ぼくたちと駐在さんの700日戦争

＜本日のママチャリラジオでは、『ワイヤーアート倉科カナ版』の補欠選が行われております＞


「お前。洋菓子屋になに言った？」

当然ながらプンプンの駐在さんですが、

「えーっと。でも、奥さんの許可はいただきました」

「んな!?なんだと!?」

そう。実は根も葉もなく、ケーキ屋さんに話したわけではありません。

僕は、駐在さんが女子高生にうつつを抜かし、奥さんと「険悪」になったところに巧みにつけこ・・・利用・・・・応用し、直接おねがいしてみたのです。

条件は、1ヶ月『ケーキ食べ放題無料』。
彼女の美貌には、それぐらいの価値はあります。

しかもこれを、加奈子さんではなく、妹の美奈子さんに話しました。
女子大生が、ケーキを目の前に動かないはずもなく、美奈子さん、なんなく姉を説得。

「やりなよ？お姉ちゃん」
「そう・・・ねぇ・・・」

「『大きな栗の木の下で』でじゅうぶんだから！」
「そっかなぁ・・・・」

「後はたぶん、ゲストの寅蛍先生が相手してくれるわ」

あ？

→ → → →

「くぅ・・・・・・」

ひとしきりくやしがっていた駐在さんでしたが、

「そいじゃそういうことで」
僕が帰ろうとすると、

「待て。ママチャリ」

「はい？まだなにか？」

「どう考えても原因はお前だ」

「え？」

また書かされました・・・。

『人妻には手を出しません宣誓書』。

今回は宣誓書と言うよりは、もはやポスターです・・・。

こんなもんを書かされる高校生って、いるんでしょうか？

「で、最後に住所氏名！」

「え！住所も書くんですか？」

「決まりなんだからしかたないだろう」

決まり・・・・。
人妻には手を出しません宣誓書にも決まりがあるんでしょうか？

「書きました・・・・・」

うう・・・デカい。
うちの文化祭のポスターだって、こんなにデカくありません。

ところが駐在さん。

「ついでにもう1枚書け」

「ついで？」

それは『人妻の妹にも手を出しません宣誓書』。

「お前、美奈子ちゃんもダンス教室にさそってるらしいじゃないか」

「いや、あれは・・・・・」

美奈子さんが駐在さんを誘えない、という義理がたい心遣いなわけであって。
それをなんで僕が『宣誓書』書かなきゃいけないのでしょう？

「問答無用！」

うーん。いかにも警察官らしい発言です。
はっきり言って、赴任以来、初めて聴きました。駐在さんの「警察官らしい」セリフ。

結局、書かされました。

『人妻の妹にも手を出しません宣誓書』・・・・・。

とってもなさけない。
でも、こっちは控えめなA4版です。

「そこに住所氏名！」

「え！こっちもですか？」

「決まりなんだから仕方ないだろう」

この町の法律は、この場で出来上がっているような気がします。
西部開拓時代のアメリカでさえ、ここまでひどくはなかったような。

こんな治外法権があっていいのか？

もっとも、ダンスもジョン・寅蛍も、僕としては苦手な部類だったので、助かると言えば助かります。

ただし、これでプロの板前から、「栗の味の指導を受ける」という目論みもダメになってしまいましたが・・・。


その夜、駐在さん夫婦の間で、どんな内容の「討議」が行われたのか、子供の僕には知る由もありませんでしたが、

翌日には、『人妻版宣誓書』がデカデカと貼り出されたのでした・・・・。
どうやら、奥さんとの交渉は決裂したようです。

「なぁに？これ～～～～～」
「あはははは。この子ってウチの2年よね？」
「ヤダ～～～～～～～～～」

　ヤダ～～～～～～～。

八つ当たりもはなはだしい！
確かに原因は僕ですが、そんな分別のつく年齢に、僕はまだなっていませんでした。

　くそ～～～～～覚えてろ～～～～～～
　駐在～～～～～～！

当然ながら

「報復あるのみ！」です。



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