ぼくたちと駐在さんの700日戦争

「駐在さん、教えてください。あの時、西条とどういう話されたんですか？」

駐在さんは、T署を訪ねる際、「西条だけだ」と言って、僕たちの同乗を拒みました。

この時以降、西条くんは「ケンイチにいちゃん」について、まったく触れなくなりました。
つまり、この時の車内での会話に、現在、西条くんが単独行動してA町を訪ねている理由があるはずなのです。

「あ？ママチャリに教える筋合いじゃないだろ」

「でも・・・・・」

「友達思いはけっこうだが。お前と西条じゃ、事情がちがう」

「そんなことわかってます・・・」

わかってますが。

僕が肩を落としていると、

「西条からは・・・・聞いてないのか？」

「ええ・・・あれから、ひとことも」

「ひとことも・・・か・・・・・・」

「はい・・・・・・」

駐在さんは思い悩んだあげく、

「しかたない・・・・。じゃ、特別だぞ？」

「ほ、ほんとですか？」

「ああ。ただし他言は無用だ」

「は、はい！承知しています！」

「あの日、俺が西条にパトカーん中で教えたのは・・・・・・」

「ええ・・・・」


突然、声を潜めると、

「あのな・・・・」

「はい・・・・・」

僕の耳元で、

「女って×××××××××のとき××××××××××××なのって、知ってるか？」

「！」

なんだそりゃ！

誰が西条にしたエロ話教えろって言った!?

「え！これが聞きたかったんじゃないのか？西条はよろこんでたぞ？」

バカヤロ～～～～～～～～～～～～～

この最低警察官がぁあ！

高校生パトカーに乗せて、なにエロ話教えてるんでしょうか？

「え？西条との会話つったらそれしかないだろ？」

「なに言ってやがるーーーーーーーーーーーー！」

怒りにまかせて飛び出した駐在所。

しかし、このおかげで、奥さんの劇団参加のことを、言い出せませんでした。


　しまった・・・・まさかエロ話だとは思わなかった・・・・


が。

この日、駅前では

「キミ！署名してってくんないかな!?」

署名運動をやっていて、

「僕16ですけど、かまいませんか？」

「かまわないよ!!」

やたら勢いがあります。

ペンを取って気づきました。

「署名って、こんな田舎でも集まりますか？」

「なかなか集まらないが、誠心誠意やっていればね！結果はおのずと着いて来る！」

誠心誠意か・・・。

なるほど。

そうだ。誠心誠意だ！

今までの僕が間違っていました。
いつも小細工を労して、なかば詐欺のようにして、いろいろな事をやって来ましたが。

グレート井上くんや、この人の言う通りです。

目からウロコが落ちるようでした。

「誠心誠意」

こんないい言葉を。僕はなんてぞんざいに扱って来たことか・・・・。

そこで、

「もし、僕が50人分の署名を集めたら、ひとつ頼み事を聞いてくださいますか？」

「ああ！もちろんだとも!?」


僕は今までの自分を反省しつつ駐在所。
もちろん、ここで2名の署名を確保するためです。

「駐在さん。このかたが署名してほしいそうです」

「んあ？」

「ついでに奥さんも、お願いできませんか？」

署名運動家に協力する僕です。

「えっと・・・なんの？」

それは中ピ連の女性運動家のかたでした。


＜中ピ連＝『中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合』1972年、榎美沙子が中心となって結成。ピンクのヘルメットに♀マークで一世を風靡し、男性に恐れられた女性開放運動家たち。元は『女を泣き寝入りさせない会』で、後に政党『日本女性党』を立ち上げる＞

「中ピ・・・・」

「女性解放に署名お願いします!!」

勢いあります。

「は・・・・はぁ・・・・・」

せっかくなので、このタイミングで、

「ところで、奥さんに、劇団で演劇やってもらいたいなぁ、なんて思ってるんですけど？」

「んあ？？？？」

「ダメですかね？駐在さん」

「そ、そんなの・・・・・・」

僕はそんなでもなかったのですが、
中ピ連のかたも、一緒に答えを待ってくださいました。

「・・・・・・ダメって・・・・ことはない・・・よ？」

「ありがとうございます！」

誠心誠意言えば、通じるものです！




人気ブログランキング｜ブログ村ランキング

　突然ギャラリーへ→

　▲後編目次へ

関連記事

• 銀河戦隊クボレンジャー 第78話
• 銀河戦隊クボレンジャー 第77話
• [コメント欄でツィッターしてみよう24]