ぼくたちと駐在さんの700日戦争

　グイ～～～ン！

避難ロープは、2階ベランダにつながれていたため、伸び切ったと同時、ロープと思えぬほどの弾力性を示して、2段めあたりにしがみついていた僕をふきとばしました。
まぁ、バンジージャンプの短い版みたいなもんですから。
それでも、身体に来る負担はたいへんなもので、

　グキ！

首にすさまじい負担がかかり、たぶん身長が4センチくらい縮みました。

「おあっちー！」

摩擦熱で、結局手を放すことになり、

　ドタ！

バカヤロ～～～～！なんで放す～～～～～！
と、叫びたいのはやまやまでしたが、とりあえず逃げなくてはなりません。

頭に鈍痛を残しながら、ほとぼりが冷めるまで、僕は、西条くんを探すことにしました。
待ち合わせまであと15分。あまり大きくは動けません。

が

「お！いたいた！西条ーーーーーーーー」

実にあっけなく、裏手で西条くん発見！

ところが西条くん。
「おお！こっちだーーーーー！やっと見つけたぜーーーーーー！」

え？ジェミーを？
なんで？
ジェミーはさっき部屋にいたぞ？
ジェミーが2人？

以前、美奈子さんを発見した時と同じ不条理さに襲われながら、西条くんを追いかけます。

「どこに？」

「ここだここだ！」
と、西条くん。

「いやぁ。苦労したぜ」

「え！西条！ジェミーがここにも？」

「ここだ！女風呂！」

って、なに探してたんだよっ！

「誰が女風呂さがせって言った!?」

「あれ？ちがったっけ？」

「ジェミーさがせ、つったんだよっ!!」

まさかそこまで遡るとは・・・・。

しかし西条くん。まったく悪びれることもなく、
「いや、だってああ見えてもジェミーは男だぞ？」

「そんなこと百も承知だって！」

「ここは女が入るとこだ。人生においてどっちが大事かわかるだろ？」

人生語られたくないぞ。女風呂で。

「お前、女風呂とジェミーとどっちが大事だ？」

「今はジェミーだったんだよ！」

「へ～～～～。変わったヤツだなぁ」

こいつぅうううううううう

「変態だな！」

「ちがうっ！」

女風呂覗こうとしてたヤツがなに言ってんでしょうか？

しかし、外から見て女風呂か男風呂かわかるとはたいしたものです。西条くん。
同じように曇りガラスの天窓がついてるだけ。見た目、まったくちがいません。

すると西条くん。
「女風呂からは薔薇の香りがする！」

またか・・・・。
信用しないほうがよさそうです。

女風呂に未練タラタラの西条くんを引き連れ、再び、窓下に。

「ジェミー！」

「あ。せんぱ～～～い。なにやってんですかぁ？」

てめーらが手ぇ放したから、下に落ちたんだよっ！

怒鳴りたくなるのをこらえながら、
「ジェミー。叔父さんに言って、僕と西条を入れてくれないか？」

「あ～～～。それは無理です～～～～」

「なんで!?」

「叔父さんは6時までであがっちゃいました！」

役たたね～～～～～～～～～！

西条くん
「ほら。だから女風呂だろ？」

「比較対象がわかんねーよ！」

が
「女風呂ってなんや!?」
と、アレックスが地獄耳。

　こいつら・・・・。

こんなんばっかでグレート井上くんエスケープ作戦はうまくいくのでしょうか？


結局、避難ロープでやっとこ部屋へ。

実は、ジェミーの叔父さんが、ここの責任者だったのは、偶然ではありませんでした。
というか、発想の根幹がまったく逆でした。

なんと。ジェミーの叔父さんがいたから、ESSの合宿が『青年の家』になったと言うのです。

「特別割り引きなんで、聡子先生もおおよろこびでした！」

しかも、ジェミーの部屋は別にある、というから驚きと言うか、なさけないと言うか。
今までなにやってたんでしょう？
それなら小町も、なんなく泊めることができたのでは？

「だったらなんで最初っから言わない!?」

「だって～～～～。先輩、青年の家の責任者は叔父さんか？って聞かなかったじゃないですか」

「・・・・・・・・」

「それに、先輩の作戦はいっつもおもしろいです！」

いや・・・・。
おもしろいからって・・・・。

「剣道の面かぶって侵入なんて発想、バカとしか言いようがないです～～～～！」

言い切りやがりました・・・。

ま、いいや・・・・。
反省し始めると、小町との出会いにまで遡りそうです。


「じゃ、井上と久保、脱出させられるか？ジェミー」。

「だからぁ。6時で換わっちゃってるんで無理です」。

「入って来るのは？」

「午前8時からなんで無理です」。

役にたたないことだけは一緒・・・・(泣)

ここでアレックス。
「おい。ジェミーってこいつやったんか？」

「あー。そうそう」

「弟子、解消してええか？」

こいつも・・・。

西条くん。
「それでな！女風呂なんだがな？」

こいつも・・・。

アレックス。
「はい！サイジョー師匠！」

・・・頭・・・・痛い・・・。



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