ぼくたちと駐在さんの700日戦争

『朝のホームルーム』。

「はい。じゃ、今から指名した人は、保健室に行ってください。大切な話があります」

「大切な話？」
「なんだ？」

ざわつく教室に、先生が名簿を読み上げます。

「新橋くん、西地くん、西本くん、野館くん、萩原さん、橋本さん、深見さん」

「福田くん、星くん、星出くん、星野さん、掘さん、妹尾さん、槇野くん、真白くん、松浦くん」

「はい。以上、今呼ばれた人は、ギョウ虫が出てますから」

「え～～～～～～！ギョウ虫！」
「そんな検査、ありましたぁ？」

「それが転校した雷尾根留くんが保虫者だったのよ～。彼と接した人は後で名乗り出るよーに」

「保虫者・・・・」
「聴いたことない単語だ・・・・」
「ってか、クラスの人数80人超えてます。先生」

「はい。今、先生に意見した松原さん、真鍋さん、丸尾さん、あなたたち、これ以上なんか言ったら、ポキール公開しますよ？」

「・・・・・・・」
「・・・・・・・」

ポキール公開はさすがに避けたい。
学校生活において、これ以上の脅しがあるでしょうか？


「えー。ジェミーがぁ？」
休憩時間。
千葉くんは半信半疑。

「アイツ、そういうキャラだった？」

うーん・・・。言われてみれば・・・。

ジェミーは、「地球の核が自分」だと信じて疑わないヤツですので（ノンフィクション）、
簡単に情などには流されないのです。

　いや・・・・。

「ここは後輩としてのジェミーを信じてみるよ」

「痛い目合わないといいけどな？」

やな事言うな～～～。

というか、すでにかなり痛い目に合ってます。
20名が誰であるかは、母がランダムにスライドさせたために不明。

このまま行ったらダンパ以前に「修羅場」は避けられません。
特に「和美ちゃん＆小町」は鬼門です。
なにしろ親友同士。とっくに情報は通じているでしょう。

1時限目が終わるやいなや、
ジェミー、捕獲。

「おい。ジェミー！20人、誰なのか教えろ！」

「あー、はい」

意外に素直に名簿の書かれたメモを渡しました。
その態度を見る限りで、やはり「千葉くんの思い過ごし」に思えました。

が。

和美　│ー｜
宮崎　│△｜
理恵　｜ー｜
はるか｜ー｜
加奈子｜×｜
萌　　｜ー｜
郁美　｜△｜
夏帆　｜×｜
幸恵　｜ー｜
依千佳｜×｜
沙耶　｜×｜
直美　｜×｜
美空　｜ー｜
良美　｜×｜
博美　｜×｜
さやか｜×｜
友紀　｜×｜
よしの｜ー｜
那奈　｜×｜
彰子　｜ー｜
佐和子｜×｜

「知らないヤツ、イッパイいるんだけど・・・・」

「僕は知ってます！」

「お前が知っててもしょーがねーだろっ！」

いったい僕は誰を誘ったのでしょう？
だいたいは1年生と2年生にいるようですが・・・。

こんなに大人数に、どんな「大切な話」をすればいいのでしょうか？

『地球環境について』でも話すか？

殺されるだろうな・・・・・。大切な話だけど。


あらためて、名簿に目を落とす僕。

「この最後の佐和子って誰だ!?」

「あー、母です！」

「なんでお前の母ちゃんを僕が誘うんだよっ!!」

「身近だったんで～」

「そりゃお前の身近だろ!?」

「いや～。先輩、えり好みはいけません」

「えり好みじゃないっ！」

自分の母親に渡すか？

「母は、はりきってました！」

そりゃありがたいよ・・・・(泣)

待てよ？

この「佐和子」の横の×ってなんだ？

「この名前の横の×印はどういう意味だ？断られたってことか？」

いや・・・加奈子さんにも×がついてる・・・。

「ああー。それはですね～。すでにつきあってる男がいるってことですね！」

・・・・・・・・・・あ？？？

「アホーーーーーーーー!!!」

ってか、半分以上、×ついてんじゃん！

こりゃ修羅場じゃ済まないぞ・・・・！

「心配いただかなくともいいですよ？先輩～」

「そうなのか？」

「ボクは大丈夫です！」

「だからお前はいいんだっ、お前はっ！」

やばいのは僕です・・・。

こんなにあちこち手を出したら、無事に行くほうが不思議ってもんで・・・

放課後。

「よー、お前かぁ？俺の良美にちょっかい出してるってのは！」

第一陣到着・・・(泣)




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