ぼくたちと駐在さんの700日戦争

キシュルルルルル………

ブロオオオオ・・・・

GTOのエンジンがかかりました。

「いや～、わりぃわりぃ！世話ぁかけたなぁ！」

エンジンがかかったとたん、態度のどデカい菊池さん。

「どーだ。お前ら、なんだったらアマンダに入れてやってもいいぜぃ」

「おことわりしやす」
間髪入れず断られました。

孝昭くんのバイクの仮修理も終了し、僕たちも小学校へ。
という段になって、

「そう言や河野は？」

千葉くんにたずねましたが、
「あーーー。俺の後ろ走ってたような気もしたんだけどなー。孝昭知ってる？」

「さぁ・・・・・？」

すっかり存在の薄い河野くん。
これで、ショウジと合わせて、行方不明が2名。

が、

「そいつって、単コロか？」
と、頭。

「え？見かけました？」

すると部下たちが、口々に、

「あーーーーーーーーー！」
「そう言えば！」

「言われてみりゃ、マークIIみたいなの、おっかけてる単車がいたわ！」
「あーー、アイツかぁー。いたいた！あの車かぁ！」

「え！」

どういうこと？

孝昭くん、
「河野のヤツ、先回りしようとしたんだな」

「あ。なるほど！」

チェイスをする場合、最後尾になった者は、同じ道を遅れて追いかけるよりは、先回りを模索するのが常道です。
かつて孝昭くんの配下だった河野くんは、そこをよくわかっていたのです。

「って、ことは・・・・・・」
「今度は河野がやばいってか!?」

僕たちは、すでに疲弊しきっていました。

”知らない場所は土地勘のあるヤツが有利”

しかし、暴走族があれだけ空ぶかししても、来なかった、ということは・・・

「河野は深追いするタイプじゃねぇけどなぁ」
と、孝昭くん。
確かに。僕もそう思いました。

「とにかく急ごうぜ！」

「どのへんで見かけました？」

頭、
「俺たちが来た方向へ走ると、ちょっとしたラブホ街がある。そのあたりだった」

浜辺は、海帰りのカップルが狙えるせいか、たいていラブホテル街がありました。
また、そこを通ると、カップルのジャマができるので、暴走族もよくコースに入れていたのです。(←本当)

「よし！西条、行こう！そこのラブホテル街だ！」

「え？お前と？いやぁ～～～～、ちょっと、考えさせてくんない？」

「いや・・・・」

なにを考えるって？

「いくら友達でもそこまではなぁ～・・・・・」

「いーーーーーから！早くしろよっ！」


西条くんは、今度は千葉くんの後ろへ配分。運転のうまい孝昭くんを単独にしました。
そのほうが（GTOよりは）早くたどりつける、と判断したのです。

僕は例によって菊池さんのGTO(泣)。
理由は「弱っちぃ」ので。

小学校を落ち合う場所に定めて出発です。

孝昭くん、
　クォオオオオオオオオオ！

千葉くん、
　ブオオオオオオオオ・・・

そしてUターンの切り返しに失敗し、やたら遅れた菊池GTO。

「おーらい～、おーらい～、おーらい～、はい。そこで右切って～～～、もう少し」

暴走族に、誘導までしてもらってます。
初めて見ました。バックを誘導してもらった族車。

でしたが、菊池さん、切り返しに2度も失敗したくせに、終わったとたんまた強気！

「おーーーし！おまえらぁ！ついてこーーーーーぃ！」
「え？」

「おおおーーーーーーーーー！」
「え？」

ドドドドドドド・・・・

なんか、暴走族をひきつれて来てるんですけど・・・。
（暴走族は娯楽を求めているので、すぐにノる）

ドドドドドドド・・・・

「ラブホ街ってどっちだ？」

菊池さんには気にした雰囲気もありません。
まぁ、暴走族ですから、あたりまえなんですが。

ドドドドドドド・・・・

「あっち！少し、明るくなってるじゃないですか！」

「あ～～～～、あのへん～～～～～～、よっしゃ！」

ドドドドドドド・・・・

爆音をひびかせ、ラブホ街にさしかかったGTO&暴走族でしたが、

100mほど前方に、1台のジェミニ発見。


＜ジェミニ＝いすずが乗用車を生産していたころの代表モデル。ベースはオペル＞

「おおおおおお？」

とたんに、菊池さんが、突如興奮モードに突入。

「あれってよ！カップルだよな！な！絶対これから入る場所さがしてるとみた！」

「ええ・・・まぁ・・・・そうかも知れませんけど・・・」

ドドドドドドド・・・・

菊池さん。30台からの暴走族を引き連れていることを忘れ、これに没頭。

　ブウウウ・・・

ジェミニが左折すれば、

「お！こっちか？」

菊池さんも左折。

「あーーーーー！菊池さん、どこ行くんですか！」

「るせーなぁ。こっちかも知んないだろ？」

そうかなぁ・・・。

ドドドドドドド・・・・

それについて来た暴走族も左折し

ジェミニが右折すれば、

「お！こっちだ！」

菊池さんも右折。

ドドドドドドド・・・・

当然、暴走族も右折。

とうとう、

「なんでホテルまでついてくるんですかぁ！」

「いやぁ～～～、つい～～～。でも、ホラ、カップルだったろ？な？な？」

「・・・・・・・」

当然、後続もついて来て、ホテル敷地内に溢れる暴走族！

ドド、ドド、ドド、ドド・・・


ラブホテルに河野くんがいるはずもなく。
おかげで、大幅に遅れた待ち合わせの小学校到着。

「ごめんごめん、遅れちゃって・・・菊池さんがさあ・・・」

「おっせーーーーぞ！2人やられた！」

「え！誰が！」



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