ぼくたちと駐在さんの700日戦争

「ジェミーーーーーー！」
「ジェミーーーーーーーー！」

手元に黄黒ロープの端はありません。

ということはー

「ロープごと落ちたってことだ？」
「なんでだろうな？」

「お前らが放したからだろう！バカヤロー！」

「今は、そんな原因を話し合ってる時じゃありませんよ、駐在さん！」
「そうそう」

「原因を話し合う時だろうがぁーーーー！」

さすが警察官です。
こういう時はうるさい・・・。

「とにかく、丹下、助けないと！」

焦る駐在さん。
唯一の大人で、しかも警察官ですから、そりゃ、おだやかじゃありません。

対して僕たちは、

「大丈夫だぜ、駐在」
「そうそう」

いたってのどか。

「なんでそんなことが言える!?　谷底だぞ!?」

「だってなー」
「ジェミーは、今まで一度だって死んだことないんだから～」
「うん。一度も死んだことなんてないよな？」
「うん、ない。一度も」

「あー・・・今まで一度もー、それじゃ安・・・しん、でるわけねぇだろ！」

「きっと谷からはいあがって来た時は、立派なライオンになってますよ」

「落ちたのは丹下だろぉおお！」

とうとう、

「どけ！お前らが行かないのなら、俺が行く！」

「駐在・・・」
「さん・・・」
「高所恐怖症なのに・・・・」

「言ってる場合じゃない！」

その勇気と使命感に打たれた僕たちは・・・

「そいじゃ、おねがいしまーーーす」
「俺ら、子熊、見たいんでーーーー」

「待て待て待て待て待て待て！」

「なんでしょう？」

「なんでしょうじゃねぇ！せめて下りるためのツル、さがしてこい！」

「さっきの立ち入り禁止ロープは？」

「フザけんなーーーーーーーーーー!!!」

自分で持って来たくせに・・・・。

「あそこまで下りるツルっつったら半端じゃないぜ？駐在」
「丈夫さも保証がありません」

「うー・・・・む・・・」

「それよりは、下から回ってったらどうだ？」

とは、誰でも考えつくことですが

「ダメだろ。沢には、熊が横たわってんだから」

「あ・・・そうかー」

よく考えれば、ジェミーは、そこに落ちてるわけですが、
どういうわけか僕たちには

　ジェミーは死なない

という、確信めいたものがあるのでした。

なぜなら、

「アイツが死ぬと、地球はどこを中心にしてまわっていいか、わかんなくなるからな」
「あははは。言えてる！」
「いっそ、このまま熊に育てさせて、ターザンみたいにしたらおもしろいんじゃないか？」

「お前ら・・・後輩だろうが！」

駐在さんが、あんまりマジで心配するものですから、

「そいじゃ、安否だけでも確認しよう」

ということになりまして、

「確認しようがあるのか？」

「あります」


みんなが一斉に崖沿いにならびまして、

「よーーーーし！誰がどこまで飛ぶか競争だーーーーーーー！」

「マケねぇぞーーーーーーーー！」

なにをどこまで飛ばすのかは、詳しく解説できませんが、男子はみんなやったことがある競争で、

「バスーンすると、かなり有利なんだよなーーー」
「そうそう」
「あははははは。なつかしーーー」

と、いうような競争です。

「放水準備ーーーーーー！」
「おおおおおーーーーー！」

「せーーーーのーーーーー!!」

”やめてください～～～～!!”

ほら！生きてた！



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