ぼくたちと駐在さんの700日戦争

「どういう人なんだ？その寅なんとかっつーの」。

「うーん。フレディマーキュリーとピーターと八代亜紀とを足して３で割ったような人だ」

「よくわかんねーんですけど・・・・」

だよねー。言ってる僕もわかんないですから。


＜左からフレディマーキュリー、ピーター、八代亜紀＞

「で、そいつに会えばなんかかたづくのか？」

「たぶん。奥さんの情報源は美奈子さんで、美奈子さんは寅蛍から直接聞いたに決まってるもん」。

その上で、富士見さんに「彼女を誘うよう」言ったのには、なにかしらのわけがあるのです。

「奥さんに聴きゃいいじゃん！」

「うーん・・・」。

ビスコの言うことも、もっともです。
もっともですが、僕は今、奥さんに会いたくありません。
それも、自分が言った捨て台詞がもとなわけですが・・・。

「とにかくキーマンは寅蛍だと思うんだ」。

「そのジーンシモンズとペーターと菅井きんとを足して３で割ったヤツ？」

ひとりも合ってないよ・・・。
ってか、どういうバケモンだ？そりゃ。


＜左からジーンシモンズ、ペーター、菅井きん＞

やって来ました『一本どっこ』。

本来は、開店前に来たかったのですが、ビスコ西条くんが遅れたので、すでに開店した後でした。

ほんとだ。『ダンスパーティ』のポスターが貼ってある！
初めて見ました。
自分が人をダマしてまで売りさばいた催し物のポスター。

が。

それよりなにより目につくのが

大漁旗！

目立つっ！




「うーん。イヤな予感がプンプンする」。

「あ？そうか？居酒屋なんぞこんなもんだろ」
と、ビスコ。

いやぁ。それは西条くんが寅蛍を知らないからであって。

「まぁいいや。ここまで来たんだし」。
「入ろうぜ！」

居酒屋『一本どっこ』は、開店してまだ間もないせいもあって、薄暗い店内には、他に客はいませんでした。

カウンター奥。なにやら仕込みをしている板前発見！

「あ！ほんとだ！フレディマーキュリーだ！」

「だろ？」


＜フレディマーキュリー＞

寅蛍。仕込に熱中しているのか、入って来た僕たちに気づきませんで、
なにやら弟子を怒鳴りつけていました。

「おらぁ！カツラムキもろくにできねーのかぁ！」

「へい！すいません！親方！」

あれ？
本当に寅蛍？

ようやく僕たちに気づきますと、

「ぃらっしゃいっ！」

職人らしい、勢いのある挨拶で出迎えましたが、

「あー、アンちゃんたちぃ！ここは未成年の・・・あーーーーー！」

やっと気づいたみたいです。

「ほ、ホントに来ちゃったの？」

突然、オネエ。
なんなんでしょうか？このギャップ。

「ええ。せっかく先生のおまねきだったんで・・・・」。

「あちゃぁ・・・・まいったなぁ・・・・」

なんか、非常に弱っている様子。

「ま。いいか・・・。座って座って・・・」

小声で、カウンター席に誘導します。

「はい、おじゃまします、これ僕の友達で西条」
「よろしくおねがいしま～～～す」

「ま～～～！いい男っ♪」

そうかなぁ・・・。

でも、寅蛍、西条くんを気に入ってくれたようです。

言われた通りカウンター席に腰掛けると、
再び、やさ声で、
「今日はイキのいいカツオ入ってんのよ～～～♪食べてく？」

「カツオですか？いえ、僕たちは・・・・」

と、遠慮したとたん、

「お通しいーーーーーー!!!」

うわ！ビックリした！

奥の厨房から
「へい！お通しいっちょう！」

「モタモタすんなよ！トンチキ！」

「へい！」

すっげー活気あります。

なるほど、『一本どっこ』だ。
名前に偽りなし。

が、僕たちのほうを向くと、
またも突然やさしい声になり、

「なに飲む？お酒はダメだよね～～～～？ウフフ♪」

「え・・・ええ。まだ・・・・」

突然厨房に向かって、

「オラァ！あにトロトロしてんだっ！魚くさっちまわぁ！」

「へい！親方！」

親方・・・・・。

僕たちのほうを向き直ると、
親方はまたもオネエにもどり、ってか、どっちがもどっているのかよくわかりませんが、

「すぐおいしいカツオ食べさせてあげるからね～～～♪」

「あ・・・は、はい・・・・」

西条くん。ヒソヒソと、

「エラいとこに来ちゃったなー」
「うん・・・・ごめん」

「お通しつってんだろっ！いつまでお客さん待たせんだ！このトーヘンボク！」


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