話連続アップです。
静かな朝でした。
それは大多数の人にとって、なんら昨日と変わりはなく、日めくりが1枚めくれただけの。
ありふれた朝でした。
西条くんたちが帰った後、僕はどうやって和美ちゃんと会うかを考えていましたが、結論は単純でした。
会いたいのだから会いに行く。
それだけです。
「そうだ。バリトンだってそうしたんだ。僕もはっきりさせなきゃ」。
思えば、和美ちゃんに対して、これだけストレートな思いを抱いたのは初めてのことでした。
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<おことわり>本日フィナーレ。3話連続アップです。
静かな朝でした。
それは大多数の人にとって、なんら昨日と変わりはなく、日めくりが1枚めくれただけの。
ありふれた朝でした。
西条くんたちが帰った後、僕はどうやって和美ちゃんと会うかを考えていましたが、結論は単純でした。
会いたいのだから会いに行く。
それだけです。
「そうだ。バリトンだってそうしたんだ。僕もはっきりさせなきゃ」。
思えば、和美ちゃんに対して、これだけストレートな思いを抱いたのは初めてのことでした。
僕は日曜をいいことに、自宅謹慎を破り、和美ちゃんと待ち合わせをすることにしました。
そして僕が自転車を用意した時のこと。
「お前。どこに行くつもりだい?」
「え?ちょっと・・・」。
「ダメだろ?謹慎中なんだから」。
「固い事言うなよ」。
「お前。あの子に会いに行くつもりだろうけど・・・」。
「え・・・」。
「だめよ。謹慎の間は」。
母とは思えぬ融通のきかなさでした。
僕はかまわず自転車を走らせようとしましたが、母は今回はゆずりませんでした。
荷台のフレームを固く掴むと、きっとした顔で首をふります。
「なんで・・・」。
「先様にも大切な時期なのよ。今はダメよ」。
「う・・・」。
そうか・・・。転校先の学校のことか?
「お前も今まで好き放題、親ないがしろにしてきたんだから。今回は言うことききなさい」。
僕は、母のあまりに毅然とした態度に、とうとう折れてしまいました。
まぁ、いいや。夜中に抜け出すまでだ・・・。
しかし母の言っていたことは、まんざら的外れではありませんでした。
日曜というのに、教頭先生と担任の教師が家を訪ねて来たのです。
停学と異なり、自宅謹慎は、連絡事項を持って、教師がほぼ毎日家庭訪問するのです。
それにしても教頭とはオーバーな・・。まぁ、担任の女教師は、車の免許を持っておりませんでしたから、誰かが乗せて来ざるをえないのですが。
母は、訪れた教師2人にお茶を出しながら
「謹慎はあまんじて受けますが、この子には反省文は書かせません。よろしいですね?」
そうです。謹慎中、停学中は、毎日反省文を書く決まりがあるのですが、これを母がつっぱねました。
教頭先生は、
「ええ。はい。それはけっこうです」。
意外なことにこれを快諾しました。
続けて
「それから、こちらでも出来る限りのことは致しましたので」。
母。
「はい。この子には謹慎を守らせます。お約束いたします」。
「じゃ。君、あと2週間ね。しっかりね」。
教頭先生たちは、そう言い残し、早々に立ち去りました。
僕は和美ちゃんに、訪ねることができない旨を伝えるために電話しました。
「そう・・・残念だわ・・・。渡したいものあったのに・・・」。
そして予想通り
「あたしから行っていい?」
「あ、ああ。もちろんだよ。場所覚えてる?」
しかし、この時も母が、横から受話器を抑え、きつく首をふりました。
どうして?
僕はその電話の答えを保留して受話器をおかざるをえませんでした。
「なんで?なにが気に入らないんだ。母ちゃん!」
「え。だめよ。謹慎中は他の生徒と会うことは禁止されてるのよ。昨日は突然だったから特別なの」。
「なに固いこと言ってんだ?母ちゃんらしくもない!」
「お前ねぇ。先様からすれば、お前は停学中の不良少年なのよ?わかる?」
「え、だって・・・・」。
「お前は正しいことをした、と思っていても、相手がそうとってくれるとは限らないでしょう」。
確かにその通りではあるのですが。
「まして娘さんを持った親御さん。普通の男の子だって近づけたくないものよ。薫ちゃんとこ見たでしょ?」
だって・・・。
そんなこと言ってたら・・・・。
引っ越しちゃうんだ・・・・。
「お前の気持ちもわかるけど。今はダメよ」。
「し、しんじらんねぇな!なに考えてんだ!」
僕は言い捨てると、部屋に閉じこもりました。
母の言うことはもっともと知りつつ。
そして夜中。12時近く、僕は居間の電気が消えていることを確認すると、窓からそっと部屋を抜け出しました。
うまくいった!
僕が自転車にまたがると・・・・。
なんとタイヤの空気がない!?
母ちゃんだ!
僕は呆然としました。バイク・・・は鍵がないからだめか・・・・。
しぶしぶ部屋にもどると、なんとそこに寝間着の母が立っていました。
「お前の行動なんて手にとるようにわかるわよ」。
「な、な、なんだってそこまでして!」
「言ったでしょ?あなたの軽卒な行動が先様には迷惑なのよ」。
「そ、そんなこと・・・」。
「まして夜中に男の子がたずねてきたりしたら。みどりちゃんだって大変なことになるわ」。
「かずみだよ!ばかっ!」
わかってる。わかってるのに・・・・。
翌日も家庭訪問。しかし、不思議なことに和美ちゃんからの電話はおろか、仲間からの電話もほとんどこなくなりました。
僕から電話をしようとすると、母が鬼のような顔で止めます。
まだコードレスなどない時代。電話は居間のひとつだけでした。
おかしい・・・。
2日目にもなれば、さすがにそう思います。
「母ちゃん。西条たちになにか言ったか?」
「あら。気づいたの?電話よこさないように頼んだわ」。
「な!なんだってそんな!」
「だってお前の仲間だもの。お前のこと、簡単に脱走させちゃうでしょ?」
「う・・・・」。
確かにその通りではあるのですが。
「油断もすきもないからねぇ。お前の仲間」。
「母ちゃん!」
「それで、お前のこと、みどりちゃんに会わせちゃうもんねぇ」。
え・・・。
「ついでにあのマヌケ駐在さんにも頼んでおいたから」。
え!駐在さんにまで!
「まったく警官のくせに、なにしでかすかわかったもんじゃないから」。
そこまで手回ししてるのか?
「お前、味方いっぱいいるんでたいへんだったわ。あははは」。
僕は母の万全な策に、あきれるのを通り越し、怒りさえ覚えていました。
それから毎日、担任が誰か車の運転できる先生と訪ねて来ましたが、一発かすった程度の暴力事件。
そんなに話題があるわけではありません。
やがて世間話だけをして帰るようになります。しかし、僕にとってこれが大きな障害であることには違いありませんでした。
こんなことが繰り返されていた謹慎1週間目くらいのこと。
僕は、母の目を盗んで、ようやくジェミーに電話をつなぐことに成功しました。
「おい。ジェミーか。僕だ」。
「あーーー。先輩。電話して大丈夫なんですかぁ?」
「うん。今だけな。お前も止められてるのか?電話」。
「はいーーー。なにしろ先輩のお母様、おっかないんでー。僕も遠慮してましたー」。
「うん。それでな。和美と連絡とれるかな」。
「和美先輩ですか?んー。今日は、学校来てませんよ」。
え・・・・・・・。
「家のほうは、もう引っ越し始まってるみたいですけどー」。
いや・・・。まだだろ・・・・。3月6日って・・・・・。
「いずれにせよ学校来てません。和美先輩」。
僕はジェミーの電話を早々に切ると、大慌てで和美ちゃんの家のダイヤルを回しました。
ツー・ツー・ツー
通じない・・・・。電話機、もうはずされてるんだ・・・・・・。
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そして僕が自転車を用意した時のこと。
「お前。どこに行くつもりだい?」
「え?ちょっと・・・」。
「ダメだろ?謹慎中なんだから」。
「固い事言うなよ」。
「お前。あの子に会いに行くつもりだろうけど・・・」。
「え・・・」。
「だめよ。謹慎の間は」。
母とは思えぬ融通のきかなさでした。
僕はかまわず自転車を走らせようとしましたが、母は今回はゆずりませんでした。
荷台のフレームを固く掴むと、きっとした顔で首をふります。
「なんで・・・」。
「先様にも大切な時期なのよ。今はダメよ」。
「う・・・」。
そうか・・・。転校先の学校のことか?
「お前も今まで好き放題、親ないがしろにしてきたんだから。今回は言うことききなさい」。
僕は、母のあまりに毅然とした態度に、とうとう折れてしまいました。
まぁ、いいや。夜中に抜け出すまでだ・・・。
しかし母の言っていたことは、まんざら的外れではありませんでした。
日曜というのに、教頭先生と担任の教師が家を訪ねて来たのです。
停学と異なり、自宅謹慎は、連絡事項を持って、教師がほぼ毎日家庭訪問するのです。
それにしても教頭とはオーバーな・・。まぁ、担任の女教師は、車の免許を持っておりませんでしたから、誰かが乗せて来ざるをえないのですが。
母は、訪れた教師2人にお茶を出しながら
「謹慎はあまんじて受けますが、この子には反省文は書かせません。よろしいですね?」
そうです。謹慎中、停学中は、毎日反省文を書く決まりがあるのですが、これを母がつっぱねました。
教頭先生は、
「ええ。はい。それはけっこうです」。
意外なことにこれを快諾しました。
続けて
「それから、こちらでも出来る限りのことは致しましたので」。
母。
「はい。この子には謹慎を守らせます。お約束いたします」。
「じゃ。君、あと2週間ね。しっかりね」。
教頭先生たちは、そう言い残し、早々に立ち去りました。
僕は和美ちゃんに、訪ねることができない旨を伝えるために電話しました。
「そう・・・残念だわ・・・。渡したいものあったのに・・・」。
そして予想通り
「あたしから行っていい?」
「あ、ああ。もちろんだよ。場所覚えてる?」
しかし、この時も母が、横から受話器を抑え、きつく首をふりました。
どうして?
僕はその電話の答えを保留して受話器をおかざるをえませんでした。
「なんで?なにが気に入らないんだ。母ちゃん!」
「え。だめよ。謹慎中は他の生徒と会うことは禁止されてるのよ。昨日は突然だったから特別なの」。
「なに固いこと言ってんだ?母ちゃんらしくもない!」
「お前ねぇ。先様からすれば、お前は停学中の不良少年なのよ?わかる?」
「え、だって・・・・」。
「お前は正しいことをした、と思っていても、相手がそうとってくれるとは限らないでしょう」。
確かにその通りではあるのですが。
「まして娘さんを持った親御さん。普通の男の子だって近づけたくないものよ。薫ちゃんとこ見たでしょ?」
だって・・・。
そんなこと言ってたら・・・・。
引っ越しちゃうんだ・・・・。
「お前の気持ちもわかるけど。今はダメよ」。
「し、しんじらんねぇな!なに考えてんだ!」
僕は言い捨てると、部屋に閉じこもりました。
母の言うことはもっともと知りつつ。
そして夜中。12時近く、僕は居間の電気が消えていることを確認すると、窓からそっと部屋を抜け出しました。
うまくいった!
僕が自転車にまたがると・・・・。
なんとタイヤの空気がない!?
母ちゃんだ!
僕は呆然としました。バイク・・・は鍵がないからだめか・・・・。
しぶしぶ部屋にもどると、なんとそこに寝間着の母が立っていました。
「お前の行動なんて手にとるようにわかるわよ」。
「な、な、なんだってそこまでして!」
「言ったでしょ?あなたの軽卒な行動が先様には迷惑なのよ」。
「そ、そんなこと・・・」。
「まして夜中に男の子がたずねてきたりしたら。みどりちゃんだって大変なことになるわ」。
「かずみだよ!ばかっ!」
わかってる。わかってるのに・・・・。
翌日も家庭訪問。しかし、不思議なことに和美ちゃんからの電話はおろか、仲間からの電話もほとんどこなくなりました。
僕から電話をしようとすると、母が鬼のような顔で止めます。
まだコードレスなどない時代。電話は居間のひとつだけでした。
おかしい・・・。
2日目にもなれば、さすがにそう思います。
「母ちゃん。西条たちになにか言ったか?」
「あら。気づいたの?電話よこさないように頼んだわ」。
「な!なんだってそんな!」
「だってお前の仲間だもの。お前のこと、簡単に脱走させちゃうでしょ?」
「う・・・・」。
確かにその通りではあるのですが。
「油断もすきもないからねぇ。お前の仲間」。
「母ちゃん!」
「それで、お前のこと、みどりちゃんに会わせちゃうもんねぇ」。
え・・・。
「ついでにあのマヌケ駐在さんにも頼んでおいたから」。
え!駐在さんにまで!
「まったく警官のくせに、なにしでかすかわかったもんじゃないから」。
そこまで手回ししてるのか?
「お前、味方いっぱいいるんでたいへんだったわ。あははは」。
僕は母の万全な策に、あきれるのを通り越し、怒りさえ覚えていました。
それから毎日、担任が誰か車の運転できる先生と訪ねて来ましたが、一発かすった程度の暴力事件。
そんなに話題があるわけではありません。
やがて世間話だけをして帰るようになります。しかし、僕にとってこれが大きな障害であることには違いありませんでした。
こんなことが繰り返されていた謹慎1週間目くらいのこと。
僕は、母の目を盗んで、ようやくジェミーに電話をつなぐことに成功しました。
「おい。ジェミーか。僕だ」。
「あーーー。先輩。電話して大丈夫なんですかぁ?」
「うん。今だけな。お前も止められてるのか?電話」。
「はいーーー。なにしろ先輩のお母様、おっかないんでー。僕も遠慮してましたー」。
「うん。それでな。和美と連絡とれるかな」。
「和美先輩ですか?んー。今日は、学校来てませんよ」。
え・・・・・・・。
「家のほうは、もう引っ越し始まってるみたいですけどー」。
いや・・・。まだだろ・・・・。3月6日って・・・・・。
「いずれにせよ学校来てません。和美先輩」。
僕はジェミーの電話を早々に切ると、大慌てで和美ちゃんの家のダイヤルを回しました。
ツー・ツー・ツー
通じない・・・・。電話機、もうはずされてるんだ・・・・・・。
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- 9章-第62話 君のいた風景(7)
- 9章-第61話 君のいた風景(6)
- 緊急告知! 夕子ちゃん、募集!
ママチャリ君…どうなっちゃうんでしょう(/_;)でもタカさんのことだからきっと何か理由があるんですよね!それを信じて待ちます(>_<)
ついにフィナーレですね!!
結末楽しみです。
たかさんさすがですねぇ。
抜かりがない!
母上、今回は譲りませんね。
何かもっと、お考えがあるのかも。
タカさんスゲェ…
次話が待ち遠しいです。
とうとうフィナーレですね。
おタカさんのことだから、きっと何かあるのかな;;
楽しみですー
余裕の1
明日の為にもう寝ないと。。。
だから悔しいけどフィナーレは明日までガマンします。
おたかさん、母ならそうするのが正しいと思います。
でもきっと何か考えあっての事ですよね?
信じてるけど、ドキドキだぁっ!
神童たかさんがここまでするということは、ママチャリに良い結果をもたらすためにちがいない。
また泣かされるのかな?ハンカチ用意しとかなきゃ。おすわりして待ってます。
何か裏があると信じつつ、、、、
朝ぼくなので3話連続読み、いきます。
はぅぅ…おタカサン、手強い…
恐らくっていうか確実に何か裏があるんだろうけど…
理由が判らないままでいると…焦りますよね…
ホント焦れったい(>_<)
元神童を信じつつ、次いくぞーッッ
電話もダメ! 外出もダメ!
つらいトコですネ。ママチャリさん・・・。
今なんて普通の電話なんて、ほとんど使いませんよネ。
一人に一台携帯電話があって、今の高校生なんてほとんどがメール、メール。
昔の生活はちょっと不便だったけど、逆に考えるとすごく大事な時に、電話使っていたような気がします。
たかさぁぁぁぁぁぁん
厳厳厳厳