ぼくたちと駐在さんの700日戦争

＜R13指定＞

それでも早苗さん、丁重に背広にアイロンをかけると

「これでどうだ？」

「あ・・・ありがとうございます！」

ブルーベリーはまるで新品！

　ああ・・・助かった・・・。

次に、

「見せてみろ！」

「え？」

「そのまんまじゃ歩けないだろが！」

自分のハンカチを水で濡らすと、僕の耳から流れていた血を、拭き始めました。

「あ・・・早苗さん」

「動くなっ！」

「え・・・はい・・・・」

早苗さん。こういう「手当」に慣れているのでしょう。

「あ・・・早苗さん、ちょっ・・・」

「我慢しろ！男だろがぁ！」

いえ・・・・。
そうではなく。

早苗さんが、僕の顔をおさえながら拭くので、思わぬ接近に、ドギマギしてしまったのです。
思えば、知り合ってから2年、こんなに近くで早苗さんと向き合ったことはありません。

たとえば、僕が、今、手を彼女の首にまわせば。
すぐにでも唇が奪えそうなほど、近くに。

むろん、そんなことをすれば、さらに血しぶきが散ることは間違いないわけですが(哀)

　早苗さんは、平気なんだろうか？

目を落とした先には、早苗さんの胸が。
呼吸に合わせてわずかに上下していて・・・。

　いつもよりも、少しだけ早い？

彼女もきっと、僕の視線には気づいていたと思うのですが、
それを咎めることはしませんでした。

「よし！こんなもんだ！」

「あ・・・ども・・・・」

早苗さんの言葉で、一瞬で現実にもどされると、僕は「淡い期待」が急に恥ずかしくなりました。

・・・・なにを期待してたって・・・

ところが今度は、

「ズボン脱げ！」

「はい？」

「ズボン脱げって言ってんだ！カギザキ！繕うから！」

「あ・・・はい！」

「あ？なにはりきってんだ？お前」

「あー・・・いえ・・・・」

なんとなく張り切るもんなんです。
不思議です。

しかし、女子高生の真ん前でズボン脱いだことなんかありません。
僕が一瞬躊躇していると、早苗さん。驚くべき行動に出たのです。

「こっち！」

「え？」

「こっちこい！」

なんと僕の腕をつかんで、少しだけ奥まった所へ！

＜ーーー以下R13ーーー＞

「ズボン、脱いで～ン♡」

「え？え？」

早苗さん、豹変!?

「おバカさん♡なに照れてんの？はやく～～～～～ン♡」

「あ～～～～ん♡」

ああ・・・夢心地♥

「・・・なーんてな。こら！お前ら、覗いてんのはわかってんだぞ！」

いきなり天と地の早苗さん。

早苗さんが怒鳴ったと同時、

　ガタタッ！

扉の方で音がして、

「ありゃ？バレちゃいました？」

「覗きたぁ、趣味がよくねぇなぁ～。お前ら！」

「すいやせん。姐御・・・」
「だって、めったにないし・・・」
「せっかくの姐御の濡れ場だし・・・」

「誰が濡れ場だっ!?」

扉の裏にいたのは、おなじみ、スケ番グループの手下たちでした・・・。
早苗さん、人の気配に気づいて、まんまと釣ったのです。

「でも、ベタすぎます、姐御」
「あれじゃ男は立ち場がないってもんです」
「あ！アンタ、うまいね！『立場』ってのがなんとも！」
「でしょでしょ？」
「アハハハハハハハハハ」

大盛り上がり！

「なにやってんだ？お前ら」

「いや、姐御こそ」
「パーティ、主役がすっぽかしてなにやってるかと思えば」
「こんなとこで、ペーターと濡れ場」

「だーかーらー！濡れ場じゃねぇっつうの！」

ペーターでもありません。

「コイツの背広、洗濯してたんだよ！」

「濡れ場じゃないですか～」

確かに。濡れ場ではある。

「お前ら、いつからそこにいた？」

「じらしちゃイヤ～～～～ン♡、あたりですかね？」
「いや、ズボン脱いで♡、あたりだろ？」
「いや、そっちじゃないってば～ン♡？、あたりからだろ？」
「いや、もっと～～～ン♡、あたりじゃなかった？」

「だーれーがーそんなセリフ言った!?勝手に妄想を足すな！バカヤロー！」

うーん。露骨に聞くと、女の猥談ってすごい・・・。
西条くんの上いってます。

「やっぱ、コイツとデキてたんですねぇ、姐御」
「ずっとそうだろう、って、話しちゃいたんですが～」
「まぁ、姐御の趣味に口は出しませんけどね～」

暗に「趣味が悪い」と言ってるようにも聴こえます。
本人の目前で。

「やかましいっ！」

やはり、彼女たちの間では、僕は早苗さんの「イロ」でした。
後から思えば、早苗さんは、すでに五十嵐さんに想いを寄せていましたから、「マッポを好き」よりはマシだったのかも知れませんが。

「とにかく。お迎えに上がった次第で～」
「みんな待ってますよ？」
「諸先輩も来てますし・・・」

「あ？そっちには花がいんだろ。テキトーにやっとけ」

「まぁ、盛り上がるには盛り上がっちゃいるんですが・・・」
「姐御は？」

早苗さん。
この時だけは、僕に花を持たせるつもりだったのか、

「アタシは、今日は、コイツの貸し切りだからさ」

なんの躊躇もなく、言い切りました。

僕には、それが、へんに照れくさくて・・・。

「ええ・・・・」

とだけ、スットンキョウな答えをするしかありませんでした。

「えっとぉ・・・姐御。じゃぁ、皆にはなんて？」

「お前らからテキトーに言っとけ」

「へい！」
「わかりやした！あねごっ！」
「バージン卒業式で忙しいって伝えときますっ！」

「ちがうーーーーっ!!!」



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