ぼくたちと駐在さんの700日戦争

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駐在さんは、産後の肥立ちがよくなかったらしく、退院が延びました。
お気の毒です。

「で。どーするよ？」
「まずは、追い払おう」。

「え！婦警さんだぞ？」

「お。めずらしく西条も警察怖いのか？」

「そうじゃなくって女だぞ？」

そういう意味かいっ！

警察事情に詳しい千葉くん、
「気をつけろよ。西条。曲がりなりにも警官だからな。女だと思って舐めてかかるとえらいめに会うぞ」

「え！舐めていいのか♪」

その心配はいらないようです。

「いいけど、お前だけで捕まれよ」。


そこで立てた最初の作戦が、

『プロの板前さんを呼ぼう！作戦』。

『それもできればオネエ系板前がいいぞ作戦』。

婦警さんが差し入れようがないほどの、超豪華な料理をお昼に持って行けば、いかな女性とは言え、相手はプロ。

「スゴスゴと引き下がるはずだ！」

「おお～～～～～～！」

「でも、オネエ系の板前なんて聴いたことないぞ？」

「いるんだ、これが。それもイケメンがかなり好きそうなのが」。

そう。ジョン・虎蛍です。

「マジ？」

「マジ。ただ・・・・」

「ただ？」

なにしろプロですから。
無料で来てもらうのには、かなりのエサが必要です。
また、呼び出すためには、再び美奈子さんを頼らなくてはなりません。


それは時間がかかりすぎるので、次回、ということで、

「とりあえず、オネエだけでもなんとかしよう」。

ということになりました。

そこで。

ジェミーに口紅と、ほお紅だけ塗ったくって
バイオニックな女子高生を連れて乱入することにしたのです。

「もともとはアイツが原因だから」

しかし、板前がいないと、それ以前の問題として、

「差し入れの弁当はどうする？」

そう。婦人警官もひきさがるような「お弁当」が必要なわけで。

「うーん。いいや、みんなのからテキトーに集めよう」。

ということになり、
みんな体育の授業を早めにサボって、アジト教室に、弁当を持ち寄りました。

しかし、全員「母ちゃん弁当」ですので、見てくれがイマイチです。

「こりゃ婦警さんには勝てないなー」。
「だな・・・」

「孝昭のはどうだ？早苗さんだろ？作ってんの」。
「おお！そうだそうだ！」

が。孝昭くんの弁当は、確かにおいしそうなのですが、器がイマイチ。
なにしろドカベン。

「あんだよ。もっと可愛いのに入れて来いよ。孝昭。山田太郎か？お前は」

「無茶言うなっ！育ち盛りなんだ！」

そこで、

「しかたない。オニギリにしよう」。

オニギリなら器は、たいしたものはいりません。

「最悪アルミ箔でもいいもんな！」
「ナイスアイディア！」

が。炊事班、麻生くんが、みんなのご飯をにぎりはじめたのはいいのですが、

「あれ？麻生。これ混ぜご飯だっけ？」

どうもご飯が白くない。

「あ～～～。今日、体育で腕立て伏せとかやったからなぁ」。

「バ、バカヤロー！握る前に手ぇ洗え！」

「だって時間ねーもん！」

休憩時間はわずかに10分。
手を洗っている暇などなかったのでした。

で、できあがったおにぎり3個は、

「みんな・・・グランド色・・・・」。
「だな・・・・」


「こっちは少しは白いぜ？」
「あほ！一個目にぜんぶ土くっついたんだよ！」

それぞれ、色がちがっていました。
しかも、まだら。

「うわ～～～～。喰いたくね～～～～～～」

「海苔だ、海苔で隠せ！」
「ナイスアイディア！」

すでに、当初の「婦警さんよりおいしいお弁当」という目的がどっかにふっとんでます。

「海苔なんかねーって」
「あ。僕のに味海苔入ってるけど」
「あー、それでいいや」

味海苔は、大きさがイマイチで、全部は隠れません。

「もっと黒いとこ隠せよ」。
「いやぁ～～～～。全体に黒いからなぁ」

男の料理などこんなものです。

「できたーーーーーーー！」
「やったーーーーーーー！」

で。

「誰か味見しろよ」

「・・・・・・」「・・・・・・」「・・・・・・」
「・・・・・・」「・・・・・・」「・・・・・・」

「いやぁ。腹こわすぞ。これ喰ったら」。
「うん。盲腸じゃ済まない」。

「ま、いいか。喰うのは富士見さんだし」。

「真ん中に、正露丸入れたらどうだ？」

「ナイスアイディア！」

そうか？

「できたーーーーーーー！」
「やったーーーーーーー！」

もはや食べ物ではありません。

グランドおにぎり。



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