ぼくたちと駐在さんの700日戦争

女学生さんたちが、下校されています。

春は名のみの、北風の吹く町。
その時間帯だけ、まるで花が咲いたようです。

「女子学生さん、女子学生さん」

町のおまわりさんが、女学生さんのひとりを呼び止めました。

「あ、なんでしょう？おまわりさん・・・」

「実は、彼があなたに言いたいことがあるらしいのです」

「わたしに・・・ですか？」

「そう」

おまわりさんは、ひとりの若者を呼び、前に出しました。
歳の頃なら、女の子と同じくらい。

「えっと・・・・・・」

「あら・・・。なぁに？」

「えっとーーー・・・・」

もじもじする男の子を、おまわりさんが背中を押してはげまします。

「ほら。さっさと言いたまい」

どうやら若者は、彼女に「恋の告白」をしたいらしい。周囲の人たちの目にも一目瞭然です。

まだ寒い北国の町に、ほのぼのとした光景がくりひろげられます。

「えっと・・・なあに？」

「ほら。勇気を出したまいー」

女の子のおともだちも、町の人たちも、その瞬間を固唾を飲んで見守っています。

「えっとーーーーー・・・」

「・・・なあに？」

「さっさと言いたまいー」

そしてついに、

「和美！ぼ・・・僕の子供を産んでくれ・・・・・」

「！」

「わーはははーははーーーー！！！」

くぅ・・・・！

ったく！なにがうれしいんだ？
こんなこと高校生に言わせて！

「キミの恋の応援をしただけじゃーないかーー。ママチャリくーん」

そう。「愛の告白」は、おまわりさんの懲罰だったのです・・・。

「もともとキミらの考えた台詞じゃないかーーーーー」

「くううううう・・・」

教えたのは西条なのに・・・。

「けど、カーちゃんのほうが、ずっとうまかったぞ。わはははーははー」

大人げね～～～～～～～～～！

「やかましい！美奈子ちゃんまで悪用しやがって！」

「美奈子さんと加奈子さんを間違えたのは事実でしょ？」

「ママチャリく～ん。それを女房の前で言ったら、命はない、と思いたまい」

うわ～～～～本気だよ、本気。
目が笑ってないよ。この人。

が。

「ママチャリぃ。カラスは女房ひとりだけってホントか？」

「ええ。相手は生涯1羽って言われてます」(←本当)

「ふーん。たいしたもんだな。そう考えると、放してやったのは正解かもなー・・・」

「でしょう？」

「見習えよ」

うるせー！

「さーて。次のお姉ちゃんいくかーーー！」

「え！和美以外にもですか!?」

カラスの引用はなんだったんだ？

「その代わり選ばせてやる。誰がいい？」

「そいじゃ、加奈子さん」

「懲りないヤツだな・・・・」



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