ぼくたちと駐在さんの700日戦争

駐在所。

「あー！ホントだ！駐在いるじゃん！」
「だから言ったろ？退院したんだってー！」

「駐在、ちっちぇ～～～～～～」

駐在さん。椅子に座ってはいるようですが、ほとんど顔と肩くらいしか見えません。
なぜなら、

「お前らが小学校の椅子ととっかえたからだろー？」

「わはははー。まさか今日から働き出すとは思わなくって」

「備品の折りたたみ椅子は？」

そう。駐在所には、備品である折りたたみ椅子と、ドーナツ椅子があるはずです。

「隠した」

はぁ・・・・・・・・・。
どうやって詫びましょう？

しかも、かんじんな事務椅子は壊してしまいました・・・・。

「なんとかごまかせ！」
「ごまかせったって・・・・」

無茶言います。

「えっと～～～～。ごめんください～～～～～～」

「よくもノコノコとーいらっしゃいーーー」

駐在さん。まだ傷口保護が続いているので、この状況下にあって怒鳴りません。
奇跡的忍耐力です。

「待ってたよー。そこに掛けたまいー」

「いえ・・・今日のとこは御礼だけで・・・・」

「そこに掛けたまいー」

「はい・・・・」「あい・・・」「はい・・・・」

なんか気の毒で、掛けざるをえませんでした。

「このちっちゃい椅子はどういうことなのかなー。ママチャリくんーーー」

「えっと・・・。傷口が開かないのには、そのほうがいいと思いまして」

「じゃーー、病み上がりの本官を思いやってー」

「そ、そういうことです！駐在さん」

「それはー、うれしーがー」

「はい」

「一度、死んでくれないかーーーー」

「か、考えてみます」

ほらみろ！バカ孝昭が！

「でーーー。ここの本物の椅子はどこやったー」

「えっと。椅子？椅子って言いますと・・・」

「君らが窃盗した椅子だよー。あーはーはー」

「せ・・・窃盗」

「さっさと出したまいー」

「それがそのー」
「ここには、もう戻りたくないと・・・」

「椅子がー？」

「はい・・・・」
「おそらく酷使に耐えられず・・・・」

「椅子がー？」

「はい。川から身を投げようとしてたとこを」
「俺らが助けました！」

「椅子がー？」

「はい。僕らが通りかからなければ、きっと・・・」
「今頃は帰らぬ椅子に・・・」

「あーはーはー。ふざけたこと言ってないで返したまいー」

駐在さん。言葉こそ冷静ですが、顔は真っ赤！
人間ここまで顔が赤くなるかと思えるほど真っ赤です。

やばいなぁ・・・・。

「えっと。その際に少しばかりケガを・・・」

「椅子がー？」

「はい・・・・」

「どこをー？」

「えっと。足・・・」
「そうそう！足！」
「アキレス腱あたり！」

「んなっ・・・・・・!!!」

駐在さん、噴火寸前で耐えました。
もう涙ぐましい努力です。
阿蘇山に見せてあげたい。

「いいから返したまいー。そうじゃないと逮捕だよー。高校生諸君ー」

「はい・・・・」
「そこまでおっしゃるなら・・・」
「こちらにお見えです・・・」

とうとう身投げを救われた椅子と、持ち主、感動のご対面。

「こっ・・・・・!!!」

耐えました。
もう駐在さんてば、表彰してあげたいくらい立派！

「こ、これじゃー、使えないじゃーないかー。君らはー備品をなんだと思ってるんだねーー」

「ですから公共の物・・・」

「・・・・・・・・・・・」



「えっとー。高校生諸君ーー」

「はい・・・・」
「なんでしょう？」

「本官はー、今から射撃訓練をすることに決めたー」

「え！」

「そこになおりたまいーーー」

「に、逃げろっ!!!」
「本気だぞ！」



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