ぼくたちと駐在さんの700日戦争

なんで・・・・・？

「モロッコが？？？」
「ここに？？？」
「西条は？？？」

そう。モロッコは、さっきまでは縛られていて、西条くんが見張っていたはず。
さらに西条くんを、グレート井上くんと森田くんが見張る、という二重の安全策をとっていました。

なのに、モロッコ。

　グゥ・・・

ここにいます。

「食われた、とか？」
「いやいや、西条は、そんなに美味くないだろー」

千葉・・・そのツッコミは少しおかしい。
それ以前に「大きさ」ってのがあります。

「西条なら井上のほうがうまそうだな」
「だよな。やわらかそうだしな」
「風呂入ってるしな」

うーん。友人を「味」で評価する仲間って・・・。
しかも基準が「風呂」。

ところが、ここでジェミー、

「これ、モロッコの兄弟じゃないでしょ～か～」

「あ！」「それ、ありえる！」

熊の出産は、だいたい、1回で2頭。
モロッコに兄弟がいてもおかしくありません。

「え～～～～兄弟～～～～～？」

「孝昭における早苗さんみたいなもんだ！」

「そんなの例えられなくてもわかる」

わかります。
千葉くんにだって兄がいるのに、なんで孝昭くんで例えるのでしょう？

なのに、

「そうかーーー。コイツが早苗さんかあ～」
「言われてみれば強そうだ」
「あはははは」

「なんで姉ってわかんだよっ！」

あいかわらず漂流し続け、サッパリ肝心な問題にたどり着きません。

しかし、動物博士、久保くんによれば、

「♀だ」

「やっぱしーーーーー」

なにが「やっぱし」なのかはわかりませんが、

「よしよし。早苗。こっちこ～い」
「名前つけんなよっ!!」

子熊「早苗」（仮名・推定年齢1歳）は、僕たちの後ろに、ちょこんといますが、僕らが近づこうとすると、後ずさりします。

「さすが早苗さんだ。用心深い！」
「きっと生理だ」
「言えてる！あはははははは！」

「だーーかーーらーーー！姉の名前つけんな！勝手に生理にすんな！」

普段のグレート井上くんの苦労を、身をもって知る孝昭くんです。

しかし子熊。かと言って、その場から立ち去ろう、という様子も見受けられません。

これは・・・・・・

「あ、わかった！」

「早苗さんの生理の日が？」
「ちがうって・・・・」

「あー、安全日計算してんのか？」
「してないって！」

「なんだとおおおお！てめぇ！人の姉の安全日を！」

「お前らねぇ・・・」

どうやると、ここまで話がこんがらかるのでしょう？

　グゥ・・・

「ほら！熊もあきれてるぞ！」

「ごめん。早苗さん」
「すいません」
「わりぃ、姉ちゃん」

姉ちゃんになってます・・・。熊なのに。

「熊に謝ってどうすんだ！そうじゃなくってーーー」

僕が言いたかったのは、

「子熊がここから離れない理由だよ！母熊の匂いがするんじゃないか？」

「あーーー、土手下から？」

「そう！」

「ってことは・・・・・」

「そう！」

そうです。

土手の下の熊は・・・・

「早苗の母ちゃん!!」

「そう！」

「え？俺の母ちゃん？」
「そういうことになるわなー」
「知らなかったぜ」

バカだろ、お前ら・・・・。


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