お欄さんたちの前には堂島がひとりで立っていました。
「あんたらだね。うちの子をかわいがってくれたのは」。
「ふん。2枚刃のお欄かぁ。初めて見るな。噂よりは美人だなぁ。なんだったらお前、可愛がってもいいんだよぉ?」
なめきったように高い声で話す堂島。
ちなみに「2枚刃のお欄」は、お欄さんの通り名で、10円玉を2枚の安全剃刀の刃ではさんだものを武器にしていることから言われていました。この「武器」で顔を切られると、縫合のしようがないため、一生傷が残ると言われ、恐れられていたのです。
「ヘドが出るねぇ。覚悟はいいかい?堂島」。
「はぁ?覚悟すんのはお前らのほうだ」。
やはり。仕組んでいたか・・・。
まわりを見ると、河川敷沿いの堤防の道路に、たくさんの車が縦列で駐車していました。
10台以上・・いえ。15、6台もあるでしょうか。
やがて堤防側から車を降りて集まって来る人、人、人。全員大学生?いずれにせよ4人に1人は車が運転できる世代ということです。
人数は・・・ゆうに40名を超えていました。50人?
あんなにいたのか・・・。
対するお欄さんたちのグループは15人足らず。圧倒的に不利です。
物陰で様子を見守っていた僕たち。
「修学旅行なみだなー。ありゃ」。
「ああ・・・あれ、全員組織か?」
「いや。援軍もいるんだろ」。
「右京・・・。いないな」。
「ああ。あの頭だからな。もうバレてんだろ。ゲロしたことが」。
「西条。ほんっとにサンタ作戦やるのか?」
「え?やるよ。そのため準備してきたんだぜ?」
「つ、通じるかなぁ・・・・」。
「うーん。相手、お姉ちゃんだとばっかり思ってたからなぁ。でもせっかく森田つくってくれたし。やろ!」
西条くんと僕は保育園で借りたサンタ服です。
他のメンバーは全員、サンタの帽子をかぶっていました。
というか、かぶらされていました。森田くんがせっせとつくっていたのはこの「サンタ帽」だったのです。
「お前ら、弱いのは3人ずつ集まって一人をやれ。相手てごわいからな。武器、持ったな?」
「ああ・・・」。
「よっしゃ。行くか」。
「おお!」
ちょうど堂島たちのグループが徒党を組み、お欄さんたちと対峙したところで
「ちょっと待ったーーーーーー!」
「あん?なんだ?」
振り向く堂島たち。
「お前ら。俺らの学校で好き放題やってくれたようだな」。
「ああー。お前が西条ってやつか。右京から聞いてたよ」。
まったく動じる雰囲気がありません。
「それで西条。なんだってサンタクロースなんだ?」
「お前ら。引くっていうなら許してやんねーでもないぞぉ。見ろ!この人数を!」
僕たちはサンタ帽をかぶった者10名が前に出ました。その後ろには・・・
のっぽさん部隊が、ひとり5つずつのサンタ帽を帽にさしただけのものをずらりと並べていました。
そうです。西条くんは、これで僕たちを大人数に見せよう、としたのです。
角度によっては、50人くらいに見えないこともないのです。が・・・・。
帽子だけが見えるなどという微妙な高さが演出できるわけもなく、
「なにやってんだ?お前ら?帽子持って・・・」
バレバレ・・・。
「ありゃ・・・。バレてる」。
「あったりまえだろうが・・・・・」。
「まぁ。いいや。行こうぜ」。
帽子作戦をあきらめ、お欄さんたちの前に集まる僕たち。
「おっかしーなー。張飛も秀吉もうまくいったのに・・・」。
バカ・・・・。そりゃ軍旗だろ?
「お前ら高校生風情が、僕ら大学生にかなうと思ってるのか?」
「そんなことやってみなきゃわかんねぇ。おい」。
孝昭くんが森田くんから瓶を受け取ると、おもいっきり相手側に投げつけました。
ボンッ
そうです。森田くん特性のニトログリセリン。
突然の飛び道具。さすがに相手はびっくりしてざわついています。が、
やはり堂島は動揺する雰囲気がありません。
「お前たちがへんな薬品使うってのももう聞いてたんだよ」。
首だけでなにごとか仲間に合図する堂島。
グループのひとりがそれにうなづくと、車のほうへと走って行きました。
そして・・・・・。
「!」
「え!恵美ちゃん!」
その男がつれてきたのは、制服姿の恵美ちゃんでした。
「お前たち。この子知ってるだろ?」
「くっ!大学生にもなって人質かよっ!きたねーぞ!」
「人質?人聞き悪いねぇ。この子は好きで来てるんだよ。ねぇ?」
やがて恵美ちゃんが叫びました。
「そ・・・。そうよ・・。わたしい 好きでここにいるのお。だからー、かえって!」
「え、恵美ちゃん・・・」。
「かえってー。おえがい。森田くん!かえってー!」
なんという、ことでしょう・・・。
恵美ちゃんが無理矢理その台詞を言わされていることは間違いありませんでした。
まずい・・・あいつら頭も切れる・・・・。
「どうすんの?西条?」
堂島・・・・。
森田くんが叫びました。
「恵美ちゃん!僕は・・・僕は・・・君を守るって!決めたんだ!」
「森田・・・くん・・・・?」。
聴こえなかったのか、恵美ちゃんは困った顔をしています。
「恵美ちゃーーーーーーん!僕はーーー・・・君をーーーーーー」
「まもりたい!」
森田くんは耳の不自由な恵美ちゃんに聴こえるよう、せいいっぱいの大声で叫んでいました。
第29話へどうぞ!いよいよ絶対的不利な決戦開始!?
「あんたらだね。うちの子をかわいがってくれたのは」。
「ふん。2枚刃のお欄かぁ。初めて見るな。噂よりは美人だなぁ。なんだったらお前、可愛がってもいいんだよぉ?」
なめきったように高い声で話す堂島。
ちなみに「2枚刃のお欄」は、お欄さんの通り名で、10円玉を2枚の安全剃刀の刃ではさんだものを武器にしていることから言われていました。この「武器」で顔を切られると、縫合のしようがないため、一生傷が残ると言われ、恐れられていたのです。
「ヘドが出るねぇ。覚悟はいいかい?堂島」。
「はぁ?覚悟すんのはお前らのほうだ」。
やはり。仕組んでいたか・・・。
まわりを見ると、河川敷沿いの堤防の道路に、たくさんの車が縦列で駐車していました。
10台以上・・いえ。15、6台もあるでしょうか。
やがて堤防側から車を降りて集まって来る人、人、人。全員大学生?いずれにせよ4人に1人は車が運転できる世代ということです。
人数は・・・ゆうに40名を超えていました。50人?
あんなにいたのか・・・。
対するお欄さんたちのグループは15人足らず。圧倒的に不利です。
物陰で様子を見守っていた僕たち。
「修学旅行なみだなー。ありゃ」。
「ああ・・・あれ、全員組織か?」
「いや。援軍もいるんだろ」。
「右京・・・。いないな」。
「ああ。あの頭だからな。もうバレてんだろ。ゲロしたことが」。
「西条。ほんっとにサンタ作戦やるのか?」
「え?やるよ。そのため準備してきたんだぜ?」
「つ、通じるかなぁ・・・・」。
「うーん。相手、お姉ちゃんだとばっかり思ってたからなぁ。でもせっかく森田つくってくれたし。やろ!」
西条くんと僕は保育園で借りたサンタ服です。
他のメンバーは全員、サンタの帽子をかぶっていました。
というか、かぶらされていました。森田くんがせっせとつくっていたのはこの「サンタ帽」だったのです。
「お前ら、弱いのは3人ずつ集まって一人をやれ。相手てごわいからな。武器、持ったな?」
「ああ・・・」。
「よっしゃ。行くか」。
「おお!」
ちょうど堂島たちのグループが徒党を組み、お欄さんたちと対峙したところで
「ちょっと待ったーーーーーー!」
「あん?なんだ?」
振り向く堂島たち。
「お前ら。俺らの学校で好き放題やってくれたようだな」。
「ああー。お前が西条ってやつか。右京から聞いてたよ」。
まったく動じる雰囲気がありません。
「それで西条。なんだってサンタクロースなんだ?」
「お前ら。引くっていうなら許してやんねーでもないぞぉ。見ろ!この人数を!」
僕たちはサンタ帽をかぶった者10名が前に出ました。その後ろには・・・
のっぽさん部隊が、ひとり5つずつのサンタ帽を帽にさしただけのものをずらりと並べていました。
そうです。西条くんは、これで僕たちを大人数に見せよう、としたのです。
角度によっては、50人くらいに見えないこともないのです。が・・・・。
帽子だけが見えるなどという微妙な高さが演出できるわけもなく、
「なにやってんだ?お前ら?帽子持って・・・」
バレバレ・・・。
「ありゃ・・・。バレてる」。
「あったりまえだろうが・・・・・」。
「まぁ。いいや。行こうぜ」。
帽子作戦をあきらめ、お欄さんたちの前に集まる僕たち。
「おっかしーなー。張飛も秀吉もうまくいったのに・・・」。
バカ・・・・。そりゃ軍旗だろ?
「お前ら高校生風情が、僕ら大学生にかなうと思ってるのか?」
「そんなことやってみなきゃわかんねぇ。おい」。
孝昭くんが森田くんから瓶を受け取ると、おもいっきり相手側に投げつけました。
ボンッ
そうです。森田くん特性のニトログリセリン。
突然の飛び道具。さすがに相手はびっくりしてざわついています。が、
やはり堂島は動揺する雰囲気がありません。
「お前たちがへんな薬品使うってのももう聞いてたんだよ」。
首だけでなにごとか仲間に合図する堂島。
グループのひとりがそれにうなづくと、車のほうへと走って行きました。
そして・・・・・。
「!」
「え!恵美ちゃん!」
その男がつれてきたのは、制服姿の恵美ちゃんでした。
「お前たち。この子知ってるだろ?」
「くっ!大学生にもなって人質かよっ!きたねーぞ!」
「人質?人聞き悪いねぇ。この子は好きで来てるんだよ。ねぇ?」
やがて恵美ちゃんが叫びました。
「そ・・・。そうよ・・。わたしい 好きでここにいるのお。だからー、かえって!」
「え、恵美ちゃん・・・」。
「かえってー。おえがい。森田くん!かえってー!」
なんという、ことでしょう・・・。
恵美ちゃんが無理矢理その台詞を言わされていることは間違いありませんでした。
まずい・・・あいつら頭も切れる・・・・。
「どうすんの?西条?」
堂島・・・・。
森田くんが叫びました。
「恵美ちゃん!僕は・・・僕は・・・君を守るって!決めたんだ!」
「森田・・・くん・・・・?」。
聴こえなかったのか、恵美ちゃんは困った顔をしています。
「恵美ちゃーーーーーーん!僕はーーー・・・君をーーーーーー」
「まもりたい!」
森田くんは耳の不自由な恵美ちゃんに聴こえるよう、せいいっぱいの大声で叫んでいました。
第29話へどうぞ!いよいよ絶対的不利な決戦開始!?
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- 8章-第29話 君を守りたい(6)
- 8章-第28話 君を守りたい(5)
- 8章-第27話 君を守りたい(4)
照れる
森田くん・・・照れる
がんばれ
なんか腹立ってきますね…一人じゃ何にも出来ないくせに威張りやがって…!!
はじめまして。いつも楽しく読んでます。
3話連続続きが楽しみです。おつかれさま
そのダミーのサンタ帽ひとつひっぺはがして加勢したいっ
恵美ちゃん言わされてるんだ…かわいそう
森田君、ママチャリ がんばれ!!
森田君、心優しい騎士ですね。
森田君の精いっぱいの叫び、恵美ちゃんに届いているのか・・
こんばんは。森田くんかっこいい!
ちょっと開いてみましたが…もう眠い…。
第29話、気になりますが、明日(もう今日か)の楽しみにして寝ます;;
おやすみなさい。
あれ?? いつもの「クリックしていけ」っていう感じのボタンは??
そういえば、同じIPでも効果はあるのですか??
森田君、愛の告白?!
がんばれ、森田君
不良とはいえ女の人を50人で戦おうなんかヘドが出る
人質も使うなんて許せん
森田くんの言葉に涙がでました。。
がんばれ!森田くんっ
サンタ作戦は失敗だったのか・・・。
せっかく作ったのに残念です(TT)
でも、森田君!
その愛に涙した。
がんばれ!
大決戦だっ!
手に汗にぎる
終に決戦!!って感じがひしひしと伝わってきます。
この世のどす黒く染まった下衆野朗共を打ち砕け!!ぼく駐!!
森田君素敵だぁ。
堂島たちは本当卑劣って手ばっかり使いますね。
ここからどうなるか楽しみです。
堂島…お欄さん達相手とはいえ最低な手口…
ホント、ヘドが出そうになる(-"-;)
一人じゃ何も出来ないウンコーズめヽ(`Д´)ノ
森田クンの男らしさに比べたらこいつら全員ウンコだウンコッッ
バキュームカー持ってこぉいッッ(激違)
森田君。がんばれ。熱い男を応援すっぞ~
森田くん…
自分がこの歳の頃、
たとえば男性だったとして、
たとえば熱い想いがあったとしても、
でも…こんなに勇気は持てただろうか。
とても卑劣なコトに、
まして渦中にいるのはスキな相手で。
強い。
圧倒的に強い。
気持ちの強さに感動中。
ヤバイ・・・。森田君かっこいい。
惚れますねこれ笑笑
恵美ちゃんは恵美ちゃんで森田君を守ろうとしているのでしょうか?
痛ましすぎる、、、
堂島、汚すぎる。反吐が出る。
いや~、お疲れさまでした~・・
森田くん、「君を守りたい」って想いで一生懸命サンタ帽を作ったのでしょうね・・
お疲れさま、森田くん・・けなげだわ・・
美奈子さん、まだまだ許してはいけませんよ。こんなもんじゃあ根は絶てません。
安全カミソリを10円玉で挟んでお欄さんと同じ物を作ったら・・怖くなって捨てちゃいました。
本当に、何故人の痛みの分からない奴がいるのか・・・
森田君・・・頑張れ!!
堂島、悪だけありますネ。
人数を集め、人質(恵美ちゃん)まで取って、お欄ねぇさん相手にしても、ひるまず・・・。
頭の切れるワルって、厄介なんですよねぇ。
自分は動かずとも、手下(仲間かなぁ?)が次から次へと、色んな手を使ってくるのでしょうネ。
サンタの帽子軍団、一発でアウトでしたネ。(シリアスな場面なのに、笑わせて頂きました。)
二枚刃の○○ってどこにもいたのですね。私のkところにもいました。親しくなりたいと思いませんでしたが。お欄さんだったら考えたかも・・・。
森田君、男も見せどころです。決める時はバシッと決めましょう!
俺も男になってみたい。
あっ、俺は男ですよ、変な趣味無いですよ。男を立てたいと言う事ですから。立てる意味も違いますから!!
森田君かっこよすぎるwww
言われてみたいですね
あんなセリフ。
ぼくはきみを守りたい!!
初コメ失礼します。
も、森田君・・・。
2巻で君に出会ったときからやっぱ君はカッコいいと思ってましたよーー!
いやしかし、本当に森田君の勇気、素晴らしいです。 今更だけどね、コメントするの。
森田君のこと好きだったけど、君の恵美ちゃんに対する勇気を見れた今のほうが、もっと好きですー!
小学生の息子と良く話してます。
「悪い人は頭も悪ければいいのにね」 って。
堂島達はこれだけの数の人と車を揃えていたということは
お欄さん達を何処かへ連れて行くつもりだったのでしょうか。
えげつない男達です・・・
森田さんは一体何個のサンタ帽子を作ったのでしょう?
相当大変だったに違いないのにその苦労は報われないの?(T0T)
お欄さん達が全員サンタ帽を被って 「カタリーナ」 でもてなしてくれるとかぁ~