ぼくたちと駐在さんの700日戦争

「じゃ、西条とジェミーは、もう一回、寅蛍んとこ行ってくんない？」

「ああ。いいけど。お前は？」

「僕は・・・お金がないんだ・・・」

早苗さんに2900円を納付しなくてはならないため、すでに電車代がありません。

「ええ？ボクもですか～～～～？」

「あのねぇ。元はお前のお母さんが持って来た話だから！」

「あ！」

気づいたようです。

「やっぱり、母が好きなんですね？」

「・・・・・」

今の会話から、どうやったらそうとれるのでしょう？

「いいですけど。父がなんて言うかなー。確か、父とつきあってたと思うんだけどー」

お父さんとはつきあっているのではありません。
すでに結婚しているのです。
だからジェミーがいるのですが、そんなとこまでさかのぼって高校生に説明したくありません。

「いいから、とっとと行けっ！」

「は～～～い」。

「それでなに聞いてくるんだ？」

たずねる西条くんが「まとも」に見えます。

「うん。４番目のお姉さんの事を・・・」

もはや時間がありませんでした。
西条くんは、ジェミーをひきずるようにして駅へと向かいました。

「久保は里美さんの情報もう少し調べて」

「おお！」

「千葉は・・・。悪いんだけど、富士見さんの事故のこと、調べてくれる？」

「まぁ、しょーがねーな」

「それから、チャーリー。車椅子のこと調べて」

「車椅子？」

「そう。特にスポーツ用の」

「スポーツ用ってなんだ？」

「ミュンヘンオリンピックの時(72年)、パラリンピックってのが開かれてる。その時の車椅子は普通のとはちがうと思うんだ」。

「ああ。それで？」

「どこがちがうか調べて。できれば作れるくらいに」。

「作れるくらいに？資料あるかなー」

「井上に手伝ってもらえ」

「了解！」


「あと・・・。森田は僕といっしょに来てくれ」

森田くんを、図書館に連れ出す僕。

「はああああ？写真を合成するーーーー？」

「しっ！声がでかいよ！美奈子さんの水着写真なんて持ってるわけないだろう？」

「え！じゃ、ダマしたのか？」

「人聞き悪いなー。だって井上の協力は不可欠なんだもん」。

「いやー、持ってたら持ってたで、ただじゃすまないんじゃない？」

「それもそうだけど・・・」。

あそこで全員の協力を得るには、他に手段が思いつきませんでした。
普通の女の子の水着写真では、グレート井上くんは動じません。

「夕子ちゃんは妹だしさー・・・」

「え？夕子ちゃんのは持ってるの？」

「ないよ」。

「じゃ、全滅じゃない」

「だから合成するんだろ？」

「合成って・・・・顔とボディを？」

「そう」。

「顔のは、持ってるの？美奈子さんの」

「それが。持ってるんだ」。

「お前って・・・どういう・・・・」

「そうじゃなくって」

ダンス教室に通った際、踊っている様子を寅蛍が撮影してくれたのです。
本来は、その姿を見て姿勢を直すためのものですが、
僕の相手は美奈子さんだったので、当然一緒に写っているわけです。

「それ、そのまんまでも納得するんじゃない？」

「バカ言え！ソシアルダンスだぞ？ほとんど美奈子さんとくっついてるんだぞ？」

「あ。そうか。そりゃタダじゃすまないな」。

「だからさー。一緒に合成してくれよ。たのむ！」

「うーん・・・。そりゃむずかしそうだ・・・・で。ボディ側は？」

「そのへんから探してくる」

「そのへんって？」

「えっと。西条の部屋とか。あそこは宝庫だから」

「いや。西条のは水着つけてないだろー」。

「それが水着のもけっこうあるんだよ。西条は水着のお尻も大好きだから」。

「図書館でしゃべる話じゃないな・・・」。

まったくです・・・。

けれど、水着写真においても、西条以上のコレクターは存在しません。
持つべきものは、エロ本収集家の友人です。

「西条、コレクション、くれるか？」

「工藤に仕掛けるのに使うって言えばよこす」。

「あーーー。そういえば、S○ファンも1年分、気前良く使ったよね！」

声がデカいよ・・・

「うん。それに、こないだ1冊あげたから」

「なにを？」

「エロ本を」

「エロ本～～～～～？」

いちいち驚く森田くん。
声がデカい・・・・。

「まぁ・・・・。じゃぁ、いいけど・・・」

「サンキュー！森田ぁ！」

僕の人選はまちがっていませんでした。
持つべきものは、エロ写真に左右されない友人です。

「でも。西条、暗記してるんじゃないかな？水着のボディくらいは」

「あ・・・・・」



人気ブログランキング｜ブログ村ランキング

　第62話へ→

　▲目次へ

関連記事

• 続・すもももももも 第62話
• 続・すもももももも 第61話
• 続・すもももももも 第60話