ぼくたちと駐在さんの700日戦争

むかし、ある町に、『幸福の王子』と呼ばれる銅像が経っていました。

それは、若くして亡くなった、グレートな王子をいたみ、グレート王様が建てたもので、
青い瞳は、サファイヤ。
剣には、ルビー。
鎧は、金銀に包まれた、それはそれは絢爛豪華な銅像でした。

グレート王子は、生きている頃は立派な王宮でなに不自由もない生活を送っていたのですが、銅像として高い場所に立つと、そのサファイヤの目には、人々のくらしが見えるようになりました。

向かいの安いアパートメントの部屋には、警察官が住んでいるのですが、
そこの娘は病気なのに、貧乏なので、薬を買うこともできません。

日に日に悪化して行く病に、母親は嘆くばかり。
「アイ、しっかり！おおお・・・この世に神はいないのかしら・・・」

グレート王子はそれを観るたび、思いました。

「私の身体の一部でもあの子にあげられたなら・・・」

しかし、銅像なので動けません。

「都合よく、燕でも来てくれればいいのだが」

という実際に都合のいい考えが浮かんだのですが、やって来たのは、燕ではなく、カラスでした。

「これ。カラスよ」

ところが、このカラス、人の言葉がしゃべれるようです！

「アンタ、アノコノナンナノサ」

「いや・・・あんまり深い関係でもないのだが・・・・」

「アンタ、アノコノナンナノサ」

しかし、カラスはグレート王子様が事情を言うと、鎧の金の一部をはがして、持っていってくれました。

「たのんだぞ。カラス！」

「アンタ、アノコノナンナノサ！」

一抹の不安はありましたが、自分は動けないのですから、しかたありません。

しかし、翌日もカラスはやってきました。

「おお！とどけてくれたか！カラス！」

「アンタ、アノコノナンナノサ」

そう言うと、カラスは再び、鎧から金をはがし、また持っていきました。


そんな日がいく日もいく日も続きました。

が、警察官の娘は、いっこうによくなる雰囲気がなく、
王子の金の鎧は、ボロボロで、すでに観る影もありません。

グレート王子は知らなかったのです。

”カラスは光り物が好き”　という、真実を。

やがて冬がやって来ても、
カラスは南国には渡ろうともせず、せっせと宝石を運びました。

「カラス。やはりお前はやさしいのだな」

カラスは渡り鳥ではないので、当たり前なのですが、王子はそれも知らなかったのです。

やがてある日、カラスは王子の元に、針金のハンガーやガラクタを集めて来ました。

「それは、あの子からのお返しかい？ありがたくうけとっておくよ」

王子は知らなかったのです。都会のカラスはそうやって巣をつくることを。

カラスは王子の肩のところに、そのままガラクタの巣をつくってしまい、毎晩、♀のカラスとイチャイチャし始めたのです！

「おまえら～～～～！人の耳元で～～～～～！」

しかも、巣には、王子から持って行った金銀財宝が！

グレート王子は思いました。

「ああ、少しでも動けたら、このカラスをぶっころしたい・・・」

ところが、このカラスたちが、とうとう卵を産みました。
それを見つけた、向かいのアパートメントの警察官、
夜中にそれをかっぱらいまして、娘に食べさせたところ、みるみる元気になったではありませんか！

「おおお！奇跡だ！」

この話が町中に伝わると、町の人々はカラスに感謝して、

『幸福の玉子』と書き換えたそうな。


めでたしめでたし。




ああ・・・書きながら泣いちゃったよ・・・・。

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