ぼくたちと駐在さんの700日戦争

＜仮アップ。変更されるかも～＞

弥生ちゃんは、西条くんが「足長おじさん」の弟弟子であることは、すでに知っていました。

「正直、西条さんのことは驚きました」

それはそうでしょう。
ある意味で、神様が引き合わせた2人と言っても過言ではありません。

それで西条くんを信頼したのはわかりましたが、

「久保は・・・？どうして？」

ここがわかりません。
僕のことは、まったく鼻にもかけていなかったのに、久保くんには連絡を許しました。

「ああ・・・久保さんは・・・・おじさまに似てらしたので」

「え！それだけですか？」

「ええ。ああいう見てくれの人には、悪い人がいないんだなぁ、って」

「弥生さん。それは大いなる間違いです」

久保くんはともかく、ああいう見てくれのヤツは、一般的には、たいてい悪いヤツです。

弥生ちゃんは、やはり日曜日には、菊池さんを見舞うつもりだったようです。
情報はもちろん、「見てくれで信頼されている」久保くんから。

となれば・・・。

「小川」との遭遇は避けられません。



明日が小川との決着の時・・・・。

延びれば延びるほど、こちらの正体が明らかになります。


さっそくジェミーに連絡。
「ジェミー？今日、お前んち行っていいか？」

「うん。そいでさぁ。早苗さんのブラウス、あるよねぇ？」
（時系列として、すでに5章後）

”ありますけど・・・なにするんですかぁ？おイタしないですかあ？”

「おイタしないから・・・。今日、それ着て待ってろ！」

”やっぱりおイタじゃないですかぁ”

「ちがうっちゅうに！」

次にチャーリー。
「明日、午後2時まで来てくれ。復讐するぞ！」

”待ってましたあ！”


そして一番かんじんなのは菊池さんです。

「菊池さん。入院してるだけで儲かるって、交換条件あったでしょ？」

「そ、そんなもんはー・・・・！」

「”弥生さんが来たら、桜庭に連絡すること”、じゃないですか？」

「な、なんでわかるんでぃ!?」

そりゃそうです。
いくら病院とグルっても、タダでそんな危ない橋を渡るはずがありません。

「あのねぇ。菊池さんをやったのも、桜庭なんですよ？」

「え！どういうこった？」

そして親切ぶって、入院中の「休業手当」かなんかの名目で保険をおろします。
桜庭の懐は、まったく痛まず、それどころか手数料まで入ってきます。

「くっそぉおおお！じゃ、俺はまんまとお？」

「そういうことです。とにかく、その連絡番号、教えてくださいよ」

「ああ。これだ」

名刺とは別のメモを渡す菊池さん。

「ちっきしょおおおお！親切なふりしやがってえええええ！」

今さら悔しそうです。

「菊池さん。仕返ししたくありませんか？」

「もちだぜぃ！あんにゃろおおおお！」

「でも相手はプロのチンピラですよ？」

「うううう・・・」

　弱い・・・・。

「で、もうひとつお願いがあります」

「なんだ？」

「早苗さんに、お詫びの電話をかけてください」

「早苗にぃいい？」


　＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

そして、とうとう日曜日。N市。

僕は、ひさびさに「小川」に電話をかけました。

が。日曜なのに誰も出ません。

「やっぱりな・・・・・」

駐車場には、あのグロリアが停めてありました。
菊池さんから「弥生さんが来た」連絡を受けたのです。

「チャーリー！グロリアだ」

「こいつかぁ。俺のDTをーーーーーー」

「開けられる？」

「まかせろ！」

（8巻にも書いてあるように、当時の車はL型の針金があれば簡単にドアを開くことができた）

一方、病院には、早苗さんが、手下をゾロゾロ連れてやってきました。
総勢25名。
これだけ女子高生の団体さんが行けば、小川も、どれが「弥生ちゃん」かはわからないでしょう。

「菊池は病室にいんのかい？」

「ええ。モチロン」

実は昨夜、僕はようやっと早苗さんに謝罪にうかがったのですが。

← ← ← ←

「テメーぇ、菊池にあることないこと！」

「すいませんでした・・・・。菊池さんが、あんまりに早苗さんファンなんで・・・つい・・・・」

「アイツにも困ったもんだなぁ・・・。いくらアタシが見目麗しいからってなぁ」

「え？」

　ドスッ！

「そこは同意するもんだ」

「は・・・はい・・・見目麗しいです・・・」

強制的美貌。

「菊池さん、なんか早苗さんのヘンな写真もイッパイ持ってました」

「ヘンな写真だあ？」

「ええ。なんて言うか、早苗さんのあられもない写真っていうか・・・言うのも恥ずかしい写真なんですけど・・・。これです」

「あーーーーー！な、なんなんだ！これ！」

「えっとぉ・・・早苗さんだと思います」

実は制服だけ。中身はジェミー。
あとは西条くんのコレクションのまた撮り。

「だ、誰が撮ったんだ！そんなもん！なんで菊池が持ってんだ！」

「菊池さんが持ってるヤツは全部とりあげてきました。でも、なにしろ、ネガまでは持ってないので・・・・今後もばらまかれるおそれが・・・・」

「ネガは誰が持ってんだ？ああああん？」

「どうもそういうのを専門にしてるチンピラらしくって。あ、毎日、菊池さんとこ来ますよ？ネガ持って」

「なんだとぉおおおおおおお！ギッタギッタにしてやる！」

「でも～。相手はチンピラです」

「チンピラやらヤーさんやら怖くって、北女の番ははれねーよ！」

「あ。そうですか？じゃ、ぜひ～」

→ → → →

そして駐車場。

「ち！あんなにゾロゾロいたんじゃ、どれが弥生なのかわかりゃしねぇ」

戻ってきた小川がボヤきながら、グロリアのドアを開きました。
西条くんが言ったとおりの「チンピラ」です。

そこへ、
「おい。アンタが桜庭か？」

「あん？なんだお前？スケ番がなんの用だ？」

「アタシのネガ、返しな？でないとただじゃおかないよ？」

「ネガ？なんこった？」

「へ。ばっくれると思ったぜ。おい、お前ら、車、さがせ」
「へい！」「へい！」「へい！」「へい！」「へい！」「へい！」「へい！」

「あ！姐御！ありました！トランクに、こんなに！」
「間違いありやせんぜ！姐御！」

「え・・・い・・・いや・・・し、知らねーぞ！そ、そんなもん！」

グロリアには、当時の日産車で唯一、トランクリッドオープナーが標準でついていました。
そう。菊池さんがGTOの「チューンナップ」としてつけた、トランクを開く装置。
従って、ドアさえ開けられれば、トランクを開くことができました。
ネガをしこんだのは、もちろんチャーリー。

「問答無用だあ！」

「や・・・や、やめてくれ！誤解だ！誤解だって！」

「おまえら。やっちまいな！」

「やめてくれーーーーーーーーーーー！」

その後、桜庭さん、こと、小川さんが、どのような血祭りにあげられたのかは、現場にいなかったのでわかりません。

とってもお気の毒ですが、今までさんざんダマしてきたのですから、たまにはダマされるのもいい経験だと思います。


「ふぅ・・・・こっちの顔、ひとりも見られずにやるってのも大変だ・・・」

「早苗さん、大丈夫かな？」
と、チャーリー。

「大丈夫だよ。あの程度のチンピラ。早苗さんの敵じゃないってー」

だから女だてらに番などはれるのです。

「よし！次はキジマタクロウだ」

「わかんのか？」

菊池さんから受け取った電話番号は、N市内のもので、桜庭の名刺にあったT市内の番号とはちがいました。
当然です。N市からT市は3時間。
菊池さんから連絡を受けてから来たのでは、「弥生さん」にはとうてい会えません。

つまり小川は
「N市内にグルがいるってことだろ？」

このN市内の電話番号こそ、キジマタクロウ。

「いっきにカタ、つけよう」



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