ぼくたちと駐在さんの700日戦争

＜本日2話連続。←第64話からどうぞ＞

しかし、あっけにとられた敵にスキができました。

これを見逃す西条くんではありません！

「どこ見てんだぁーー！」

　ドッ！　ドッ！　

2人、身を寄せていたのがアダとなり、ほぼ同時にキックが決まりました！

「うお・・・！」
「うあ・・・！」

同時に倒れるかと思われた2人でしたが、

　ブン！

倒れる間際、相手の振った竹刀が西条くんのスネを直撃！

「いってーーーーーーーーー！てめぇ！」

これで西条くん、理性ぶっとび！

「てめ！こいつっ！こいつっ！こいつっ！こいつっ！」

スネをやられた腹いせか、最後の2人には容赦ありませんでした。
これでもかと踏んづける西条くん！

とうとう、石まで持ち出したので、

「西条！死ぬぞ！」
「やめろって！」
僕と久保くんで、必死に押さえます。

「はー、はー、はー、はー。次、スネやったら殺すっ！」
息も荒く、まだ興奮状態の西条くん。

もはや武道精神のカケラもなく、
とうてい孝昭くんを、どうこう言える立場じゃありません。

とは言うものの、

「とりあえず。片付いたな・・・」
「ああ・・・てこずらせやがって」。

勝利は勝利。

「あ。そう言えば孝昭たち、来るって言ってたけど・・・？」
「ああ、ジェミーがそう言ってたな？」

すでに5分は経過したと思うのですが、援軍は到着しません。

いいえ。来るはずがありません。

あれは、おそらく、ジェミーの「機転をきかせたウソ」に違いありませんでした。
だから名前をわざわざ並べたのです。
ジェミーとしては上出来な策でした。


「そうだった！ジェミー！」

戦いにも参加しなかったのに、唯一倒れたジェミー。

「おい！しっかりしろ！ジェミー！」
「よくやったぞ！おい！」

諸悪の根源となったと思われる「早苗さんの面」をはずしてやると

朦朧としたジェミー。
「ジェミーはんはええ人でんがな～～～～～・・・・」

「コイツ・・・・」
「自己暗示にかかってる・・・」


その間に、S工業生の竹刀をとりあげていた西条くん。

全員を前に竹刀をかざすと、

「こいつぁお前らの魂だろうが。つまんねーことに使うんじゃねぇよ」

なんと。ひとりずつに竹刀を返し始めました。

「・・・・」「・・・・」「・・・・」
「・・・・」「・・・・」

西条・・・！そんなことしたら！

が、竹刀を手にしても、誰ひとりとして、逆襲に出ようとはしませんでした。
さすがに武道を志す者同士。通じるものがあるのかもしれません。

僕は、その光景に、ちょっと感動さえ覚えていました。


「わかったら散れ！」

彼らは、西条くんに会釈をすると、すごすごと戦場を去って行きました。


一戦を終え、そのまま座り込んで、反省会に入る僕たち。

「いやーーー。実はけっこうヤバかったなぁ」。
「まったくだ」。

「ジェミーが、援軍のウソついてくれて助かったよ」。

するとジェミー。
「え？ウソってなんですか？」

「いや、ほら。孝昭たちが援軍に来るってさ？」

「え？本当に呼びましたよ？」

「え・・・・・孝昭たちを？」

「はい～～～～～～。遅いですね！」

「うそ・・・・？」
「それじゃ・・・・？」


やがて、S工業生たちの去って行った方向から、

　ワハハハーーー！死にやがれーーーー！
　うぎゃああああああああ・・・・・・

S工業生たちの、すさまじい阿鼻叫喚が聴こえてきたのでした・・・。

「孝昭、だな・・・」
「だな・・・・」

　ワッハハハーーー！こいつらよえーーーー！
　うぎゃああああああああ・・・・・・

「連中、もうボロボロなのに・・・」
「うん・・・・」。

「な？人間的に問題あるだろ？」
「うん・・・・」。

せっかく感動的だったのになぁ・・・。



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