「やっぱりだ。お前の予想は当たってたよ」。
「うん。それで?」
「かなりやられたようだ。主にボディなんで顔に出てないけどな」。
「そいつらボクシング部とか言わなかったか?」
「ああ。間違いない」。
「文字通りのサンドバッグ状態か・・・」。
「うん。1年坊には悪いことしたな・・・」。
少ししょげかえる西条くん。
「そう落胆するな。西条。お前が悪いんじゃない」。
「しばらく・・・一緒にいないようにするって、さ。まぁ無理もないけどな」。
「コーラス部は?」
首を横にふる西条くん。
「そっか・・・。他の1年坊にも影響出そうだな・・・」。
「まったくやっかいなからみかたしてきやがる。あいつら」。
「ところで、うちボクシング部なんてあったか?」
「ああ。活動はしてなかったがな。有名無実ってやつだ。歴代たまり場だ」。
「ふうん・・・。」
「久保、野尻たちの会社、北斗アルミってとこだったな」。
「ああ。間違いない。3人とも去年定期採用で就職してる」。
とにかくこれで相手は確定しました。他にもいるかも知れませんが、所詮は不良。端っこをおさえさえすれば後は芋づるです。
「まずは井上、だな。親父さんに頼んでくれ」
「よし。わかった」。
グレート井上くんが、グレート父さんの職場に電話をかけます。
それをとなりでじっと息をひそめてうかがう僕。
「あー、父さん?僕だけど。うん。あのねー、頼みあるんだけど」
「うん。頼める?そう。北斗アルミって会社」。
オッケーマークのグレート井上くん。
よくやった!井上!
ところが
「え?うん。いるよ。うん。一緒」。
?
「お前に換われって」。
「え?僕?」
「うん。父さんが用事あるらしいぞ」。
えーーー。グレート父さんが?
悪い予感がぷんぷんします。
しぶしぶ受話器を受け取る僕。
「あー。お父さ・・・巨人ファンの井上さんですか?先日はごちそうさまでした」
友人とは言え、他所の父親の話しにくいことったらありゃしません。
受話器の向こうのグレート父さん。
「いつ来るんだ?」
「はい?」
「だからその、たかさん、・・・の息子の君とそのー」
「母ですか?」
「あ?あ、そうだ!お母様もいっしょだったねーーー」。
なにを白々しい。
さっきから自分で「たかさん」って言ってるじゃん!
「今度の休みにでも、と、思ってます」。
「そうかそうか。ところで、あー。ちょっと君に聞きたいことがあるのだが」
「はい。なんでしょう?」
「君は理屈はわかるヤツと見込んで聞くのだがな・・・」。
「はい。だからなんでしょう?」
「うん。もし、もしもだ。もしも君がウチの夕子と結婚するとー」
「は・・?」。
「君は義理の息子ということになるなぁ?」
「え・・ええ。そ、そういうことになりますね・・・」。
「するとだ。ここからが大事なのだが・・・」。
「はい」。
「君が義理の息子ということはー」
「はい」。
「わたしとタカさんは、義理の夫婦ってことにならないか?」
はぁ?
義理の夫婦ぅ?
なに言ってんだ?このオヤジ。
聞いたことないぞ。そんなの。
しかし、ここで機嫌を崩されてはひとたまりもありませんので
「そ、そうですね。母と巨人ファンの井上さんは、義理の夫婦ということに・・・」。
「おお!やはり君もそう思うか!そーだよなー。義理の夫婦だよなー」
なんか感慨にふけってます。
グレート父さん。
しかし、このおかげでグレート父さんは、すっかり上機嫌で僕たちの依頼を引き受けました。
僕たちの依頼したこと。それは野尻たちの勤務先である「北斗アルミ社」を紹介してもらうことでした。
とにかく顔の広い有力者、グレート薫さんは、町の主立った企業すべてに顔がききました。
そこに僕たちは「工場見学」を申し込んでもらったのです。
この頃は、中卒で就職する、という者はすでになく、高卒の就職希望者は、町の製造業の会社にとって「金の卵」でした。
したがって、どこの工場も、高校生の「工場見学」を歓迎したのです。
翌日、
「これ。北斗アルミの電話番号と責任者の名前」。
グレート井上くんが、依頼されたメモを持って来ました。
「あー。これこれ。これさえあればオッケーだ」。
「お前」。
「なんだ?」
「父をどうやってだました?」
「だ、だました?」
「いや・・・。父が、弟ができる覚悟しておけって・・・・」。
げげ。
「いや。そりゃお前の父ちゃんが勝手に・・・・」。
「父は許しても僕は許さないからな」。
「ああ、わかったわかった」。
「お前の母ちゃん、誘惑してやる!」
井上家。親子で既婚である母を争うつもりでしょうか?
意外なライバル同士。
次に千葉くんの出番です。
何度かふれていますが、千葉くんは、工藤先生の声色が信じがたいほどにうまく、我々でも区別がつきません。
工藤先生になりきって電話をかける千葉くん。
「あー、工場長さんでいらっしゃいますか?○○高校でございます」
「えー、この度は私どもの生徒の工場見学をおひきうけいただき、ありがとうございますぅー」。
「はい。つきましてはですねぇ。15名ほどの就職希望者がまいりますので。はいー、ざっと見せていただければ」。
「はいはい。その際にですねー。ひとつお願いがあるんですがね」
「はい。うちの卒業生が去年御社にごやっかいになっていると思うのですが・・・。ええ。3名」
うまいぞ。千葉!
だてにいつも僕たちを騙していません。
ほんっとそっくりだ!



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「うん。それで?」
「かなりやられたようだ。主にボディなんで顔に出てないけどな」。
「そいつらボクシング部とか言わなかったか?」
「ああ。間違いない」。
「文字通りのサンドバッグ状態か・・・」。
「うん。1年坊には悪いことしたな・・・」。
少ししょげかえる西条くん。
「そう落胆するな。西条。お前が悪いんじゃない」。
「しばらく・・・一緒にいないようにするって、さ。まぁ無理もないけどな」。
「コーラス部は?」
首を横にふる西条くん。
「そっか・・・。他の1年坊にも影響出そうだな・・・」。
「まったくやっかいなからみかたしてきやがる。あいつら」。
「ところで、うちボクシング部なんてあったか?」
「ああ。活動はしてなかったがな。有名無実ってやつだ。歴代たまり場だ」。
「ふうん・・・。」
「久保、野尻たちの会社、北斗アルミってとこだったな」。
「ああ。間違いない。3人とも去年定期採用で就職してる」。
とにかくこれで相手は確定しました。他にもいるかも知れませんが、所詮は不良。端っこをおさえさえすれば後は芋づるです。
「まずは井上、だな。親父さんに頼んでくれ」
「よし。わかった」。
グレート井上くんが、グレート父さんの職場に電話をかけます。
それをとなりでじっと息をひそめてうかがう僕。
「あー、父さん?僕だけど。うん。あのねー、頼みあるんだけど」
「うん。頼める?そう。北斗アルミって会社」。
オッケーマークのグレート井上くん。
よくやった!井上!
ところが
「え?うん。いるよ。うん。一緒」。
?
「お前に換われって」。
「え?僕?」
「うん。父さんが用事あるらしいぞ」。
えーーー。グレート父さんが?
悪い予感がぷんぷんします。
しぶしぶ受話器を受け取る僕。
「あー。お父さ・・・巨人ファンの井上さんですか?先日はごちそうさまでした」
友人とは言え、他所の父親の話しにくいことったらありゃしません。
受話器の向こうのグレート父さん。
「いつ来るんだ?」
「はい?」
「だからその、たかさん、・・・の息子の君とそのー」
「母ですか?」
「あ?あ、そうだ!お母様もいっしょだったねーーー」。
なにを白々しい。
さっきから自分で「たかさん」って言ってるじゃん!
「今度の休みにでも、と、思ってます」。
「そうかそうか。ところで、あー。ちょっと君に聞きたいことがあるのだが」
「はい。なんでしょう?」
「君は理屈はわかるヤツと見込んで聞くのだがな・・・」。
「はい。だからなんでしょう?」
「うん。もし、もしもだ。もしも君がウチの夕子と結婚するとー」
「は・・?」。
「君は義理の息子ということになるなぁ?」
「え・・ええ。そ、そういうことになりますね・・・」。
「するとだ。ここからが大事なのだが・・・」。
「はい」。
「君が義理の息子ということはー」
「はい」。
「わたしとタカさんは、義理の夫婦ってことにならないか?」
はぁ?
義理の夫婦ぅ?
なに言ってんだ?このオヤジ。
聞いたことないぞ。そんなの。
しかし、ここで機嫌を崩されてはひとたまりもありませんので
「そ、そうですね。母と巨人ファンの井上さんは、義理の夫婦ということに・・・」。
「おお!やはり君もそう思うか!そーだよなー。義理の夫婦だよなー」
なんか感慨にふけってます。
グレート父さん。
しかし、このおかげでグレート父さんは、すっかり上機嫌で僕たちの依頼を引き受けました。
僕たちの依頼したこと。それは野尻たちの勤務先である「北斗アルミ社」を紹介してもらうことでした。
とにかく顔の広い有力者、グレート薫さんは、町の主立った企業すべてに顔がききました。
そこに僕たちは「工場見学」を申し込んでもらったのです。
この頃は、中卒で就職する、という者はすでになく、高卒の就職希望者は、町の製造業の会社にとって「金の卵」でした。
したがって、どこの工場も、高校生の「工場見学」を歓迎したのです。
翌日、
「これ。北斗アルミの電話番号と責任者の名前」。
グレート井上くんが、依頼されたメモを持って来ました。
「あー。これこれ。これさえあればオッケーだ」。
「お前」。
「なんだ?」
「父をどうやってだました?」
「だ、だました?」
「いや・・・。父が、弟ができる覚悟しておけって・・・・」。
げげ。
「いや。そりゃお前の父ちゃんが勝手に・・・・」。
「父は許しても僕は許さないからな」。
「ああ、わかったわかった」。
「お前の母ちゃん、誘惑してやる!」
井上家。親子で既婚である母を争うつもりでしょうか?
意外なライバル同士。
次に千葉くんの出番です。
何度かふれていますが、千葉くんは、工藤先生の声色が信じがたいほどにうまく、我々でも区別がつきません。
工藤先生になりきって電話をかける千葉くん。
「あー、工場長さんでいらっしゃいますか?○○高校でございます」
「えー、この度は私どもの生徒の工場見学をおひきうけいただき、ありがとうございますぅー」。
「はい。つきましてはですねぇ。15名ほどの就職希望者がまいりますので。はいー、ざっと見せていただければ」。
「はいはい。その際にですねー。ひとつお願いがあるんですがね」
「はい。うちの卒業生が去年御社にごやっかいになっていると思うのですが・・・。ええ。3名」
うまいぞ。千葉!
だてにいつも僕たちを騙していません。
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- 関連記事
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- 9章-第32話 VS右京(3)
- 9章-第31話 VS右京(2)
- 9章-第30話 vs右京(1)
グレート薫父さん、サイコーですっ!
義理の夫婦ってなんじゃぁ?
勝手にそんな言葉つくるなんて、まぁ。
深夜にパソコンの前で声を潜めて爆笑しちゃったじゃないですか?
あー、楽しい・・・。
なるほどー!それで座談会!!段々点が線になってきましたね~。
巨人好きの井上さんと、グレート井上くんのたかさんをめぐる親子の争いが激化、、笑
うーん、極悪非道。
悪人に職業は必要なし、
と言うこと?
千葉君の秘技「工藤先生の声色」だ(笑)
敬語とか言い回しとか難しいだろうに素晴しい技ですよね。
やったぁ、2回目の1番乗り!
しかも31話のアップ前ですよ。
どれだけぼくちゅうにハマっているか、くろわっさんご存知でしょうか?
こんばんは。
二回目の書き込みです。
今日は勉強して起きていたのですが
寝る前に確認したら新しいの発見
夜更かしも二文くらいとくのようですね。
>月澤さん 一番載り認定!
おめでとうございます!
>義理の夫婦ってなんじゃぁ?
>勝手にそんな言葉つくるなんて、まぁ。
理屈上は合ってるんですけどねぇ。
義理の夫婦。
義理の夫婦って・・・何を企んでいるのでしょうか?
タカさんは、ママチャリくんの秘密兵器!?
ママチャリくんの冴え渡る頭脳と、機動力。そして!
タカさんがいれば、鬼に金棒!
義理の夫婦・・・。
なんか、もうどうこじつけてでもって感じが否めない・・・。
それを真剣にやってるのが笑えますね。
>くろわっさん
>理屈上は合ってるんですけどねぇ。
>義理の夫婦。
へ理屈上とも言う・・・。
>ぷにょんくん
>巨人好きの井上さんと、グレート井上くんのたかさんをめぐる親子の争いが激化、、笑
はい~。まさしく予想外の展開(笑)。
グレート父さんがここまで夢中になり、グレート井上君が「誘惑してやる」と断言するたかさんって、頭脳明晰であるだけでなく、容姿端麗な美女でいらっしゃるのでは。母親を選んで生まれるわけにはいかないものですが、くろわっさんがうらやましいですね。
とばっちりうけちゃった1年生、かわいそうですね。
第三者まで巻き込んで、弱いものいじめとは、なんて根性くさった男なんだ右京!
>うまいぞ。千葉!
>だてにいつも僕たちを騙していません。
>ほんっとそっくりだ!
→この引き文句に爆笑☆でした。
ママチャリさん、前にコメントで(このコメント自体は”くろわっさん”て事でしたがぁ・・・)、奥様はママチャリさんが高校2年生の頃、相手は小学校の5年生とかぁ、書いてませんでしたかぁ???
と言う事は、グレート井上家とは婚姻関係にならないって事なんですかぁ???なぁ~~~んだザンネン!!!
薫父さんグレートです。 義理の夫婦って新しいすねー。(笑)
グレート薫父さんたら面白いしと♪(^∀^)
こんなにあからさまにタカさん贔屓をしていられるということは
井上夫妻の夫婦仲はかなり円満なんですね。
素敵です☆