ぼくたちと駐在さんの700日戦争

＊＊＊＊＊BOYS SIDE

守屋だぜ！
忘れちゃいやだぜ！

和美のヤツが電話をよこした。
今日は、ヤケに女からの電話が多い。
モテるってのはつらいゼ～。

すぐ来てくれ、ってよ。
お呼び出しだ。

用件はわかってた。
藤木のことだ。

”今、委員長もいっしょだから・・・・”

おおかた、藤木の行方がわからず、途方にくれてんだろう。
だから言ったこっちゃない。

俺か？俺は、まぁ。人脈フルに使ったからな。
もう、だいたいの察しはついてた。
所詮、K小の猿とはココがちがうってもんだ、ココがな。

あ・・・ココってのは下半身じゃなく・・・
頭さしてんだからな？

で。ヤツらの、特に山猿の吠え面見ようと、わざわざ出て来た。
和美の「やっぱり守屋くんはちがうわ♥」ってー、ひとことを聞きに、な。

・・・・ってのに、だ。

「守屋くん、ゆいちゃんのこと、誰々にしゃべった!?」

会ったとたんにスゴい剣幕の和美。

「だ・・・誰って、麻生と・・・雄太と武志と・・・それから秀一・・・あと麻衣子と奈央子と・・・」

「そんなにしゃべっちゃったの!?」

「あ？当たり前だろ!?　こういう時は情報収拾だろが！」

和美は、アチャ～って雰囲気で、頭に手をやった。

山猿は、少し困った顔で、袋から取り出した干し柿なんぞ喰ってる。
やっぱり猿は猿だ。

「まはまは、かふみひゃん、ひかたないほ」

「アンタも！喰い終わってからしゃべんなさいよ！」

ところがそこへ、

「君たち君たち」

「はひ？」

若いあんちゃんが声をかけて来た。
この人知ってる。
最近、このへんの新聞配達になった人だ。

「ジュリー・・・・って子は？」

「ぼふでふ」

「ぼふ？」

「だから喰ってからしゃべんなさいよ！」

「はひ・・・」

なんだ、この山猿と和美の「アウン」の息は。
夫婦かっての。

新聞屋のアンちゃん、
このへんの道でもたずねるのかと思ったら、
なんと。山猿に用件。

「ホントにジュリーって言うんだね・・・・。おどろいた」

「いえいえ。みんなそう呼びます♪」

ウソつけ！

「なんで、ジュリー？」

「たぶん、外見からだと思うんですけど・・・」

テメーが勝手に名乗ってんだろがよ！

けど、もっとビックリだったのは、この後だ。

「ちょっと聞きたいことあるんだけど、いいかな？」

「あ。芸能界デビューは、まだ考えていません」

「そうじゃなくってね・・・？」

大人もこの山猿は苦手なようだ。

次に、新聞配達は、半ばバカにしたようにこう聞いたんだ。

「君、許嫁いるってホント？」

はあ？
山猿に許嫁？

「ええ」

こいつはビックリ！
オラウータンとかか？

けど、わかったことは、
俺は智枝子のことで、コイツに嫉妬したのは、とんだ筋違いもいいとこだった、ってことだ。

なんだぁ。コイツ、いいヤツじゃん♪

「ほほぉ・・・・で。君の許嫁が誘拐されたって話は知ってる？」

「ええ」

「ふうん。よく平然としていられるねー」
また半ばバカにしたように聞いたが。

山猿は、もっと驚きの答えを返した。

「だって、ここにいますから」

「あ？」「え？」「は？」

「君の・・・・許嫁が？」

「だからこの子です」

「！」「！」「！」

そいつは和美だろうがよ・・・・！
なに手ェなんか握ってんだよ・・・・！


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