<シリアスモード入ります>
*****INOUE'S SIDE
僕と村山は、夕子といっしょに後部座席に乗った。
「なんで、助手席なワケ~~~~~~?」
小島は、いささか不満そうだった。
なにが不満なのかはわかんない。
わかんないけど、さっきからしゃべりっぱなしだ。
「ところでさ~~~」
僕たちは、ウワサが広まることを恐れるあまり、藤木のことを小島なつみには話さないでいたけど、結果として、それは失敗だった。
小島なつみは、美容室の娘だけあり、実によく藤木の事情を知っていたからだ。
「ゆいちゃんってさ~。足、悪いじゃない?」
「ああ」「うん」
それは今に始まった話じゃない。
小学校に入った時には、すでにそうだった。
そのために、藤木は、ずいぶんな扱いも受けた。
が、僕も村山も、それを止めたりはしなかった。
つまり、僕も村山も、まわりでさわいだ同級生たちと、なんにもちがわない。
その点で、理由はどうあれ、同級生になったとたんに手をさしのべたジュリー=笑福亭は、やはりたいしたものだ。
タカさんの『褒めて育てる』は、少なくともそこまでは、まちがっていなかった、と言える。
しかし、お父さんとお祖父さんが、絶縁状態にあるってことは、
やっぱり、僕たち中学生程度では、計り知れないことがあったんだ。
「その上でさ~。ゆいちゃんって、お父さんと似てないじゃない?」
「いや、藤木のお父さんって見たことないからな・・・・・」
「あーーー!そっか。似てないらしいのよ、これが。ぜんっぜん。蛙とオタマジャクシくらいに!」
「オタマジャクシは、蛙の子だと思うけど・・・」と、村山。
僕も「そうだそうだ」と思った。
「けど、お母さんに似てるってワケでもなくってー・・・・」
ところがこれが不幸なことに、と言うべきか。
昔、藤木のお父さんの出兵中、お母さんによくしてくれたハトコかなんかがいて、
「まーー、ゆいちゃんにとっちゃ叔父さん?叔父さんって言わないか。まーー、とにかく遠縁の親族がいてー」
「うん」
「この人が足が悪かったらしいのね?それで徴兵、免れたらしいんだけどー」
僕たちは、『戦争を知らない子供たち』だけれど、戦争は、僕らの生まれる十数年前の話だから、ちょくちょくこうした話が出て来る。
少なくとも親の世代は、第二次世界大戦まっただ中だ。
「藤木さんのお祖父さんは、そこを責めたらしいのよ~」
「そこって?」「どこ?」
「だから~~~~~。ゆいちゃんは、お父さんの子供じゃないんじゃないか?ってこと!」
「え・・・・・・?」「あ・・・・・・?」
小島なつみの話は、いかにも「美容院のウワサ話」っぽい話だったが、夕子もいるところで、この話題はキツかった。
いや、僕にとっても相当にキツい話だ。
まして藤木本人にとっては・・・・・?
「これがおんなじような足の悪さ?って言うか~。ソックリなんだって」
「それを・・・・責めた?」
「らしいわよ~~。元は占い師かなんかが言い出したこと真に受けて」
(↑冗談のようだが当時はよくあった)
「それで絶縁状態なんだって」
そうだったのか・・・・!
実は、もっともっと複雑な話だったんだ・・・・。
「お父さんだって、そんなこと言われてたらおもしろくないよね。信じないにしたって信じたにしたって」
「まぁ・・・・」「だろうね・・・・」
「ゆいちゃんもかわいそうだよね~。ただでさえ足悪いのにサ~」
むろん、そんなことを、藤木がジュリーとか智枝子に話すはずがない。
とするなら・・・・
家出というのは、もっと根の深い話で、
僕とジュリーが推理した「家にいる」は、大ハズレだった可能性が高い。
僕は、自分のあさはかさを思い知らされることになった。
いや、真実を知れば、おそらくジュリーも・・・・。
「それが武志のお父さんらしいよ?」
「え・・・・・・・つまり・・・?」
「お祖父さんから言わせれば、武志とゆいちゃんは兄妹ってことだね~」
「え・・・・・・」
僕たちは・・・・
実はとんでもないことに首をつっこんでる?
「運転手さん!急いで!」
「急ぐって・・・・どこへ?」
90日戦争?へ→
ラフマニノフの憂鬱 第77話へ→
▲目次へ
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*****INOUE'S SIDE
僕と村山は、夕子といっしょに後部座席に乗った。
「なんで、助手席なワケ~~~~~~?」
小島は、いささか不満そうだった。
なにが不満なのかはわかんない。
わかんないけど、さっきからしゃべりっぱなしだ。
「ところでさ~~~」
僕たちは、ウワサが広まることを恐れるあまり、藤木のことを小島なつみには話さないでいたけど、結果として、それは失敗だった。
小島なつみは、美容室の娘だけあり、実によく藤木の事情を知っていたからだ。
「ゆいちゃんってさ~。足、悪いじゃない?」
「ああ」「うん」
それは今に始まった話じゃない。
小学校に入った時には、すでにそうだった。
そのために、藤木は、ずいぶんな扱いも受けた。
が、僕も村山も、それを止めたりはしなかった。
つまり、僕も村山も、まわりでさわいだ同級生たちと、なんにもちがわない。
その点で、理由はどうあれ、同級生になったとたんに手をさしのべたジュリー=笑福亭は、やはりたいしたものだ。
タカさんの『褒めて育てる』は、少なくともそこまでは、まちがっていなかった、と言える。
しかし、お父さんとお祖父さんが、絶縁状態にあるってことは、
やっぱり、僕たち中学生程度では、計り知れないことがあったんだ。
「その上でさ~。ゆいちゃんって、お父さんと似てないじゃない?」
「いや、藤木のお父さんって見たことないからな・・・・・」
「あーーー!そっか。似てないらしいのよ、これが。ぜんっぜん。蛙とオタマジャクシくらいに!」
「オタマジャクシは、蛙の子だと思うけど・・・」と、村山。
僕も「そうだそうだ」と思った。
「けど、お母さんに似てるってワケでもなくってー・・・・」
ところがこれが不幸なことに、と言うべきか。
昔、藤木のお父さんの出兵中、お母さんによくしてくれたハトコかなんかがいて、
「まーー、ゆいちゃんにとっちゃ叔父さん?叔父さんって言わないか。まーー、とにかく遠縁の親族がいてー」
「うん」
「この人が足が悪かったらしいのね?それで徴兵、免れたらしいんだけどー」
僕たちは、『戦争を知らない子供たち』だけれど、戦争は、僕らの生まれる十数年前の話だから、ちょくちょくこうした話が出て来る。
少なくとも親の世代は、第二次世界大戦まっただ中だ。
「藤木さんのお祖父さんは、そこを責めたらしいのよ~」
「そこって?」「どこ?」
「だから~~~~~。ゆいちゃんは、お父さんの子供じゃないんじゃないか?ってこと!」
「え・・・・・・?」「あ・・・・・・?」
小島なつみの話は、いかにも「美容院のウワサ話」っぽい話だったが、夕子もいるところで、この話題はキツかった。
いや、僕にとっても相当にキツい話だ。
まして藤木本人にとっては・・・・・?
「これがおんなじような足の悪さ?って言うか~。ソックリなんだって」
「それを・・・・責めた?」
「らしいわよ~~。元は占い師かなんかが言い出したこと真に受けて」
(↑冗談のようだが当時はよくあった)
「それで絶縁状態なんだって」
そうだったのか・・・・!
実は、もっともっと複雑な話だったんだ・・・・。
「お父さんだって、そんなこと言われてたらおもしろくないよね。信じないにしたって信じたにしたって」
「まぁ・・・・」「だろうね・・・・」
「ゆいちゃんもかわいそうだよね~。ただでさえ足悪いのにサ~」
むろん、そんなことを、藤木がジュリーとか智枝子に話すはずがない。
とするなら・・・・
家出というのは、もっと根の深い話で、
僕とジュリーが推理した「家にいる」は、大ハズレだった可能性が高い。
僕は、自分のあさはかさを思い知らされることになった。
いや、真実を知れば、おそらくジュリーも・・・・。
「それが武志のお父さんらしいよ?」
「え・・・・・・・つまり・・・?」
「お祖父さんから言わせれば、武志とゆいちゃんは兄妹ってことだね~」
「え・・・・・・」
僕たちは・・・・
実はとんでもないことに首をつっこんでる?
「運転手さん!急いで!」
「急ぐって・・・・どこへ?」
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- 外伝『ラフマニノフの憂鬱』第76話
- 外伝『ラフマニノフの憂鬱』第75話
寝る前にちょっと更新されてました。
シリアスモードでの急展開・・・。
寝れなくなりそうです。(笑)
>Kashilaさん
一番載り認定。夜間割り増し
+100pt
たぶんこっからフィナーレまで、ほぼシリアスです。
シリアスモード…
ドキがムネムネ~♪(笑)
話が一気に進みましたね。
何がどうなってるんだか。
推理するには、二人(委員長&井上君)とも肝心な情報を持ってなかったって事ですね。
続きが楽しみ~。
「火のない所に煙りはたたぬ」という諺がありますが、状況証拠で煙りを立たせるこのような噂話は 地方都市では 致命的になりそうですね
今でも 地方でそのような噂がたてば 親子間 夫婦間の亀裂の原因になります
ただの結婚の反対なら 時間が解決してくれますが 藤木さんのお父さんとおじいさんの争いは お母さんの信用の問題だから おじいさんにすれば 噂が立った時点でアウトでしょうし お父さんは結局 男だから おじいさんを説得出来ないですよね~
噂話とは尾びれハヒレが付いて話が全然違う方向に展開したりするから実際おっかないですよね…
ジュリー笑福亭軍団 噂を払拭してほしぃ
疑惑というものは事実以上に
人と人の間に亀裂を作ったりしますよね・・・
くろわっさん、
こんな時間のアップは久々ですね。
お疲れ様ですm(_ _)m
シリアスモードの執筆はしんどいかも知れませんが
くろわっさんはいつも話の締め括り方が素敵なので
そこに辿り着くのを楽しみについて行きます!
13巻のラストも素敵でした♪(^∀^)
凄く面白いのに同時に泣けちゃう
この温かさがくろわっさんの文章の魅力の一つですね☆
これからの展開が気になります。
少々子供たちには難しい話しかな
遺伝であり不貞であり
続きを早めのupを希望します
頑張って下さい
濃い内容になってきましたね~
……これはいよいよ大変なことになってきたなぁ…!
濃いなー、これは…
難しい…けど続きが楽しみ!
色々大変な事になってきやしたね…
シリアス、ですね~
続きがきになりますね
かなりシリアスになってきましたね………
複雑な事情ですね~
う~ん、複雑ですね~・・・・
話が複雑になってきましたね。
難しいけど気になります。
うーん
真相が気になります!!
かなりのシリアスですね…
シリアスになってきましたね。
うーん、複雑。
コトは複雑ですね。
戦争の間のいきさつに占い師の言葉じゃ。
疑心暗鬼の状態なら本人たちの言葉より占いの結果を信じてしまいますよね。
情報の交差「店」、美容室の娘なつみちゃん ウザイけど意外にキーマンかも。
ただの家出じゃあないのか?
藤木さん家の家族構成は複雑そうですね。続きが気になります!
…えっ…とぉ…?
武…志…くんって、…誰のことだっけ…???
何か話が込み入って来て…オッラ、わかんねぇだあ~。
現代でも 占い師の話は信じる人は信じちゃうんでしょうが
で
どこに急ぐんでしょうか
こんなに複雑だったとは…
現在も占い師の言葉通りに…って家私は知ってます。
そうなってくるとなかなか中学生が解決は難しい気がします。
やり方によってはもっと深刻なことになりそうです。
あ、今日私誕生日です~
ん?武志くんと兄妹?
ああ、複雑な展開に・・・。続きが気になる~
最後の最後は、ハッピーエンドになってほしいな。
やまなつさん お誕生日
笑顔いっぱいの一年になりますように
ゆいちゃんは思っていた以上に複雑な事情におかれていたんですね。井上くん、ママチャリくんの力で皆が笑顔になれるようなハッピーエンドを迎えられるといいな…
深い・・・
> 秘密のKさん
武志くんはジュリー&和美ちゃんが
合流しようとしている2組の男子で
未だ名前しか登場していません。
ゆいちゃんの親戚を知ってるからと
ホモリヤくんが紹介しました。
ジュリーとは水と油のような男の子らしいです。
(詳しくは54話~61話をお読み返し下さい)
> やまなつちゃん
お誕生日おめでとう!!
\(^▽^)/
あぁ…苦手な展開…←男女関係云々は吐き気が。。。
小島さんは振り回すだけのキャラでなかったんだ。さあ物語はどこサイドに?楽しみです。おおまかに母チーム、ママチャリチーム、小島井上チームは合流するのかな?
>やまなつさん
誕生日おめでとう~
藤木さんがシリアスモードの口火を切るとは(汗
そうかそうか…そうなのか~…
運転手さん、急いで~~
なんか今までで
一番シリアスかも
先が気にな~る(>_<)
なんか、ややこしくなってきたね・・・・
>やまなつさん
誕生日おめでとう!!
ゆうこちゃん一言も話してねぇ~
でもゆうこちゃんかわゆ~い♪♪
ち、超シリアスですね!
えーっ気になるっ!!
早く明日にならないかな…(>_<)
いきなり急展開!ですね
複雑…
どうなるのか気になります…
これはまた複雑な事に首を突っ込みましたね(^_^;)
ママチャリはどう動くのかな(^^)
久しぶりのシリアスモード、ワクワクしますね~^^
気になる!!
ここからどうなるのか・・・・・・・
続きがきになります!
どうなってしまうのかな...
久しぶりにシリアス!
何だか、長い一日ですねo(^▽^)o
まさかの展開にびっくり
続きが気になる~~!!
このコメントは管理人のみ閲覧できます
やっぱり「重たい話」に、なっちゃうんですね。
メンツ的に「ばか」が少ないので
なつみちゃんに期待してるんですが、、、
友人から『絶対にハマるから』と言われて、1・2巻を貰って読んでから大ファンになりました!!夏休みの読書感想文用に当時中学生の息子に読ませたら、息子もハマっています。
本屋で働いているので、新刊チェックは忘れずに必ず買っています。
『よくこんなイタズラ、思いつくなぁ~』と思いながら楽しく読ませて頂いています。
これからも、楽しめる作品(実話?)をお願いします。
だんだん深刻になってきましたね・・・
同級生に異母兄弟・・・