ぼくたちと駐在さんの700日戦争

さて。器ができたのですから、中身です。

今までのパターンから考えて、グレート井上くんはケンもホロロ・・・・

と、思えばさにあらず。

彼は幼い頃から劇場に連れて行ってもらっていたため、メンバーでは唯一、演劇に明るいのです。

「ふうん。おもしろそうな話だね」

ほら！

それどころか、

「その弥生さんって人。英語劇に入れられないかな？」

とかまで言い出すほど。。

「だって、すごい頭いいわけだよね？たぶん理恵より」

「ば、ばか言え！他校だぞ？」

しかも高専。すでに20歳です。

「そうか・・・。だって、このままだと英語劇は、ボロ負けまちがいないから」

「そ・・・そうなのか？」

「だって久保がいるから」

たいへんわかりやすい説明、ありがとうございます！

「で、なにを演りたいんだって？『リア王』？『ファウスト』？『グローリア』？」

う・・・・・。

「えっと。『カエルの王子様』」

「・・・・・なんだって？」

「『カエルの王子様』」

「元気でな」

「待て待て待て待て！」

ようやく引き止めまして、とりあえず脚本を見てもらうところまでこぎ着けました。

「ふうん・・・・よく書けてるね・・・相当やってる人だ」

「だろ？」

「うん。主演のカエルはけっこうむずかしいね」

「あ？そう？」

「これ、誰が演るの？」

「えっと・・・・久保」

「・・・・。楽しい思い出をありがとう」

「待て待て待て待て！」

よくはわかりませんが、英語劇における久保くんは、よっぽどひどいようです。
まぁ、なんとなくはわかりますが。

「久保になど、できるものか！」

「そ、そう？」

「うん。弥生さんって人も困ってると思うよ？」

「そんなにひどい？」

「そうだなー。例えて言うなら・・・『巨人の星』に、いきなり『カツオ』が出て来るようなものだ」

「カツオってサザエさんの？」

「そう」

わかりやすい！
そりゃひどい！


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＜さぁ～て来週のサザエさんは？

『カツオ星一徹に会う』『一徹ムチャ言うな』『カツオ明子姉ちゃんのほうがいいや』の3本です！＞

「ん？『ベルサイユの薔薇』にイクラちゃんかな？わかる？」

”おお、オスカル！”
”♪ハ～～～・イ～～～～”





「・・・・ごめん・・・。ちょっと想像力がおっつかない・・・」

とにかく、かなり「場違いにひどい」ことはわかりました。

「演劇をなめるなよ？まして劇団だろ？」

「う・・・・うーん・・・・」

「うちの演劇部がコンクール優勝したことあるか？」

ありません。一度も。
バリトンくんが「音響賞」をもらったことがあるだけ。

「それよりもずっと本気でやってるわけだから」

「なるほど・・・・」

「久保をはずせるなら、考えてやってもいいよ？」

「え？そう？」

「ああ。演出くらいなら」

とは言うものの。
どうしよう・・・久保、あんなにはりきってるのに・・・。

しかし、久保くんが演劇がヘタ、というのはわかります。
だって、小学校時代から、学芸会すら出た記憶がありません。

いや。正確には一度だけあります。小2の時で、役どころは「雲D」でした。
流れていくだけ。
それも、久保くんだけが速度がちがって、先生にしこたま怒られていたほど。
ちなみに、その時の主役が僕でした。

「王子様を女にすれば・・・・」

というのがグレート井上くんの案でしたが。
それでも、主役をはれるような女性なんていません。

だって、井上くん談によれば、「我が校の演劇部程度ではお話にならない」。

「夕子ちゃんは？」

「バカ。中学生あてにするな」

まぁ、そりゃそうです。

途方にくれて、それでも演劇部を訪ねておりますと。

これが意外や意外な人物が、本格的演劇経験者だったのです。
しかもプロからのスカウトが来るほどの！

「駐在さんの奥さんって、劇団にいたらしいよ？」

「マジっすか!?」



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