ぼくたちと駐在さんの700日戦争

まず、久保、河野、千葉が、一番小さい青ジャンパーの若いのに3人一斉に襲いかかりました。
さすがにたまらない、と思ったのか、青ジャン。全速力で逃げ出します！

「て、てめーら！な、な、なんだって俺にまとまってくる！？き、きたねーぞ！」

これに久保くんたち。
「だっててめーが一番弱そーなんだもん！」
「うん、いくらなんでも、他のバケモンみたいなのといきなりやれるか！」
「うん。てめーならなんとかなりそーだ」

3人が全速力で追いかけ回します。

「て、て、てめーら！ろくな大人になれねーぞ！」

「うるせ～～！往生際悪いぞ！ぼけ～！！！！」
「わははー。そこへなおれ～！」

とうとう追いかけっこは心臓破りの階段へ！


一方、下では西条くんと孝昭くんが、一番の大柄の男の前で仲間割れ。

「てめーはあっちのハゲチャビンへ行けよ！このデカイのは俺の獲物だ！」
「やなこった！あんなハゲ倒したって自慢になるかっ！こいつは俺がいただきだ！」
どうやら獲物争い。

「なんだとぉ！このでかいのは、俺が先に目ぇつけてたんだぞ！」
「うるせーや！俺だってとっくの昔っから目ぇつけてたんだよ！お前こそあっちのミジンコシャツで我慢しろよ！
ミジンコ？ペイズリー柄のことでしょうか。

「俺なんかとっくのとっくの昔っから目ぇつけてたんだよ！」
「なにお！俺なんか、学校入った時には目ぇつけてたんだからなっ！」
「なにお！俺なんか小学校入る前からなぁ・・」
「なんだ！テメーやる気か？」
「おー！受けてたってやらぁ！」

敵もあっけにとられる仲間割れに、さすがに駐在さんもあきれまして

「お前ら、幼稚園児か？まじめにやれ！」

しかし、この園児同士の戦いは、あっという間に結論が出ました。

スキンヘッドが孝昭くんに襲いかかって来たからです。
しかし、スキンヘッドは、やはり人選を誤っていました。

孝昭くん。一瞬でさっきスキンヘッドが落としたビール瓶を拾うと、いきなりふりまわします。

「て、てめー！いきなり凶器かよ！きたねーぞ！」

「あははー。喧嘩は勝ちゃいいんだよ！」

「てめ！箱の方が瓶より強いとか言ってなかったか！？」

「箱ぉ？箱で戦えりゃぁ、2日目の姉ちゃんなんか怖くねぇって。馬鹿かお前」。

「てめぇ！ヤクザ以下だな・・・」

「なんとでも言え！口がきけるうちになぁ！」

せめて西条くんなら、凶器を使うことはなかったでしょうに。


その頃、心臓破りの坂では、決着がつきつつありました。
なにしろ階段登り。
肺活量では圧倒的な水泳部の千葉くんに、普段からタバコ吸ってる連中がかなうはずがありません。
あっと言う間に千葉くんに上に回り込まれ、すでに階段でへたっている青ジャン。

しかし階段がきつかったのは、同じ喫煙者である久保くんと河野くんも同じ。
その何段か下で同じようにへばっています。

青ジャンが驚きながら弱音吐いてます。

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・・も、もう・・・登れ・・登れねぇ・・・」。

千葉くん。
「あはははは。この階段は水泳部の普段の練習コースだからなぁ。鍛えられ方が違うんだよっ！」

確かにこの階段は、水泳部の「シゴキ」のコースのひとつでした。
そりゃ、他の連中が追いつけるわけもありません。

しかし千葉くん。少し上段までさらに登り、階段横にあった丸い石を重そうに持ち上げると

「おまえ。死ね」。

これを階段に落としたので、たいへん！

石は青ジャンめがけて転がり出します。

　ゴロ～ン　ゴロ～ンときおりジャンプしながら転がり出す石。

「う、うわ、うわ、うわ～～～～～～～～～！」
たまりません。

次から次に石をひろっては転がす千葉くん。もう階段は地獄絵図です。

もちろん、さらに下にいた久保くんたち。

「ばかーーーーー！やめろぉーーーーーー！！！」


さて。希望通り、大柄の男に当たった西条くんは、ゆき姉直伝の舞うようなキックで、すでに大男を沈みこませていました。

やがて相手の動きが鈍くなったところで

「チャーリー！リボンだ！リボン！」

リボンとは・・・。

僕たちは、常に悪戯ができるように、7つ道具を持ち歩いていました。
それはガムテープ、煙幕花火とか、そういった類いのものですが、その中のひとつ。

そうです。たいへん長らくお待たせいたしました。
覚えていますか？2章で登場した

「ハエ取りリボン」。

当初、僕たちの悪戯には欠かせないファンキーグッズと解説いたしましたが、僕たちはこれを常備していました。

「巻け！」

「おお！」
チャーリーは持っていた7つ道具から、ハエ取りリボンを取り出すと、これを引き延ばし大男の頭に巻き付けていきます。

このトリモチ付きの凶器。頭にくっついたことのある人はわかるかと思いますが、まぁーーーーーーたいへん！
まして顔などにくっつこうものなら、手に負えません。
眉、まつげ、毛の部分は抜け落ち、他の部分はベタベタ。

「う、う、うわ～～～～～～～～～～～～～～～」

これを目の部分にまかれてしまった大男。

まるでさまようフランケンシュタイン状態です。

「わははははは。おもしれ～」。
図にのるチャーリー。

そして西条くんが留めをさしました。

この様子をのぶ君を守りながら見ていた僕は、すでに相手に同情していました。

　　気の毒に・・・。





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　　　　7章-第35話へつづく

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