ぼくたちと駐在さんの700日戦争

＜本編がいいとこにさしかかってるので、実験5は明日に順延します＞

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「おじさま。なにからなにまで、ありがとうございます」

「まー、どってことねーよ。ちと遅かったくらいかもなー」

「いいえ。おじさまがいなければ、今頃どうなっていたことか・・・・」

「おじさまって、やめてくんね？こう見えて俺、若いから。これでも享年27だから」

「享年・・・・・・・」

「あ。かぞえでな？」

「享年は・・・・・そういう問題じゃないと思います」

「え？そうか？さすが高専！頭いいなー」

「そういう・・・問題でもなく・・・・」

「けどよ。タダほど高いもんはねえってーからな。それなりの見返りはしてもらうぜ？弥生ちゃんよー」

「・・・・・それは・・・・心得て・・・・おります・・・できるかぎりのことは・・・・」

「あ？心配すんな。アンタ、女だからなー。女にしかできねぇご恩返しってのがあっからよ！」

「・・・・・・・・はい・・・・」

「じゃ、さっそく今からでも・・・」

「え！今・・・・ですか？」

「俺がつくった新作ケーキ、喰ってみてくれるか？」

「はい？」

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示談屋というのは、ほぼ100%、その筋との関わりがあります。
事故の交渉が出来る程度には顔がきくわけですが、やっかいなのは、この事故が運転手をすり替えた「詐欺」であることでした。

詐欺の刑事上の時効は、発生から7年。
1966年発生なので、時効は1973年。

「弥生さんちのスタンドがつぶれた頃だ？」

「そういうこった」

「じゃ、スタンドつぶしたのも示談屋？」

「そこまではわかんねーけどよ。都合悪かったことは確かだろ。どっちにしろ街金に手ぇ出せば永くねーよな」

しかし。
刑事上の時効が失効しても、民事上の時効は「詐欺に気づいてから5年、または詐欺があってから20年の早い方」。

ケンイチ兄さんは、この詐欺に気づいてからすでに5年経過していました。
街金をとっちめていますから、「詐欺に気づいた時期」は明確。

ところが、
「スタンドはそうじゃねーだろ？」

「あ。そうか！気づいてから5年ってことはー・・・。ひょっとして今年あたり？」

「そういうこった。スタンドにとってはなー」

ここで、弥生ちゃんと、なんとしても示談屋を探し出したいケンイチお兄さんは、奇妙なことで利害が一致します。

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「なんかよ。弥生ちゃん見てると、生き別れた妹、思い出すぜ・・・・」

「おじさま、妹さん、いらっしゃるんですか？」

「あー。ゆき、つってな。気は強いが。あ、あと腕っぷしも強いけど。あ、あとナマイキだけど。あ、あとアニキの前で平気でハナクソほじくるけど」

「その・・・・似てるってことは、私もそのように映っていると・・・？」

「あ！いや、そんなことはねぇ！アンタぁ、ステキだぜ！俺の前でハナクソほじくんねぇし。ってか、女ってなぁ気の毒だよな。ハナクソもおもいっきりほじくれねーってのはなぁ。え？」

「ええ・・・・まぁ・・・・」

「こうよー、ハナクソはこう、おもいっきりほじくるとこによさがあるっつーか・・・こう・・・」

「あの・・・・わざわざやっていただかなくても・・・やりかたはなんとなくわかります・・・・」

「あん？そうかあ？まぁ、それでもよ。たったひとりの妹だぁ。そりゃかわいかったぜ」

「そうですか・・・。生き別れは・・・おつらいですね」

「ああ・・・。いまごろ、どの空の下で、なにしてんだか・・・・グスン！」

「最後は・・・いつ頃・・・？あの、お別れになったんですか？」

「最後は・・・。あ。夕べの晩メシが最後かな？」

「おじさま？それ・・・生き別れとは言わないのでは・・・・？」

「え？そうか？」

「ええ。一般人は『同居』って言います」

「そうか？カタギの世界は複雑だな」

「複雑ってわけでも・・・・」

「まぁ、アンタも早く親と暮らせるといいなぁ」

「はい・・・・」

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「だからよ。兄弟子が守ろうとしたもんをよ。弟弟子がほっとくわけにゃいかねーだろ？」

「そういうことだったのか・・・・」



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