<おことわり>
決戦3話め。修羅場ですので笑えるところはありません。メンゴ。
本日内の2話連続アップです。
背後からかけよって来る野尻たち。
「焦ってる焦ってる」。
「ほんとだ。お前、よくわかるなー」。
「だって、この人数だもん。誰にちくられてもまずいわけだし。全員揃ってるのは今しかないだろ?」
そう。彼らは今来るしかないのです。
そして野尻たちが追いつきました。
決戦3話め。修羅場ですので笑えるところはありません。メンゴ。
本日内の2話連続アップです。
背後からかけよって来る野尻たち。
「焦ってる焦ってる」。
「ほんとだ。お前、よくわかるなー」。
「だって、この人数だもん。誰にちくられてもまずいわけだし。全員揃ってるのは今しかないだろ?」
そう。彼らは今来るしかないのです。
そして野尻たちが追いつきました。
「お前ら!待てって!」
「はい。なんですか?先輩」
「お前ら・・・。その・・・1年坊のこと会社にチクりに来たのか?」
予想通りの質問。
まぁ、他の言い分は考えられませんが。
「やだなぁ、先輩ー。そんなことしませんよ」。
「そ、そうか。それなら・・・いいんだけどよ・・・」。
まだ疑心暗鬼の野尻たち。
「ただ、1年坊には詫びてほしいんですけどね。どなたか代表でいいんで」。
彼らは顔を見合わせましたが、どうやら言いたいことは察知したようで、
「わ、わかった」。
ここは承諾するしかないはずです。
「まぁ、よろしくなぁ。後輩」。
図に乗った野尻が僕の肩に手をかけようとしました。
すかさずこの手を握る西条くん。
「さ、西条!なにしやがる!?」
「え。握手だよ、握手。野尻先輩」。
確かに傍目には握手です。
しかし西条くんの握手は、相手の小指と親指をはずし、中の3本だけを握っていました。
「い、い、い、いってーーー!いててて!なにすんだコノヤロー!!」。
「知ってるか?親指と小指はな。意外に外からの圧力には強いんだがな。中3本はそうでもねーんだよ」。
「な!なにを!」
「小指と親指さえなきゃつぶせるってことだ。簡単になぁ」。
手に力を込める西条くん。
この「相手の握り返せない」握手を瞬間でできるのは西条くんだけ。
西条くんにとっては、これが1年坊の仕返しです。
「て、てめーら!やっぱお礼参りかぁ!?」
残りの2人が身構えますが
「いや、先輩。勤務先の敷地内で後輩殴っちゃまずいでしょ。明日から出勤する必要なくなっちゃいますから」。
自分の陣地が、戦いに有利とは限りません。
「15対3で勝てんのか?先輩よー。西条ひとりでも無理だったのによー」。
根本的に「先輩嫌い」な孝昭くんがすごみます。
「くっ!」
思いとどまる2人。
「ほら。工場長が微笑ましくこっち見てんぜ?」
「そうそう。いまんとこ、先輩と後輩の握手ですから」。
工場の2階の窓に、工場長さんの姿がありました。
「テメェら!そのために!た、ただですむと思ってんのか!」
とは言うものの、すでに西条くんにやられたことのある3人ですから、かなり萎縮した脅しです。
野尻が開き直りました。
「クビになったってどってことねぇんだぜ!俺らはよー!」
最後の強がりです。
でも、なにしろこういう輩ですから、この展開はすでに織り込み済みでした。
「でも、先輩。ここ辞めちゃうのは簡単ですが、履歴書には賞罰欄ってあるでしょ?」
「え?」
「あれはねー。徒競走で優勝したとかはどうでもいいんですよ。でもここ刑事罰で解雇になれば、書かなきゃいけないんですよ?」
「んなっ・・・・!」
「書かないと有印私文書偽造って言って、もっと罪重いんですよ」。
「・・・・・・・」
「最初の勤務先が1年以内で懲戒解雇なんて、次、どっか雇うと思いますか?」
「・・・・・・・」。
黙りこむ野尻たち。どんなに馬鹿でも、社会に出ていればそれくらいはわかります。
たぶん彼らも、自分たちがやったことの愚かさをいまさら思い知っていることでしょう。
学生時代とは、まるで環境が違うのです。
ここで追い打ち。
「先輩。お母さん、喜ばれてたでしょ?就職決まった時」。
「あ!?」
「確か、妹さんが高校3年、でしたね。1年違いで。もう就職先決まりましたか?」
「ええ?」
「兄が暴力沙汰で懲戒解雇となると、妹さんの就職にも影響あるかも」。
実際は逮捕でもされていなければ、そんなことはないわけですが、所詮は19歳。
この脅しは効きました。なにしろ自分ではどうもできないわけですから。
「な!なんだとっ!テメ!そ、そこまで!」
「ええ。調べましたよ。だって先輩方にやられた1年坊は、学校休んでんですよ?」
「く・・・・」。
「事を大きくしたら損するのは先輩方の方です」。
「だ、だから?」
「だから、せめて”わりぃ”くらいでもいいんで」。
「あ・・・ああ。だから、詫びるつってるだろ!?」
先輩としてのプライドは残してやらなくてはなりません。
逃げ道をなくすと、ヤケをおこしかねない人種だからです。
良くも悪くも、西条くんと孝昭くんのいるおかげで、先輩との抗争ごとは慣れっこの僕たちでした。
「あと、ひとつかふたつ、お願いあるんですけど」。
「な、なんだ!?言ってみろ!い、いてててててて!」
「いや、悪い話じゃないです。先輩達には儲かる話ですから」。
「儲け話?」
「ええ。先輩方もクビ賭けて危ない橋渡ってるんですから、ちっとは儲からないと合わないと思いませんか?」
「?????」
「それとも、それほど右京先輩に恩でもあるんですか?」
「し、知ってたのか!?」
これで確定です。まんまと誘導尋問にのってくれました。
もともと右京は学校有数のモテモテ男。女っ気のない野尻たちが快くつきあえる相手ではありません。
つまり、つながりは浅い。
「右京とは学年同じってだけだ。ただ、その・・・。西条には・・・俺らも恨みあったからよ」。
「わかります。でも、どうです?ここで和解して、儲け話、のりませんか?」
「ことと次第だ。いきなりは信じらんねぇな」。
ここで西条くん。
「いや。のってくれや。先輩。それとも今ここで指つぶして長期休暇とるか?」
「いっ!や、やめろ!わかった。わかったって!い、いてててて」
どんなに痛くても、殴り掛かるわけにはいきません。なにしろここは職場内。
「だからー。悪い話じゃありませんから。安心してくださいよ、先輩。手間くわせませんから」。
「そ、そうか」。
せいいっぱいの威厳を保とうとする野尻。
これですでに首根っこは押さえました。もはや逃げようはありません。
ようやく3本指握手を解放する西条くん。
野尻は、さかんに手を振っています。
「で?なんだ?儲け話ってのは」。
「3人で右京先輩と電話したことない人はいませんか?」
「あ?ああ。俺以外はあまり・・。八巻は一度もないかな・・・」。
「八巻先輩って・・・」。
「お、俺だ」。
背の高い、吹き出物の多い男でした。
なるほど。口ベタそうです。
「あ。じゃぁ八巻先輩。電話につきあってください」。
「はぁ?」
「それだけで儲かりますから」。
「ああ???」
「えっと。電話はー。どこにありましたっけ?」
「工場の玄関先に公衆電話がある」。
「じゃ、そこまでご一緒に・・・」。
僕はバリトンくんに合図をおくると、八巻だけをつれて、一緒に玄関先の電話のところへ行きました。
他のメンバーと引き離すのはセオリーです。
「バリトン。覚えた?」
「あ♪あ♪あー♪ ああ。大丈夫。おっけ!」
「????」。
バリトンくんは、弁解するときの突拍子もない高い声でもわかるように、非常に広い音域を持っていました。
彼は、声が低いというだけでなく、どういう人にでも声の高さを合わせて話すことができます。
バリトンからテノールまで自由自在。この万能なナレーションの能力で放送委員に選ばれているのです。
バリトンくんは、八巻のとなりで、右京の電話番号のダイヤルをまわしました。
「出た!」
目で合図を送ります。
そして・・・
「ああ。右京か?俺だ。八巻だ」。
「んなっ・・・・!」
慌てる八巻に、ぼくが「しっ」と黙るように諭します。
「ああ。うまくやった。西条なー、退学だってよ」。
「うん。それでなぁ。俺らもずいぶん痛い目みたんだ。なにせ相手西条だったからよー」。
「ああ。治療費とかかかっちまってな。お前だけ無傷はねーだろう?」
会話を聴きながら目を白黒させる八巻。
「ああ。今日だ。駅んとこで待ってるから」。
ガチャ。
「どうだった?バリトン」。
「ん。ひとり1万払うってさ」。
「よかったですねー。八巻先輩。1万円の大儲けです」。
「お、お前ら!右京、カツアゲしたのか!?」
「え!冗談でしょ。受け取るのは先輩方ですよ。無料奉仕じゃたまんないでしょ?クビまでかけて」。
「う・・・。し、しかし・・・・」。
「1万円ですよ?先輩月給いくらです?」
「い、1万・・・円か・・・」。
当時の高卒の初任給は6万円程度。1万円はけっして少額ではありません。
1日汗して働いても手に入らない金額です。パチンコならまる1日遊ぶことができました。
八巻が目の色を変えるのがわかりました。
なにしろこいつらにすれば、もともとたいして快く思っていなかった右京。これは絶対につられるはずでした。
「いやだったら受け取らなきゃいいだけのことですから。どってことないです」。
「な、なにが狙いなんだ。お前ら」。
「狙いなんてありません。身を守るだけです。右京先輩から」。
「かなりにらまれてるみたいだな。お前ら」。
「ええ。困ってんですよー。しつこくって」。
ここで敵は右京であって野尻たちではないことを表明しておきます。
これは彼らの敵対心を薄めるためです。敵対心がうすまると、不思議な連帯感が生まれます。
つまり抱き込み作戦。
「じゃ、終業までゲート前で待ってますから」。
→ → → → →
僕たちは野尻たちの終業時間を待っていました。
「よく野尻の親のことまでわかったなー?」
「え?ああ。テキトーだよ。あいつら不良だもん。就職決まれば親も涙流すさ」。
「あ。なーるほど」。
「家族構成、名簿に載ってたから。就職者は履歴書のうつしあったからね」。
「それで妹も」。
「うん。家族に影響は困るだろうからな。あんなやつらでも」。
「うーん。確かに」。
「それよりはこっからだ。気ぃひきしめろよ。みんな」。
「おお!」
西条くん。しばらく黙っていたかと思うと、
「なあ」。
「ん?」
「お前の脳みそって、9割悪事だろ」。
「えー!そりゃないだろ?西条」
「うん。西条、そいつはこいつに失礼だ」。
「孝昭はわかってくれてるんだな~」。
「うん、10割悪事だよな」。
「うん。10割だ」
「間違いない」。
「賛成」。
「以下同文」。
10割・・・悪事・・・?。
以下同文・・・?
本日2話連続アップです。続けて第34話へどうぞ→
「はい。なんですか?先輩」
「お前ら・・・。その・・・1年坊のこと会社にチクりに来たのか?」
予想通りの質問。
まぁ、他の言い分は考えられませんが。
「やだなぁ、先輩ー。そんなことしませんよ」。
「そ、そうか。それなら・・・いいんだけどよ・・・」。
まだ疑心暗鬼の野尻たち。
「ただ、1年坊には詫びてほしいんですけどね。どなたか代表でいいんで」。
彼らは顔を見合わせましたが、どうやら言いたいことは察知したようで、
「わ、わかった」。
ここは承諾するしかないはずです。
「まぁ、よろしくなぁ。後輩」。
図に乗った野尻が僕の肩に手をかけようとしました。
すかさずこの手を握る西条くん。
「さ、西条!なにしやがる!?」
「え。握手だよ、握手。野尻先輩」。
確かに傍目には握手です。
しかし西条くんの握手は、相手の小指と親指をはずし、中の3本だけを握っていました。
「い、い、い、いってーーー!いててて!なにすんだコノヤロー!!」。
「知ってるか?親指と小指はな。意外に外からの圧力には強いんだがな。中3本はそうでもねーんだよ」。
「な!なにを!」
「小指と親指さえなきゃつぶせるってことだ。簡単になぁ」。
手に力を込める西条くん。
この「相手の握り返せない」握手を瞬間でできるのは西条くんだけ。
西条くんにとっては、これが1年坊の仕返しです。
「て、てめーら!やっぱお礼参りかぁ!?」
残りの2人が身構えますが
「いや、先輩。勤務先の敷地内で後輩殴っちゃまずいでしょ。明日から出勤する必要なくなっちゃいますから」。
自分の陣地が、戦いに有利とは限りません。
「15対3で勝てんのか?先輩よー。西条ひとりでも無理だったのによー」。
根本的に「先輩嫌い」な孝昭くんがすごみます。
「くっ!」
思いとどまる2人。
「ほら。工場長が微笑ましくこっち見てんぜ?」
「そうそう。いまんとこ、先輩と後輩の握手ですから」。
工場の2階の窓に、工場長さんの姿がありました。
「テメェら!そのために!た、ただですむと思ってんのか!」
とは言うものの、すでに西条くんにやられたことのある3人ですから、かなり萎縮した脅しです。
野尻が開き直りました。
「クビになったってどってことねぇんだぜ!俺らはよー!」
最後の強がりです。
でも、なにしろこういう輩ですから、この展開はすでに織り込み済みでした。
「でも、先輩。ここ辞めちゃうのは簡単ですが、履歴書には賞罰欄ってあるでしょ?」
「え?」
「あれはねー。徒競走で優勝したとかはどうでもいいんですよ。でもここ刑事罰で解雇になれば、書かなきゃいけないんですよ?」
「んなっ・・・・!」
「書かないと有印私文書偽造って言って、もっと罪重いんですよ」。
「・・・・・・・」
「最初の勤務先が1年以内で懲戒解雇なんて、次、どっか雇うと思いますか?」
「・・・・・・・」。
黙りこむ野尻たち。どんなに馬鹿でも、社会に出ていればそれくらいはわかります。
たぶん彼らも、自分たちがやったことの愚かさをいまさら思い知っていることでしょう。
学生時代とは、まるで環境が違うのです。
ここで追い打ち。
「先輩。お母さん、喜ばれてたでしょ?就職決まった時」。
「あ!?」
「確か、妹さんが高校3年、でしたね。1年違いで。もう就職先決まりましたか?」
「ええ?」
「兄が暴力沙汰で懲戒解雇となると、妹さんの就職にも影響あるかも」。
実際は逮捕でもされていなければ、そんなことはないわけですが、所詮は19歳。
この脅しは効きました。なにしろ自分ではどうもできないわけですから。
「な!なんだとっ!テメ!そ、そこまで!」
「ええ。調べましたよ。だって先輩方にやられた1年坊は、学校休んでんですよ?」
「く・・・・」。
「事を大きくしたら損するのは先輩方の方です」。
「だ、だから?」
「だから、せめて”わりぃ”くらいでもいいんで」。
「あ・・・ああ。だから、詫びるつってるだろ!?」
先輩としてのプライドは残してやらなくてはなりません。
逃げ道をなくすと、ヤケをおこしかねない人種だからです。
良くも悪くも、西条くんと孝昭くんのいるおかげで、先輩との抗争ごとは慣れっこの僕たちでした。
「あと、ひとつかふたつ、お願いあるんですけど」。
「な、なんだ!?言ってみろ!い、いてててててて!」
「いや、悪い話じゃないです。先輩達には儲かる話ですから」。
「儲け話?」
「ええ。先輩方もクビ賭けて危ない橋渡ってるんですから、ちっとは儲からないと合わないと思いませんか?」
「?????」
「それとも、それほど右京先輩に恩でもあるんですか?」
「し、知ってたのか!?」
これで確定です。まんまと誘導尋問にのってくれました。
もともと右京は学校有数のモテモテ男。女っ気のない野尻たちが快くつきあえる相手ではありません。
つまり、つながりは浅い。
「右京とは学年同じってだけだ。ただ、その・・・。西条には・・・俺らも恨みあったからよ」。
「わかります。でも、どうです?ここで和解して、儲け話、のりませんか?」
「ことと次第だ。いきなりは信じらんねぇな」。
ここで西条くん。
「いや。のってくれや。先輩。それとも今ここで指つぶして長期休暇とるか?」
「いっ!や、やめろ!わかった。わかったって!い、いてててて」
どんなに痛くても、殴り掛かるわけにはいきません。なにしろここは職場内。
「だからー。悪い話じゃありませんから。安心してくださいよ、先輩。手間くわせませんから」。
「そ、そうか」。
せいいっぱいの威厳を保とうとする野尻。
これですでに首根っこは押さえました。もはや逃げようはありません。
ようやく3本指握手を解放する西条くん。
野尻は、さかんに手を振っています。
「で?なんだ?儲け話ってのは」。
「3人で右京先輩と電話したことない人はいませんか?」
「あ?ああ。俺以外はあまり・・。八巻は一度もないかな・・・」。
「八巻先輩って・・・」。
「お、俺だ」。
背の高い、吹き出物の多い男でした。
なるほど。口ベタそうです。
「あ。じゃぁ八巻先輩。電話につきあってください」。
「はぁ?」
「それだけで儲かりますから」。
「ああ???」
「えっと。電話はー。どこにありましたっけ?」
「工場の玄関先に公衆電話がある」。
「じゃ、そこまでご一緒に・・・」。
僕はバリトンくんに合図をおくると、八巻だけをつれて、一緒に玄関先の電話のところへ行きました。
他のメンバーと引き離すのはセオリーです。
「バリトン。覚えた?」
「あ♪あ♪あー♪ ああ。大丈夫。おっけ!」
「????」。
バリトンくんは、弁解するときの突拍子もない高い声でもわかるように、非常に広い音域を持っていました。
彼は、声が低いというだけでなく、どういう人にでも声の高さを合わせて話すことができます。
バリトンからテノールまで自由自在。この万能なナレーションの能力で放送委員に選ばれているのです。
バリトンくんは、八巻のとなりで、右京の電話番号のダイヤルをまわしました。
「出た!」
目で合図を送ります。
そして・・・
「ああ。右京か?俺だ。八巻だ」。
「んなっ・・・・!」
慌てる八巻に、ぼくが「しっ」と黙るように諭します。
「ああ。うまくやった。西条なー、退学だってよ」。
「うん。それでなぁ。俺らもずいぶん痛い目みたんだ。なにせ相手西条だったからよー」。
「ああ。治療費とかかかっちまってな。お前だけ無傷はねーだろう?」
会話を聴きながら目を白黒させる八巻。
「ああ。今日だ。駅んとこで待ってるから」。
ガチャ。
「どうだった?バリトン」。
「ん。ひとり1万払うってさ」。
「よかったですねー。八巻先輩。1万円の大儲けです」。
「お、お前ら!右京、カツアゲしたのか!?」
「え!冗談でしょ。受け取るのは先輩方ですよ。無料奉仕じゃたまんないでしょ?クビまでかけて」。
「う・・・。し、しかし・・・・」。
「1万円ですよ?先輩月給いくらです?」
「い、1万・・・円か・・・」。
当時の高卒の初任給は6万円程度。1万円はけっして少額ではありません。
1日汗して働いても手に入らない金額です。パチンコならまる1日遊ぶことができました。
八巻が目の色を変えるのがわかりました。
なにしろこいつらにすれば、もともとたいして快く思っていなかった右京。これは絶対につられるはずでした。
「いやだったら受け取らなきゃいいだけのことですから。どってことないです」。
「な、なにが狙いなんだ。お前ら」。
「狙いなんてありません。身を守るだけです。右京先輩から」。
「かなりにらまれてるみたいだな。お前ら」。
「ええ。困ってんですよー。しつこくって」。
ここで敵は右京であって野尻たちではないことを表明しておきます。
これは彼らの敵対心を薄めるためです。敵対心がうすまると、不思議な連帯感が生まれます。
つまり抱き込み作戦。
「じゃ、終業までゲート前で待ってますから」。
→ → → → →
僕たちは野尻たちの終業時間を待っていました。
「よく野尻の親のことまでわかったなー?」
「え?ああ。テキトーだよ。あいつら不良だもん。就職決まれば親も涙流すさ」。
「あ。なーるほど」。
「家族構成、名簿に載ってたから。就職者は履歴書のうつしあったからね」。
「それで妹も」。
「うん。家族に影響は困るだろうからな。あんなやつらでも」。
「うーん。確かに」。
「それよりはこっからだ。気ぃひきしめろよ。みんな」。
「おお!」
西条くん。しばらく黙っていたかと思うと、
「なあ」。
「ん?」
「お前の脳みそって、9割悪事だろ」。
「えー!そりゃないだろ?西条」
「うん。西条、そいつはこいつに失礼だ」。
「孝昭はわかってくれてるんだな~」。
「うん、10割悪事だよな」。
「うん。10割だ」
「間違いない」。
「賛成」。
「以下同文」。
10割・・・悪事・・・?。
以下同文・・・?
本日2話連続アップです。続けて第34話へどうぞ→
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- 9章-第34話 戦う理由
- 9章-第33話 VS右京(4)
- 9章-第32話 VS右京(3)
さすが!やりますね~。
軍師ですね。戦国時代なら大活躍かも知れませんね。(笑)
ところで話変わって2/15は自分の誕生日だす。
よければ、よろしくお願いしまあす。
有印私文書偽造とは、また悪辣な知識を持ち出しましたね~。こんなこと知ってる高校生を相手にしたらたまんないですね。
頭の中120%悪事でしょ。笑
さて、久しぶりの右京との対面やいかに!!
脳内10割りが悪事の高校生、近くにいたらイヤだなぁ(笑)
バリトンくんといい、千葉くんといい、便利な技もってますね。
次はいよいよ右京登場?
ひょっとして一番乗りですか??うれしいなっ。
皆様、土日ぐらいは一番乗りを許してね~。
では、では・・・・
>torayokoさん 一番載り
あ。コメントついた。よかった。
つかないって思ってました(笑)。
>軍師ですね。戦国時代なら大活躍かも知れませんね。(笑)
戦国時代なら女房に寝首かかれていたと思います。
容易に想像つきます。
>ところで話変わって2/15は自分の誕生日だす。
>よければ、よろしくお願いしまあす。
あいあい。誰でいきますか?
ママチャリ、こーわーいー。
味方につけたらすっごく素敵v
>ぷにょんくん
>有印私文書偽造とは、また悪辣な知識を持ち出しましたね~。こんなこと知ってる高校生を相手にしたらたまんないですね。
実際は千葉くんの方が法律、強いんですが、彼のおかげでつまらん知識、多かったですねー。自分たちがつかまらないために(笑)。
>レインビー画伯
>バリトンくんといい、千葉くんといい、便利な技もってますね。
そうですね。便利でした。
当時の電話のマイクは今のものより、ずいぶんと性能悪いので、簡単でした。
今の携帯以下でしょうね。音声については。
>あおさん
>ママチャリ、こーわーいー。
そこそこに恐れられていました(笑)。
やなやつだなー。ほんと。
西條君やっぱり強いですねww2コ上の先輩相手にも恐れられる存在とわ・・・恐るべし西條君・・・
みんなママチャリ君が100%悪事で出来てると思ってたのかww
頭の中が150%くらいは悪事で出来ていそうなんだけどな・・・
すごい・・・。
悪知恵が。
高校生がなぜそんなことを知っているのか笑
ママチャリ達と同年代に生きてて、敵に回ってなくて良かった。本当に良かった。
ただの悪ガキとは思っちゃいなかったけど、まさかここまでやれるとはww
さぁ、後は右京だ!
ママチャリ GO!
ざまーみろって感じの野尻たちですが、何かインテリ・ヤ○ザに絡まれてる風にも見えますね。
1万円でパチンコならまる1日遊ぶことができました。・・・今じゃ30分ですね。
今日も、有り難うございました。
>モアナさん
>西條君やっぱり強いですねww2コ上の先輩相手にも恐れられる存在とわ・・・恐るべし西條君・・・
西城くん。入学のときから無敵です。こういう急所をつくワザがとにかく得意なんです。
彼がいなければ、僕たちは成り立っていません。
ママチャリ、腹黒いだけじゃなかった!
120%に1票!
>豚cookさん おひさしぶり
>高校生がなぜそんなことを知っているのか笑
知ってました。実際に(笑)。
就職率50%以上の高校では、2年の時に履歴書のことも、もちろん履歴書詐称のことも厳重に教えられるんですよ。
>のりぞおさん
>ママチャリ達と同年代に生きてて、敵に回ってなくて良かった。本当に良かった。
>ただの悪ガキとは思っちゃいなかったけど、まさかここまでやれるとはww
まだまだです。これからが本番です。
>兵庫のわきやん
>ざまーみろって感じの野尻たちですが、何かインテリ・ヤ○ザに絡まれてる風にも見えますね。
そうですね。お気の毒です。
>みきままさん
>ママチャリ、腹黒いだけじゃなかった!
>120%に1票!
うぅ・・・。どんどん評価が下がって行く・・・。
予想はしていましたが。
緊張の初登校しちゃいます!!!
毎回ままちゃりってすんごく頭いいなぁ~って思います!!!
えっ!!10割!!・・・・・やっぱり・・・笑
ママチャリさんの頭脳スゴイです!!
策士ですね!!
これから、自分の手を汚さない卑怯な右京にどんな事がおこるんでしょうか。
ワクワクします(≧▽≦)
>はるなさん、初登校~
いらっさいませ~!
>毎回ままちゃりってすんごく頭いいなぁ~って思います!!!
グレート井上くんと、森田くんの方が上ですね。
悪事に関してだけです。ママチャリは・・・。
ママチャリ君すごい(笑)やっぱり10割悪事なんですね(*^皿^*)右京がどうなるか続き気になります~☆ばっちりやっつけちゃってください!!
>ともまんさん
>これから、自分の手を汚さない卑怯な右京にどんな事がおこるんでしょうか。
右京先輩は、じわーりじわーりと追い込まれていきます。
本当にお気の毒です。
>ぷりんちゃん
>ママチャリ君すごい(笑)やっぱり10割悪事なんですね(*^皿^*)右京がどうなるか続き気になります~☆ばっちりやっつけちゃってください!!
ばっちり、って言うか、じっくりです。
ここまではただの脅迫でしかありませんから。
右京に金を払わせ、野尻達には受け取らせる・・・。
ママチャリ、やっぱり最後は全員許す気ないですね・・w
>noboくん
座談会、推理合ってました?
>ママチャリ、やっぱり最後は全員許す気ないですね・・w
いえ。お金はそのためにあるんじゃないんですよー。
もちろん全員許しませんが
右京の懐をいためるつもりではありません。
どうして西条クンとバリトンクンなんだろー?
って昨日は思ってたんですが、西条クンは多分力でおさえる役目かな?
っとも想像できたんだけど、バリトンクンがこういう事だったんですね!スゴイ!
相変わらずのママチャリの策士ぶりはお見事ですね♪
西条クンが退学しちゃった事になって、今後どうなるのかが楽しみです。
3本指を自分でぎゅぅと握ってみました。確かに痛いです;;
又ひとつ、かしこくなりました♪
えっと、くろわっさん、どうもありがとうございましたm(._.*)m
はっきり言って凄すぎます…。
どんなにもがいても全てがママチャリの台本通りに進んでいくわけですね…。
途中からはどっちが年上なのかわからない感じですね。(笑)
ママチャリ恐ぇえええええ!!(゚∇゚;ノ)ノ
節分に 本性見たり ママチャリくん
オソマツ
>みおさん
>3本指を自分でぎゅぅと握ってみました。確かに痛いです;;
はい。親指と小指は横の圧力に比較的強いです。外に面してますからね。
でも、中3本はそういうつくりになってないんですよ。
(西条談)。
途中から西条クンがヒデキになっていますー♪
あれ?やっぱりそうですよね。
西城になってる・・・。
ものすんごい違和感だったけど、私が勘違いしてるんだとばかり。
何かの狙いですか(笑)?
>かいちゃさん
>どんなにもがいても全てがママチャリの台本通りに進んでいくわけですね…。
というか、いくつかの台本、あらかじめ用意するわけです。
1本だけじゃなくて。
こうなったら、こう出る
こうきたらこう出る
って具合ですね。そうしないと予定外のことに対処できません。
>テラsanさん!ごめん!
間違って削除しちゃいました!
すいませんが、また書いてもらえませんか?
いやぁ、ママチャリ君の悪知恵は、もはや子供の悪戯のレベルじゃないですね。
神童タカさんの息子はやっぱり神童・・・。
でもきっとタカさんはここまでの悪事はやんなかっただろうとは思うけど。
でもなぜだろう?一応、正義の制裁なんですよね?
なのに、悪事10割とか腹黒いとか、散々な言われようですねぇ。。。
転職するなら、CTU(テロ対策ユニット)で、ジャック・バウアー並みに活躍できることと思います。
>torayokoさん了解。
すいませんが、赤使うと、僕のコメ返しと区別つかなくなっちゃうんで、次回からは他の色使ってください。
よろしくです~。
>琴音ちゃん
>あれ?やっぱりそうですよね。
>西城になってる・・・。
そうなんです。昨日、コメントで『ガキでか』の西城くん登場させたの、PCが記憶しておりまして・・・。
すっかり忘れてました。直したんですが、モレたんですね。
>月澤さん
>いやぁ、ママチャリ君の悪知恵は、もはや子供の悪戯のレベルじゃないですね。
いや。違うんですよ。
続き読めばわかりますから。
もっと評価が悪化する可能性もありますが・・・。
さすがママチャリ^^さながら諸葛亮孔明みたいな計略ですな。ただ悪事だけどね^^
そうするとウチのイメージでは西条くんは関羽、孝昭くんは張雲てな感じ?
じゃ、劉備は?あれ?あれれ?
だれか適役plz^^
たとえ己の身を守るためとはいえこれ交渉と脅迫が紙一重・・・。
ただうまいとこついています。
時と場所上手くついてますからね。
時効だからこそ言える、痛快^^
>座談会、推理合ってました?
いえ、全然ハズレでしたorz
前フリに踊らされて本編よりもちょっと手の込みすぎたこと考えてました。
出直してきます。
>右京の懐をいためるつもりではありません。
いえ、そういう意味ではなくて金銭の授受によって
右京、野尻達双方にとって動かぬ証拠を作り上げようと
・・・っていう意味で「最後には許すつもりないですね」だったんですけど。
ママチャリたちの見てる前で授受が行われなければ
ママチャリたちは一切関知した証拠残さずにいられるわけですし。
(こーゆーのも推理になっちゃうのかな?外れてるっぽいからいいですよね?)
ところで全然気付かなかったんですけど、
西条君はいつから西城君に?
>ペンタイアさん
>たとえ己の身を守るためとはいえこれ交渉と脅迫が紙一重・・・。
弱い者が強い者から身を守る手段は、そんなに多くありません。
でも、これはちがうんです。次を読めばわかります。
>お!noboくん
>右京、野尻達双方にとって動かぬ証拠を作り上げようと
・・・っていう意味で「最後には許すつもりないですね」だったんですけど。
ちょっと惜しいとこついてますよ。
悪辣なやっちゃなー。
以下同文~(^^
西条君の9割悪事発言で120%までは読めたが、150%はいくら何でも言いすぎでしょう。
波動砲のエネルギー充填ですら120%までですよ。
12時頃、めちゃくちゃ眠かったのでタイマーをセットして仮眠。
タイマーが鳴って起きたのが1時23分。
更新は未だで朦朧としたまま寝直す。
1時20分に更新されてtorayako2006さんの1番載りコメントが1時37分。
めっちゃ悔しいので、揚げ足取りなツッコミを。
>「じゃ、就業までゲート前で待ってますから」。
就業まで?つまり朝まで?そんなあほな。
「終業まで」ですよね?
大体こんな事書いてましたがくろわっさんに消されました!
今度こそ寝てやる!!
>テラsan@ショック!! さん
だからぁ。あやまってんじゃん・・・。ねぇ。
そんな怒らなくっても。ねぇ・・・。
ちょっと一段、削除ボタン間違えただけですってば・・・。
終業ね・・・。はいはい・・・。終業、っと。
怒ってないですよ。
ネタが向こうから転がってきたって喜んでるくらいです。
>テラsan@ショック!! さんへ
すみませんねえ。自分もまさか一番乗りできるとは思わなかったすよ~。まあ、いつもと言うことはないので(ほぼ、土日、祝限定だから)勘弁してね~。
西条くん。「お前の脳みそって、9割悪事だろ」
って、失礼ですよねぇ。
でも、彼はきっと心のかなで、「良かった~。こいつが敵じゃなくて・・・」と思っていたことでしょう。
10割悪辣な頭脳のママチャリと無敵の西条。
どうしてこんなコンビが生まれてしまったのか・・・
お、鬼は~外~♪
(??)ノシ・゚・。
思わず豆投げちゃったじゃないですか。
何て悪辣…イヤイヤ…素敵にイカした頭脳をお持ちなんですか、ママチャリ殿。
ほんっと、敵に回したくないオヒトだwww
PS
テラSAN、お疲れ様www
>noboさん
そこは素直に訂正ってことで・・・。
>「すでに西城くんにやられた」の箇所で~す。
いやはや・・・。
抱き込みいいですねぇ。
ここまで頭が回ると、将来どんな大人に・・・あ、ここにいますね!(マテ
腹黒かぁ。うん。腹黒♪
二ヶ月前位から読んでいるんですけど、初登校です。よろしくお願いします(^-^)v ママチャリ恐るべしですね。 三国志時代に生きていたら、「臥龍、鳳雛、ママチャリのいずれかを手に入れれば天下が取れる。」と言われたかもしれないですね。
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バリトン君の声の使い方。おそろしい!!!(他人に成りすます事だったんですネ)
テノールまで出ると、言ってましたが、ジェミーのボーイソプラノもOKだったのですかぁ?
ママチャリさんの頭脳は、(悪事以外も・・・)いついかなる時も、発揮してしまうんですネ。
一人はお友達に欲しいタイプですネェ!!!
ママチャリの脳みそは先祖代々から受け継がれてきた100%悪事の脳みそなんですよ
きっと
ひとり1万払うって、右京も陰湿ではあるけど馬鹿ではない感じですね。
そこが怖いです(>_<)
西条さん始めご友人の皆様
もっと素直にママチャリさんのことを褒めて差し上げて下さい(笑)