ぼくたちと駐在さんの700日戦争

菊池さんは、GTOのチェックに余念がありません。
なにしろ、ほとんど地面ペッタンコな車なのに、土手なんぞ走破したわけですから、それはもうボロボロです。

「うぅ・・・エアダム・スカートがぁ・・・・！」

「スカート・・・？ああ、この出っ歯のことですか？」


＜エアダム・スカート＝フロントバンパー下に着くエアロパーツ。高速走時に車体下への空気の流入を抑え、揚力を低減する。が、暴走族のは見た目重視＞

「それよりアンジェリーナは大丈夫でしょうかね？」

「あん？アンジェリーナは150円だが、このエアダムスカートは、6万もしたんだぜぃ！あああああ・・・・」

「はあ・・・・」

現金なやっちゃなー。

「保険で直せばいいじゃないですか。車両保険には入ってないんですか？」

（自動車保険には、自分の車を直す保険はオプション設定。『車両保険』として別途になっている）

「ぁあ？違法改造分には保険はおりねーんだぜぃ！バカヤロー」

「あ。そうなんですか」

僕に当たられても困るんですけど。
ということは・・・、菊池さんの車は、ほぼどの部分にも保険はおりない、ということになります。

「人ひいたって、保険おりねー場合もあるくらいだからな！」

「ひかれた側は災難ですね・・・」
（↑自賠責はこの限りでない）

「るせぃ！それよりエアダム・・・・・」


そこに、道路の向こうからバイクのエギゾーストノート。

「孝昭のCBの音だ！」

どういうこと？

ほどなくヘッドライトの明かりが見えて、その光が僕たちを発見しました。

「よーーーー」

「西条、孝昭!?　いったいどうして？」

「見失った」

孝昭くんと西条くんがバイクを降りました。

「見失った？久保たちは？」

「わかんね。とちゅう分岐がいくつかあったから、そっち入られたかも」

「ショウジはめっけた？」

「ああ。久保の親戚ってヤツか？コケてたな」

どうやらそのロスが、さらに久保くんたちとの差を広げてしまったようでした。
孝昭くんたちは、ショウジをあんまり知りません。
仲間のような意思疎通はできません。

「しまった・・・・！じゃ、千葉とかは・・・・」

「まだ追っかけてんじゃねぇか？音はこっちからしたんだけどなー」

耳を澄ましますが、バイクの音が聴こえません。
孝昭くんが言っていた「土地勘の差」が的中しました。

「それはまずい・・・！久保たちだけじゃ負けるかも！」

たよりの西条くんと孝昭くんが揃ってここにいます。

「かと言ってなー・・・。どこいるかわかんねぇんじゃ・・・・。こっちは？」

「それがさー、菊池さんがさー・・・・土手につっこ・・・」
「ショートカットっ！」


「そう・・・土手にショートカットしちゃって」

「あーあ。ボロボロだなぁ。菊池さんよー」

「そうなんでぃ・・・。スカートが・・・・」

西条くん、しゃがみこんで、損傷したGTOを見ています。
「スカートってこれか？」

「そう、それ。もう取れかけてんの」


「・・・・・・」「・・・・・・」「・・・・・・」

「西条。なに、めくってんだ？」

「いや～～～～、スカートって聴くとつい・・・・」

孝昭（ハンパなスケベじゃない・・・）
僕　（ハンパなスケベじゃない・・・）
菊池（ハンパなスケベじゃない・・・）

「おまいらって。バカだな～～～～～～～」
菊池さんに言われてしまいました・・・。

西条（コイツには言われたくない・・・）
僕　（コイツには言われたくない・・・）
孝昭（コイツには言われたくない・・・）

「なに見えた？」

西条（エンジンに決まってんだろ・・・）
僕　（エンジンに決まってんだろ・・・）
孝昭（エンジンに決まってんだろ・・・）


「とにかく、孝昭、久保たちさがさないと！」

「タンデムじゃきびしいな」

「じゃ、孝昭だけでも先に！」

ことは一刻を急ぎます。

「わかった！」

西条くんはGTOに同乗することにして、孝昭くん単独で探すことになりました。
孝昭くんの腕前なら、なんとかなるかも知れません。

「そいじゃ、めっけたらホーン鳴らすからよ。そっちも」

「いや～～～、こっちは、ホーンはちょっと・・・・バッテリーが・・・」

改造されているのに、サッパリ役に立ちません。

「るせぃ！るせぃ！」

そこで

「そうだ！アンジェリーナ鳴らすから」

「アンジェリ～ナ～～～～～～～？」

「バッテリーはくわないから」
「言えてる」

「おまいら、人のニワトリを・・・・！」

こうして、落ち合う場所を「ショウジがこけていた場所」と定め、孝昭くんのCBが闇へと戻って行きました。

「菊池さん！僕たちも早く！」
「おお！」

西条くんが助手席です。
「けど、走んのか？これ～」

「バリバリだぜぃ！」

キュルルル！

「おお！走った！」

「バリバリだぜぃ！」

しかし、エアダムスカートが落ちかけていますので、それが道路とこすれてうるさいこと！

　バリバリバリ・・・・

「バリバリ・・・だぜぃ！ううう・・・・」

　バリバリバリ・・・・

「ホントですね」
「うるせぃ！」

　バリバリバリ・・・・

「いっそ、とっちゃいましょう！」

というわけで、西条くんが車を降りて、エアダムスカートをとることになりました。

「そりゃっ！」

　バリバリバリ！

菊池さん、
「ううう・・・・バリバリだぜぃ・・・・」

おもしろい人だ。


が、西条くんは、もともと車に弱いので、

「の、乗り心地わりぃなー、菊池さんよー」

確かに。土手を下る前より、さらに乗り心地が悪化した気がします。

「うう・・・酔いそうだ・・・・」

「え～～～～！吐くんじゃねぇぞ！テメェ～～～～～！」

菊池さん、吐かれてはたまらない、と、画期的「酔い止め対策」を思いつきました。

「そ、そうだ！いいこと教えてやるぜぃ！」

「いいこと？」

「そうだ、早苗はな～、実は××××××××××××××××××なんだぜぃ？」

あ～～～～～～こらこらこら！
勝手に教えるな！

「た、孝昭の姉ちゃんが？それ、ホントかよ？」

「それどころか、夜な夜な××××××××××××××××××」

こら～～～～～！話に輪がかかってんぞーーーーーー！

ところが、この方法が効きました！

「さ、早苗さんってすっげ！そいでそいで？」

「普段、下着は××××××××××××××××××」

「おおおおおお！知らなかったぜ！」

西条くん、まったく酔う気配がなくなりました。

　性欲ってすごい！

とか言ってる場合じゃないよ・・・・。

「でな？実は××××××××××××××××」

「すっげ！すっげ！すっげ！そいで？」

ああ・・・・・。
ひろまっている・・・・。

まずい・・・・。

「な、そうだよな？言ってたよな？」

え！ここで僕にふるわけ？

しかし、西条くんに酔ってほしくない僕は、

「そうなんだ。西条は知らないだろうが、実は××××××××××××××××」

「おおおおおおおお！するってーと、やっぱり×××××××××××？」

野郎3人のGTOは、マークIIどこへやらで、早苗さんの「空想エロ談義」で盛り上がるのでした・・・。

「バリバリだぜぃ！」



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