ぼくたちと駐在さんの700日戦争

＜ショートなのにシリアスモードです＞


GTOには、助手席にも、めちゃめちゃ狭い後部座席も、野郎が満載でした。

おそらく、前方にウジャウジャといる他の車も満載なのでしょう。
やはり40人以上は間違いなし。
もとい。「40人＋1羽」以上いること間違いなし。

これだけ男が、こぞって集まるのですから、スケ番とはたいしたものです。
いえ、早苗さんだからこそ、これだけ集まるのかも知れません。

「菊池さん、これからどこへ？」

「あ？パ～チ～に決まってんだろが、パ～チ～」

パーティ・・・・。

「なんだっけ？ヘアウェルカムパーチー？」

「フェアウェル・パーティでしょ？」

なんだ、ヘアウェルカムって・・・。思春期か？

「それだ、それ！お前はー？」

「いえ・・・僕には・・・・」

僕たちには・・・

「そういう話は・・・・」

そう。早苗さんは、まったく女王様でした。
実は、僕たちの出る幕など、少しもなかったのです。

「じゃ～～～な～～～～♪」

走り去るGTOを、手など振って見送りましたが。

どこか寂しいような、この気持ちはなんなのでしょう？


「あ。そうだ・・・。洗濯・・・・」

とにかく、背広ちゃんと、ブルーベリーのハンカチ・・・。
なんとかしないと。

僕は、次期スケ番の「ナントカ星テントウ虫婦人」という子を、車の列の向こう側に探しました。が、

「あのーーーーーーー・・・・」

タッチの差。
前方の一台の助手席に乗りこむと同時。その車も発車してしまいました。

排気ガスの残る校門前。

僕は、そこで、次の「手下」が出て来るのを、ひたすら待ちました。

「そうだ・・・他の2年生だっていい・・・・」

ほどなくして、生徒たちが、親や友達と連れ立っって、出て来始めました。

卒業式が終了したのです。

本来なら、孝昭くんが「父兄」として、この背広で列席するはずだった卒業式。


卒業生たちは、校門前で、思い思いにに記念写真などを撮り始めて。半分血だらけの僕は、ひどく場違いでしたから、その場を立ち退くしかありませんでした。

ホント・・・なにしに来たのでしょう？

近くの店の自販機の横に身を潜めましたが、待っても待っても早苗さんはおろか、スケ番グループのメンツは、ひとりも出て来ません。
どこから見ても怪しい僕は、今度は、その店のおじさんに睨まれ、その場も追われることになりました。

しかし、これ以上離れると、校門が見えなくなります。

「待てよ？裏門!?」

どこの学校だってそうですが、正門と裏門とがあります。
こちらの門は、駅に近い、というだけで、早苗さんたちは「駅へは向かわない」のですから、こっちから出る必要はありません。

「しまった・・・・！こっちじゃなかった・・・！」

急いで、裏門へと走りましたが。

その道すがら

　ブロロ・・・・・・・・・

さっき並んでいた車の1台とすれちがいました。

そして。その先頭のローレルに・・・

「早苗さ・・・・！」

いえ。スケ番お欄・・・・。

間違いありません。

運転していたのは、僕の見たこともない男。

僕は、いつも早苗さんによくしてもらっていたので、自分が「特別扱い」という意識が、どこかにありました。
僕にとって早苗さんが特別であるように。

それがとんだ思い上がりであることを、走り去るローレルのテールに、見た気がしました。

考えてみれば、彼女には彼女の、僕の知らない高校生活があったわけで。

　そんな当たり前のことを・・・。

早苗さん・・・

『お前・・・』
『はい？』
『めったな出来心おこすんじゃないぞ？』
『お、おこすわけないでしょ！』
（『マスカレードBS』）

『いいよ。やるよ』
『え？』
『やるって言ってんだよ。アタシのパンツ。他ならぬお前の頼みだからな。小股の切れ上がったすっげーヤツ』
（『夕陽の決闘』）

『まさか、またパンツ買ってくれ、とか言うんじゃないだろうなぁ？』
『あ・・・するどいかも・・・』
『なにぃぃぃ!?』
（『マリア様によろしく』）

『あにジロジロ見てんだ？』
『いえ・・・その髪型も似合うな・・・って・・・・』
『そうか？ハハ・・・』
（『桜月夜』）

　早苗さん・・・・

今日は。早苗さんの卒業式である、と同時に・・・。

「卒業・・・おめでとう・・・」

僕が早苗さんから「卒業」する日であったのかも知れません。


　＜つづく・・・＞

＜明日(31日)、卒業&3月リクエストやります！＞


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