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第12話 vs本屋(3)

もうとっくにおわかりかとは思いますが、にぶいかたのために一応説明いたしますと、僕たちは、わざわざ店のご主人につかまるために、さも万引きして逃げるかのようなそぶりをしたわけです。
案の定、僕たちのことをすっかり疑っていたご主人は、まんまと捕まえてくださいました。「まんまと捕まえてくださいました」という敬語もヘンですが。
僕たちのかかえた袋、うち「西条版」には、いらない古本と、それをカバーする「しょーもないもの」を入れていて、なおかつ、それを1品ずつしか取り出せないように袋の口に細工をしてありました。
したがって、ここまではみごと作戦通りだったのです。ここまでは・・・。
しかし・・・
実はご主人が西条版の鞄を開いた瞬間から少し異変がありました。
真ん前にいたご主人は気づかれていたようですが、なにしろ「ハエ取りリボン」の攻撃に気を取られ、それどころではなかったのでしょう。
しかし「ゾウキン」はその「異変」を決定的にしました。それも期待をはるかに上回って。
「デホッ、な、な、なんだ、この臭いは!ウゲッ 」
実は2日前のこと・・・。
♪ふぉぁんふぉぁんふぉぁん(回想シーン、ジングル)
← ← ← ← ←
西条くんは化学部のやつらを呼び止め
「なぁ。学校の薬品で一番刺激臭が強いのってなんだ?」
「うーん、アンモニアかホルマリンあたりかなぁ」
「じゃぁ一番悪臭なのは?」
「いろいろあるけど・・・イオウ、あたりじゃない?」
「じゃぁ、お前ら、それ合成して世界一臭い液体つくれ」
「そんなもんどうすんだよ?」
とは言ったものの、もともと化学部なんて部は気弱な帰宅部ですから、西条くんのこの「強制力のある提案」にまんまとのりました。
なんと言っても彼らは、学校で唯一、劇薬庫の鍵を開けられる特権者です。
意外なことに、わずか数時間でその「魔の液体」はできあがり
「いいか、西条。50cm以内でこの臭いを嗅いじゃダメだからな」
という『使用上のご注意』をつけられながら小瓶を手渡されたのでした。
「僕たち、化学部って言っても医療にはド素人だからな。人体にどういう影響があるかまったく保証できない」
という製作者の心配をよそに、とりあえず「50cm以内で嗅げない激臭」ということに、僕と西条くんは狂喜しました。
それほどの激臭のあるものですから、当日、僕たちは『使用上の注意』を守り、袋の中で「魔の液体」をゾウキンに染み込ませたのです。
その際には、ちょっと目に刺激があるな、と思った程度だったのですが。
→ → → → →
ところが。
これが予想以上のデキだったわけです。
ゾウキン本体登場から、わずか数十秒で異臭は激臭に変わり、4坪ほどの事務所はまたたくまに異臭ワールド!
「んな、な、な、なんなんだ!ケコッ 」
びっくりする、というか、すでに正常な呼吸ができてないご主人。
そりゃそうです。その激臭は、すでに我々をもつつみこみ、仕掛けた僕たちでさえ、卒倒しそうないきおいなのです。
「うわぁ、た、たまらん!」
ご主人は、ゾウキンをこっち投げました。
「う、うわぁぁぁ、こ、こっちよこさないでください!、 ウゲェ! 」
とにかく目も開けていられないようなすさまじい刺激臭。この世のものと思えません。
生涯で嗅いだ臭いで、間違いなくトップの悪臭でした。
「ド、ドア・・・・・ドア開けましょう!」
悪いことに、この事務室は、開口窓がありませんでした。
するとご主人が
「だっ、だめだ!そんなことをしたら、店内に、ゲホッ、店内に臭いが、ウゲェ 」
ああ。立派な商売人です。もし、この騒ぎで亡くなっても、きっと語り継がれることでしょう。
「そ、そんなこと、ケホケホ、言ってる場合じゃ、ゴホッ・・・ウエ 」
「ぜっっっっったいにダメだぁ!うううううううううう」
もはや悶絶しそうなご主人。
「か、換気扇・・・!」
「そ、それより、ゾウキン、もどせ!ゾウキン!」
かばんを僕たちにわたすご主人。
「え??しまってゲホ、いいんですかぁ?ゴホッ 」
「頼むからしまってくれ~~~うがぁっ! 」
もう泣きがはいっちゃってます。
が、泣きが入ってるのは、実はこっちもまったく同じ。なにしろ、ひと呼吸すると吐き気が襲ってきます。
目からはボロボロと「フランダースの犬最終回」10回分まとめたような涙涙涙。横隔膜はすさまじい拒否反応をしるし、シャックリもとまりません。
「な、なんなんだね?こりゃ?オウ、オウッ」
目を閉じ、鼻も口も手でふさいでいるご主人。
「だ・・・だから、開けちゃだめって・・・ヒィ・・・言った・・・・ウゲッ 」
もう、西条くんも僕もボロボロです。
こりゃまったく想定外でした。
僕たちの筋書きは、せいぜいご主人の手に臭いがうつって
「だから開けちゃだめだって言ったでしょ?」
で、チャンチャンなはずだったのですから。
それがもう、すでに会話もできないパニック状態。
僕たちとご主人は、たまらず事務室から店内へと飛び出しドアを閉めました。
「はぁはぁ・・・な、なに?アレ?」
息も荒くご主人。
「はぁはぁ。あ・・・あれはですねぇ・・・はぁはぁ。洗剤の・・・洗剤の・・・・」
本来はしっかり筋書きを決めてきたのに、呼吸をすることでせいいっぱいで、とても会話になりません。すでに洗剤の臭いじゃねーし。
「だから命にかかわるって言ったでしょ?ゼーゼー‥」
これだけはハッキリ言いました。
こういう意味ではなかったんですが。
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もうとっくにおわかりかとは思いますが、にぶいかたのために一応説明いたしますと、僕たちは、わざわざ店のご主人につかまるために、さも万引きして逃げるかのようなそぶりをしたわけです。
案の定、僕たちのことをすっかり疑っていたご主人は、まんまと捕まえてくださいました。「まんまと捕まえてくださいました」という敬語もヘンですが。
僕たちのかかえた袋、うち「西条版」には、いらない古本と、それをカバーする「しょーもないもの」を入れていて、なおかつ、それを1品ずつしか取り出せないように袋の口に細工をしてありました。
したがって、ここまではみごと作戦通りだったのです。ここまでは・・・。
しかし・・・
実はご主人が西条版の鞄を開いた瞬間から少し異変がありました。
真ん前にいたご主人は気づかれていたようですが、なにしろ「ハエ取りリボン」の攻撃に気を取られ、それどころではなかったのでしょう。
しかし「ゾウキン」はその「異変」を決定的にしました。それも期待をはるかに上回って。
「デホッ、な、な、なんだ、この臭いは!ウゲッ 」
実は2日前のこと・・・。
♪ふぉぁんふぉぁんふぉぁん(回想シーン、ジングル)
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西条くんは化学部のやつらを呼び止め
「なぁ。学校の薬品で一番刺激臭が強いのってなんだ?」
「うーん、アンモニアかホルマリンあたりかなぁ」
「じゃぁ一番悪臭なのは?」
「いろいろあるけど・・・イオウ、あたりじゃない?」
「じゃぁ、お前ら、それ合成して世界一臭い液体つくれ」
「そんなもんどうすんだよ?」
とは言ったものの、もともと化学部なんて部は気弱な帰宅部ですから、西条くんのこの「強制力のある提案」にまんまとのりました。
なんと言っても彼らは、学校で唯一、劇薬庫の鍵を開けられる特権者です。
意外なことに、わずか数時間でその「魔の液体」はできあがり
「いいか、西条。50cm以内でこの臭いを嗅いじゃダメだからな」
という『使用上のご注意』をつけられながら小瓶を手渡されたのでした。
「僕たち、化学部って言っても医療にはド素人だからな。人体にどういう影響があるかまったく保証できない」
という製作者の心配をよそに、とりあえず「50cm以内で嗅げない激臭」ということに、僕と西条くんは狂喜しました。
それほどの激臭のあるものですから、当日、僕たちは『使用上の注意』を守り、袋の中で「魔の液体」をゾウキンに染み込ませたのです。
その際には、ちょっと目に刺激があるな、と思った程度だったのですが。
→ → → → →
ところが。
これが予想以上のデキだったわけです。
ゾウキン本体登場から、わずか数十秒で異臭は激臭に変わり、4坪ほどの事務所はまたたくまに異臭ワールド!
「んな、な、な、なんなんだ!ケコッ 」
びっくりする、というか、すでに正常な呼吸ができてないご主人。
そりゃそうです。その激臭は、すでに我々をもつつみこみ、仕掛けた僕たちでさえ、卒倒しそうないきおいなのです。
「うわぁ、た、たまらん!」
ご主人は、ゾウキンをこっち投げました。
「う、うわぁぁぁ、こ、こっちよこさないでください!、 ウゲェ! 」
とにかく目も開けていられないようなすさまじい刺激臭。この世のものと思えません。
生涯で嗅いだ臭いで、間違いなくトップの悪臭でした。
「ド、ドア・・・・・ドア開けましょう!」
悪いことに、この事務室は、開口窓がありませんでした。
するとご主人が
「だっ、だめだ!そんなことをしたら、店内に、ゲホッ、店内に臭いが、ウゲェ 」
ああ。立派な商売人です。もし、この騒ぎで亡くなっても、きっと語り継がれることでしょう。
「そ、そんなこと、ケホケホ、言ってる場合じゃ、ゴホッ・・・ウエ 」
「ぜっっっっったいにダメだぁ!うううううううううう」
もはや悶絶しそうなご主人。
「か、換気扇・・・!」
「そ、それより、ゾウキン、もどせ!ゾウキン!」
かばんを僕たちにわたすご主人。
「え??しまってゲホ、いいんですかぁ?ゴホッ 」
「頼むからしまってくれ~~~うがぁっ! 」
もう泣きがはいっちゃってます。
が、泣きが入ってるのは、実はこっちもまったく同じ。なにしろ、ひと呼吸すると吐き気が襲ってきます。
目からはボロボロと「フランダースの犬最終回」10回分まとめたような涙涙涙。横隔膜はすさまじい拒否反応をしるし、シャックリもとまりません。
「な、なんなんだね?こりゃ?オウ、オウッ」
目を閉じ、鼻も口も手でふさいでいるご主人。
「だ・・・だから、開けちゃだめって・・・ヒィ・・・言った・・・・ウゲッ 」
もう、西条くんも僕もボロボロです。
こりゃまったく想定外でした。
僕たちの筋書きは、せいぜいご主人の手に臭いがうつって
「だから開けちゃだめだって言ったでしょ?」
で、チャンチャンなはずだったのですから。
それがもう、すでに会話もできないパニック状態。
僕たちとご主人は、たまらず事務室から店内へと飛び出しドアを閉めました。
「はぁはぁ・・・な、なに?アレ?」
息も荒くご主人。
「はぁはぁ。あ・・・あれはですねぇ・・・はぁはぁ。洗剤の・・・洗剤の・・・・」
本来はしっかり筋書きを決めてきたのに、呼吸をすることでせいいっぱいで、とても会話になりません。すでに洗剤の臭いじゃねーし。
「だから命にかかわるって言ったでしょ?ゼーゼー‥」
これだけはハッキリ言いました。
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爆笑中です。
おもしろい
おもろす(∩∀`*)
ままちゃり
好きすっき
ゲキオモロ
3ポ-ルと610ハップじゃなくてよかったですね
ふっ、5番か
またまた6ばんでぇす
こんなことしてて平気なのか?
どーなのよ、くろわっさん
おもしろすぎ
声出して笑ってしまいました(^∀^)
ホントおもしろすぎで、思わず初コメです☆
サクサク読めるし、まるで自分も体験してる気になっちゃいますねっ
90÷9-1=9番!!
初のひとケタ!!!!!!!!!!!!!
臭い想像しただけで
気持ち悪くなった(∀)笑
化学部は何を使って調合したんだろう
これって、ホントに調合できるんですか?
科学部強すぎだろ
Enjoyed examining this, very good stuff, thanks. “The fox knows many things, but the hedgehog knows one big thing.” by Archilocus.