ぼくたちと駐在さんの700日戦争

「テメーはやんねーのかよ？」
久保一族でも、一番新しく参加したショウイチが僕に言いました。

すると、

「そいつはちがうぞ！ショウイチ兄！」
久保くんを皮切りに、
西条くんや孝昭くん、河野くんまでが、いっせいにかばってくれました。

「コイツはやんないほうがいいんだってー」
「弱すぎてかえってジャマだってー」
「後ろで吠えててもらったほうがいいんだってー」

いっせいにかばってくれました・・・。

「うう・・・かばってくれてありがとな・・・・。みんな」

「ど～～いたしまして～～～～♪」

ショウイチあに。
「そっか。そんなにジャマなんじゃしょうがねぇなー。なんでいるんだ？」

存在意義まで問われる始末・・・。

すると久保くん、
「コイツは弱いけど、コイツがいると勝てる！」

「・・・・あ～～～～～～～！」

ご理解いただけたようです。

「おまじないみたいなもんか？」

ちがうわっ！

「うーん。そうだなー。近いかなー」

近くねーよ！久保ぉ！

「じゃぁー、お地蔵さんみたいなもんだな？」
「あ。そうそう。そんなもん」

・・・・・・。

お地蔵さんがいると、ケンカは勝てるのか？？？

「賽銭。いる？」
「いりません！手を合わせないでください！」

爆音はホテル街の方向からです。
やはりあのチームに間違いありません。

しかし。ある程度したところで暴走族よりも、大きな音がし始めました。

　コケーーー！

「あ。めざめた！」

　コケーーー！　
　コケーーー！　
　コケーーー！　コケーーー！　
　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！
　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！
　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！
　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！

「うわぁ・・・ニワトリうるせ～～～～～～～」
「朝だからなー」

実は、別働隊＝菊池さんたちブラックエンペうーの面々は、ラブホテル街と、山からの一本道にニワトリとその餌を道路にまき散らしていたのでした。

その数、200羽！それぞれ100羽です。

　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！
　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！
　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！
　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！
　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！
　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！
　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！
　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！

そりゃあ道路に100羽もニワトリがいれば、車は通れません。

「あれ、全部、菊池んとこの？」

「たぶん。菊池さん、ニワトリ、兵隊で使いたいって言ってたしー」

願望は叶えました。

「だいじょうぶ。ニワトリ安いから」

そう。繁殖力の高いニワトリは、あらゆる家畜の中で最も安価。
（だから卵は物価の優等生なわけですね）
ヒヨコに至っては、わずか50円！アンジェリーナは150円もしましたが、例外的高級品なのです。

それでもGTOで詐欺した修理費より、はるかに安い(当時)、ニワトリ200羽。

これが朝が来ましたので、いっせいに目覚め、道路にまかれた朝食を食べ始めたのです。

　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！
　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！
　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！
　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！

こうなりますと、
「ラブホテル宿泊者には、たまったもんじゃないだろ？」
「だよな～」

で、当然、あっちもこっちも「通報」。
ラブホテル街は大騒ぎのはずです。

「暴走族が出た」などという通報があっても、来るのは交機からパトカー1、2台がせいぜい。
なにもしてくれません。(←本当）
が。膨大な数のニワトリが道路に放れている、となれば、話はまったく別です。
それも200羽ともなれば、交通機動隊の管轄を超え、近隣の交番には総出動がかかります。
ニワトリは暴走族とちがって通り過ぎたりしないからです。

「前に高速で、ニワトリ運んでたトラックが事故おこした時、パトカー20台くらい集まってたもん」

それが「200羽」ですから。

「あ、ほら！来た来た！」
「あ、ホントだ」

あっちにもこっちにもパトカーの赤色灯が！

「警察えらいなー。暴走族よりずっと早い」

四方八方からパトカーが来れば、暴走族も「見物」の騒ぎじゃありません。
きっと族は『暴走族掃討作戦』かなんかと勘違いするはず。

「絶対ここには集まれない」

ショウイチあに。ここでようやっと僕がいる意味がわかったようで、

「お地蔵さんじゃなかったんだ・・・・」
「わかりましたか？」

「賽銭返せよ」
「もらってませんって！」

言った通り、やがて暴走族の音は静まり始め、パトカーの赤色灯が空を染め出しました。

「早朝だからサイレン鳴らさないんだなー」（←本当。ニワトリ程度では深夜にサイレンはならさない）

「すごいすごい！」
「赤色灯で空が赤くなるって初めて見たよ～～～」
「出動要請される警察も災難だな～～～」

「なに言ってんの。ニワトリ捕まえに来て、暴走族大量検挙できるんだからラッキーだろ？」
「あ。大手柄だ？」
「そうそう！今年、T署は検挙率トップじゃないかなー」

だってここいらの族、全部ですから。
きっと表彰もんです。

　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！
　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！
　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！

それでも止まないニワトリの咆哮。

「災難なのは、ラブホテルに泊まってるカップルくらいかな？」

「あ。そっちは別にいいや」
「うん。当然のむくいだ」
「いい思いしやがって」
「ザマミロだ」
ラブホテル宿泊者には、まったく反省も同情もしない（できない）男子高校生でした。

赤色灯が複数になるにつれ、暴走族の爆音はほとんどしなくなりました。
ニワトリが騒ぎまくってるので、「静寂」とはちがいますが。

　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！
　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！
　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！　コケーーー！

「これで見物の族は来ない。来るのは頭んとこだけ」
「来っかなぁ。この騒ぎでー」

「来るよ。売ったケンカだもん。メンツにかかわる」

が、4輪は、ニワトリ検問を突破できないでしょう。
2輪では、砂浜は走れません。

したがって、

「だから全員浜辺を走って来るはず・・・・あ、ほら！来た来た！」



ひとり、ふたり。
検問(？)を逃れた族メンバーたちが、バラバラとやって来ました。
待ち合わせをしてまとまる余裕はないのです。

「そいじゃー、銀河戦隊のみなさーん。銀河系守ってくださーい」

「おお！」
「まかせろ！」
「ギッタギッタにしてやる！」

「おらあああああああああああ！」
「銀河系はみんなのものだああああああああああ！」

銀河戦隊。バラバラに来るひとりふたりに集団で襲いかかります！

「うわぁ～～～～、きったね～～～～。どっちが悪だかわかんね～な～～～～」

「いいから西条も行けよ。孝昭に全部とられるぞ？」

孝昭くんは、たった2人相手にまったく遠慮なし！

「あ、ほら。次が来た！出番だぞ！」

「よっしゃあああーーーーーーーーー！」

西条くん！参戦！


＜本日2羽アップ。じゃない、2話アップ。続きは夜です＞


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