「ところがその当日にさぁ。千葉が来たんだ」。
「千葉くんが?」
「今日から俺も自転車乗れないことにしたって。あはは」。
「あはは。千葉くんらしいねー」。
「結局ね。明里ちゃんのとこは車で送ってったから。それに乗っけてもらったんだけどさ。千葉も」。
「その日はさ。千葉と3人で歩行者やった。千葉はその頃から人気ものだったからさー。明里ちゃんも救われたんだ」。
「ふーん・・・」。
「でも、おかげでその後メスシリンダーごっことか流行っちゃってね」。
「メスシリンダーごっこ?どういう遊び?」
「どういう遊びって・・・。とても口に出せない遊び」。
「知りたい~」。
「千葉だぞ?」。
「あ。。知らなくていいかも・・・」。
→ → → → → → → → → → → → → → → → → → → →
この交通公園の一件があって、そしてそれからしばらくたった日のこと。
明里ちゃんが僕に唐突に言いました。
「ねー。自転車、教えてくれない?」
「え。いいけど。だいじょぶなの?」
「大丈夫。ちょっとくらいは」。
「そっか」。
「自転車、むずかしい?」
「うーん。そうだなぁ。初めて乗れるようになるまで普通1週間くらいかかるけど・・・」。
「1週間も?」
「普通ね。でも僕は1日で覚えた」。
「すっごーい!」
「それがねぇ。母ちゃんが考えた忍法自転車乗れるの術ってのがあってさー」。
今思えばどこが忍法なのかわかりませんが。
「えー。どういうの?どういうの?」
「待っててね。従兄弟の純ちゃんとこから自転車借りて来る」。
さて。ここから突然、神童タカさん流自転車即興講座。自転車乗れない子の親御さんは、よーく覚えてくださいね。
ほんとすぐ乗れますから。
普通、自転車は、後ろを押さえて乗りかたを教えますが、横着だった母ちゃんは、そうはしませんでした。
まず椅子は低くして両足べったりつくとこまで下ろします。
そこにいきなりまたがらせます。足がつくので、どんな子でも安心してまたぎます。
「これでいい?」
明里ちゃんがたずねます。
「そうそう。乗れる気分出るだろ?」
「うん。でるでるー」。
「そうしたらねぇ。足、はなすの。ほんとちょこっとだけ。あんまり長く離すと、転んじゃうからね」。
「ちょっとでいいの?」
「そう。ちょっとでいいの」。
「離せたわ」。
「それ何回か繰り返して」。
「うん」。
これを何回か繰り返していると、やがてわずかながら長く足を離すことができるようになります。
「あ。0.5秒くらいは離せるようになったねー」。
「こんなんで乗れるの?」
「乗れるわけないだろ」。
「あははー。やっぱりー」。
「そしたらね。両足けって、少しずつ自転車前に押すの」。
「こう?」
50cmほど進みました。
「そうそう。上手上手」。
「あとは?」
「後はねー。それ繰り返すだけ」。
「えええええ?」
「それ繰り返してるうち、だんだん距離伸びて、いつの間にか乗れるから」。
「ほんと?」
「うん。ハンドルだけしっかり前向けてね。それからブレーキ。これ引くと自転車止まるから」。
「うん」。
「怖いようならすぐ引くといいよ」。
「やってみる!」
明里ちゃんは、初めて体験する「歩くよりも速い速度」に、夢中になりました。
そして50cmが1m。1mが2mとなっていき、
やがて夕陽が沈む頃。明里ちゃんは、足蹴りで3mほども進めるようになりました。
そしてそしてついに
「あーーーー。乗れたー!」
とうとう自転車に乗れたのです。
自分でペダルを漕げるところまでいきました。
「やった!乗れたよ?」
「うん。よかったねー」。
「うれしー!あたしおっきくなったらねー」
「うん」。
「けっこんしてあげるね!」
「バーカ。それだけはやだよーだ」。
「あ!せっかくケッコンしてやるって言ってんのにぃ!」
「おっことわりぃぃぃぃ!」
そしてさらに次の日。
僕はまた従兄弟の純ちゃんから自転車を借りて来て、明里ちゃんに貸しました。
いくら自転車に乗れるようになったからと言って、買ってもらえるわけがないからです。
明里ちゃんも、自転車に乗れたことは、両親には秘密にしていたようでした。
本当は、どんなに話したかったことか・・・。
「よーし!今日はあっちの端っこまで乗ってみせるぞー」。
意気揚々と明里ちゃん。
「うん。もう乗れるかもねー」。
「うん!がんばる!」
明里ちゃんの長い髪が、風をうけてなびきます。
彼女にすれば初めての体験。
彼女のうれしそうな笑顔。笑顔。
30分ほども自転車遊びに熱中して
「あかりちゃんー。そろそろー」
「んーー。もうちょっとだけー」。
すっかり癖になっています。
まぁ、でも自分が自転車に乗れるようになった時のことを思えば、無理もないことでした。
が、
ガチャン
明里ちゃんが転んでしまいました。
「あーあ。バッカだなぁ。はしゃぎすぎだよー」。
転んだ明里ちゃんのところに駆け寄る僕。
しかし。明里ちゃんが起き上がりません。
それどころか激しく咳き込んでいます。
「あれ?明里ちゃん?だいじょぶ?」
転んだまま動けない明里ちゃん。
とても苦しそうです。
え?え?え?
僕は気が動転しました。どうしていいかわかりません。
「明里ちゃん!だいじょぶ!?」
もはや明里ちゃんにそれに答える力はありませんでした。
「誰かーーーーー!誰か来てくださいーーーーーーー!」
近くを通りかかった人が、大慌てでこっちに来てくれました。
「どうしたんだ!?」
「あ・・・。わ、わかんない・・・僕・・・わかりません・・・」。



人気ブログランキングプチ予告ついてます(予告が変わっていない場合は1時間後再度ごらんください)
2話連続です。9章-第40話へどうぞ→
mixiに「ぼくちゅうコミュ」ついに700名突破!。mixiやってる方、ぜひどうぞ!
招待状のほしいかたはトップページから。
「千葉くんが?」
「今日から俺も自転車乗れないことにしたって。あはは」。
「あはは。千葉くんらしいねー」。
「結局ね。明里ちゃんのとこは車で送ってったから。それに乗っけてもらったんだけどさ。千葉も」。
「その日はさ。千葉と3人で歩行者やった。千葉はその頃から人気ものだったからさー。明里ちゃんも救われたんだ」。
「ふーん・・・」。
「でも、おかげでその後メスシリンダーごっことか流行っちゃってね」。
「メスシリンダーごっこ?どういう遊び?」
「どういう遊びって・・・。とても口に出せない遊び」。
「知りたい~」。
「千葉だぞ?」。
「あ。。知らなくていいかも・・・」。
→ → → → → → → → → → → → → → → → → → → →
この交通公園の一件があって、そしてそれからしばらくたった日のこと。
明里ちゃんが僕に唐突に言いました。
「ねー。自転車、教えてくれない?」
「え。いいけど。だいじょぶなの?」
「大丈夫。ちょっとくらいは」。
「そっか」。
「自転車、むずかしい?」
「うーん。そうだなぁ。初めて乗れるようになるまで普通1週間くらいかかるけど・・・」。
「1週間も?」
「普通ね。でも僕は1日で覚えた」。
「すっごーい!」
「それがねぇ。母ちゃんが考えた忍法自転車乗れるの術ってのがあってさー」。
今思えばどこが忍法なのかわかりませんが。
「えー。どういうの?どういうの?」
「待っててね。従兄弟の純ちゃんとこから自転車借りて来る」。
さて。ここから突然、神童タカさん流自転車即興講座。自転車乗れない子の親御さんは、よーく覚えてくださいね。
ほんとすぐ乗れますから。
普通、自転車は、後ろを押さえて乗りかたを教えますが、横着だった母ちゃんは、そうはしませんでした。
まず椅子は低くして両足べったりつくとこまで下ろします。
そこにいきなりまたがらせます。足がつくので、どんな子でも安心してまたぎます。
「これでいい?」
明里ちゃんがたずねます。
「そうそう。乗れる気分出るだろ?」
「うん。でるでるー」。
「そうしたらねぇ。足、はなすの。ほんとちょこっとだけ。あんまり長く離すと、転んじゃうからね」。
「ちょっとでいいの?」
「そう。ちょっとでいいの」。
「離せたわ」。
「それ何回か繰り返して」。
「うん」。
これを何回か繰り返していると、やがてわずかながら長く足を離すことができるようになります。
「あ。0.5秒くらいは離せるようになったねー」。
「こんなんで乗れるの?」
「乗れるわけないだろ」。
「あははー。やっぱりー」。
「そしたらね。両足けって、少しずつ自転車前に押すの」。
「こう?」
50cmほど進みました。
「そうそう。上手上手」。
「あとは?」
「後はねー。それ繰り返すだけ」。
「えええええ?」
「それ繰り返してるうち、だんだん距離伸びて、いつの間にか乗れるから」。
「ほんと?」
「うん。ハンドルだけしっかり前向けてね。それからブレーキ。これ引くと自転車止まるから」。
「うん」。
「怖いようならすぐ引くといいよ」。
「やってみる!」
明里ちゃんは、初めて体験する「歩くよりも速い速度」に、夢中になりました。
そして50cmが1m。1mが2mとなっていき、
やがて夕陽が沈む頃。明里ちゃんは、足蹴りで3mほども進めるようになりました。
そしてそしてついに
「あーーーー。乗れたー!」
とうとう自転車に乗れたのです。
自分でペダルを漕げるところまでいきました。
「やった!乗れたよ?」
「うん。よかったねー」。
「うれしー!あたしおっきくなったらねー」
「うん」。
「けっこんしてあげるね!」
「バーカ。それだけはやだよーだ」。
「あ!せっかくケッコンしてやるって言ってんのにぃ!」
「おっことわりぃぃぃぃ!」
そしてさらに次の日。
僕はまた従兄弟の純ちゃんから自転車を借りて来て、明里ちゃんに貸しました。
いくら自転車に乗れるようになったからと言って、買ってもらえるわけがないからです。
明里ちゃんも、自転車に乗れたことは、両親には秘密にしていたようでした。
本当は、どんなに話したかったことか・・・。
「よーし!今日はあっちの端っこまで乗ってみせるぞー」。
意気揚々と明里ちゃん。
「うん。もう乗れるかもねー」。
「うん!がんばる!」
明里ちゃんの長い髪が、風をうけてなびきます。
彼女にすれば初めての体験。
彼女のうれしそうな笑顔。笑顔。
30分ほども自転車遊びに熱中して
「あかりちゃんー。そろそろー」
「んーー。もうちょっとだけー」。
すっかり癖になっています。
まぁ、でも自分が自転車に乗れるようになった時のことを思えば、無理もないことでした。
が、
ガチャン
明里ちゃんが転んでしまいました。
「あーあ。バッカだなぁ。はしゃぎすぎだよー」。
転んだ明里ちゃんのところに駆け寄る僕。
しかし。明里ちゃんが起き上がりません。
それどころか激しく咳き込んでいます。
「あれ?明里ちゃん?だいじょぶ?」
転んだまま動けない明里ちゃん。
とても苦しそうです。
え?え?え?
僕は気が動転しました。どうしていいかわかりません。
「明里ちゃん!だいじょぶ!?」
もはや明里ちゃんにそれに答える力はありませんでした。
「誰かーーーーー!誰か来てくださいーーーーーーー!」
近くを通りかかった人が、大慌てでこっちに来てくれました。
「どうしたんだ!?」
「あ・・・。わ、わかんない・・・僕・・・わかりません・・・」。



人気ブログランキングプチ予告ついてます(予告が変わっていない場合は1時間後再度ごらんください)
2話連続です。9章-第40話へどうぞ→
mixiに「ぼくちゅうコミュ」ついに700名突破!。mixiやってる方、ぜひどうぞ!
招待状のほしいかたはトップページから。
- 関連記事
-
- 9章-第40話 サナトリウム(6)
- 9章-第39話 サナトリウム(5)
- 9章-第38話 サナトリウム(4)
え?;;
どうなるの・・・
それにしても、タカさん直伝の自転車の乗り方って・・・
目からウロコかもね@@
あぁ、なんかセカチューみたいな展開。
泣いちゃいそう。
明里ちゃん、大丈夫???
幸せなシーンから一転・・・。
どきどき
もちろん、続き読みたいですっ!
>忍法自転車乗れるの術
すごいっ僕は乗るのに1週間以上かかった側なので・・・こんな良い方法があったんですねww
メスシリンダーごっこwwwいかにも危なげな遊びですねww
毎日見てますよ
そして毎日クリックしてます(笑)
僕も自転車にはじめて乗れた日は嬉しくて走り回ってましたよ~
先が気になりますね
>もにょちゃん一番載り認定っ!
>それにしても、タカさん直伝の自転車の乗り方って・・・
目からウロコかもね@@
もにょちゃんも、将来お子さんができるまで覚えていて、教えてあげてください。
その自転車の乗り方、うちの子にも同じように教えましたよぉー!なんか感激w
3日もしないうちに、コロなし乗れました。
どの程度で止めておけばいいか・・・の度合いはわからないものですよね・・・。
楽しかったからついついやっちゃった・・・と。
明里ちゃん、大丈夫かな。
>みゃあさん
>あぁ、なんかセカチューみたいな展開。
>泣いちゃいそう。
ごめん。セカチュー内容知らない・・・。
ぼくちゅー、は知ってるんだけど(笑)。
>モアナさん
>メスシリンダーごっこwwwいかにも危なげな遊びですねww
すっげー危険な遊びですが、モアナさんはできません。
こんな方法があったんですか!でも忍法ってww
自転車でも自動車でも何でも乗れるようになると運転したくて堪らなくなるのは同じですね☆
ほのぼの→一転してシリアスに?!続きが気になりま~す!
>セキさん
>僕も自転車にはじめて乗れた日は嬉しくて走り回ってましたよ~
そうですよねぇ。乗りますよね。
乗るなっていうほうが無理ってもんです。
わお~(*ノノ)
せっかく「ちゃん」づけして頂いて・・・大変嬉しいのですが・・・^^;
将来、孫が出来たら教えてあげたいと思います。。。
(* ̄  ̄)b
…え?
明里ちゃん大丈夫なのっ?!;
せっかく楽しそうに乗れてたのに、こんな展開って。゚(うωと)゚。
あわわわ…;;
忍法自転車乗れるの術を知ってたら、傷だらけにならずにすんだんだろうなぁ(笑)
さっすがタカさん!
自転車、早速息子に試してみます♪
明里ちゃん、友達にできることが自分に出来なくて、すごく悔しかったんだろうなぁ。
ずっと乗りたかった自転車に乗れたのが、本当に嬉しかったんだろうなぁ。
そして嬉しすぎて、夢中になっちゃったんですね…
ちっちゃいママチャリくん、びっくりしたでしょうね。
チビママチャリも予想しない意外な展開に…ドキドキ。
昨日といい、今日といい、チビ千葉君のさりげない優しさが光りますね~。押しつけがましくない、場の空気を読んだ優しさ…小学生とは思えないなぁ。
自転車に乗れた時って、バイクや車に乗れた時にはない妙な気持ちになりましたね。
何でもできるような、何処へでも行けるような…。
だから事故になるんだな…きっと。
「誰かーーーーー!誰か来てくださいーーーーーーー!」小学校5年生でよく機転が効きました、、さすがママチャリですね。
自分ならおろおろするばかりであったかもです。
和美ちゃんといい雰囲気ですね~
有り難うございました。
本日調子に乗って2度目の登校
そうそう、タカさん方式に基づいてるかどうかわかりませんが、当地にはペダルのついていない自転車のような木製の乗り物が市販されています。足で蹴って進むしかないです(笑)
それで鍛えられるのでこっちの人たちは自転車でどこまででもいけるのか・・・(爆)
あかりちゃん、大丈夫なのか・・・!?
ママチャリ、しっかりしろ!
たしか自転車の先祖がそんな乗り方だったような。
自転車の初乗りと言えば、幼稚園のとき、初めて買ってもらったコマ付き自転車。
自転車屋さんから100mほど離れた自宅まで乗って帰る途中で思いっきりこけたのが昨日のように思い出されます。
コマ付きなのに、、、、。
思えば、あのころから運動能力は極めてなかったなぁ。
娘が補助輪なしの自転車に乗りたがったので、チャンス! って思ってやりました。
自転車の後ろを持ちながら一緒に走って、何度も何度も・・・。
そして先にダウンしたのは私でした。(^^ゞ
結局、今でも補助輪付けてのってます。
春になったらこの方法、試してみたいと思います。
なんたって私が楽できるんだもんw
うちの子供たち、自転車の練習はその乗り方でした。5歳の長男は3日。二つ下の長女は2日でクリア。
またいだまま、ずるずる歩いているうちにヒョイッと足がペダルに乗る。
片足をこぐ。
次をこぐ。
子供の運動能力に感心したものです。
自転車の乗り方、私も似た方法で子供に教えました。
ペダル取ってサドル下げて、足で蹴って進ませたり、勢い付けて押し出してやって、行けるとこまで足着かずに行かせてみたり。
バランスが取れるようになった頃にペダル付けてやったらいきなり乗れて、私の方が驚きました。
ミニチャリクン、おタカさん直伝の、(忍法まであみ出しちゃうなんて、サ・ス・ガ)方法で、明里ちゃんに自転車乗る方法、教えてあげたんだぁ。
す~~~~っごく嬉しかったと、思うよ明里ちゃん、でも嬉し過ぎてつい無理を、しちゃったんだよネ。
無理が出来ない身体って事は、十分明里ちゃんも解っていたはずなのにぃ・・・。
そんな時に起こってしまうんですネ。悲劇って・・・???
自転車の乗り方大変参考になりました。子供がいま自転車の練習中でサドルをもって支えたりしたらいやがるもので悩んでいたところ、この方法がわかりこれからやってみようと思います。
うちもこの方法です。
同じく親が横着ですから…
初めて自転車に乗れた時の
いくらでも乗っていたいと思う嬉しい気持ち良く分かります。
しかし、目の前で明里ちゃんが返事も出来ない位苦しい発作に
襲われているのを見た時のママチャリくんの驚きは
想像するに余りあります。
我が子3人ともこの方法で、乗れるようになりました✨
1番下の子は5時間でマスターしました!
我が子3人ともこの方法で、乗れるようになりました✨
1番下の子は5時間でマスターしました!